映画監督の大林宣彦(おおばやし・のぶひこ)さんが10日午後7時23分、肺がんのため、東京都世田谷区の自宅で死去した。82歳。
広島県尾道市に生まれ、学生時代から自主映画を制作し、初の16mm作品、藤野一友との共作『喰べた人』が63年、ベルギー国際実験映画祭で特別賞を受賞。同時にCMをとる映画監督が少なかった中で、いち早くCMディレクターとなり数々の大ヒットを生む。その後、『時をかける少女』『転校生』などの商業作品を撮り続け、「映像の魔術師」と称された。

近年には“大林的戦争三部作”となる『この空の花-長岡花火物語』(11)、『野のなななのか』(14)、『花筐 /HANAGATAMI』(17)を発表。『花筐/HANAGATAMI』は、第 72 回毎日映画コンクール日本映画大賞、 第 33 回高崎映画祭特別大賞など様々な賞を受賞し、第 91 回キネマ旬報ベスト・テンでは日本映画ベスト・テン第 2 位に選ばれ、監督賞を受賞しました。大林宣彦監督個人では、2004 年春の紫綬褒章受章、 2009 年秋の旭日小綬章受章。2019 年、令和初の文化功労者に選ばれています。

肺がんと診断され、余命の宣告を受けたのは、2016年8月。 転移を繰り返すがんと闘いながら、みずからの命を削って、平和をたぐり寄せる映画を完成させた大林宣彦監督の最新作『海辺の映画館-キネマの玉手箱』は、4月10日(金)に公開を予定していましたが、コロナウィルスの影響により映画館が休館し、公開延期となっていました。

画像: 近日公開を予定の『海辺の映画館-キネマの玉手箱』ポスター

近日公開を予定の『海辺の映画館-キネマの玉手箱』ポスター

角川映画などとアイドル映画の先駆的な作品を作るとともに、『転校生』『時をかける少女』『さびしんぼう』の「尾道三部作」や文芸作品やアニメに至るまで、幅広く作品を生み続け、自主製作映画の先駆者として、CMディレクターとして、映画監督として、日本の映像史の中で常に最先端を切り拓いていった。
大林監督、安らかにお休みください。

R.I.P.

画像: 最新作『海辺の映画館-キネマの玉手箱』での大林宣彦監督

最新作『海辺の映画館-キネマの玉手箱』での大林宣彦監督

大林宣彦監督 プロフィール
1938年広島県尾道市生まれ。3歳の時に自宅の納戸で出合った活動写真機で、個人映画の製作を始める。上京後、16㎜フィルムによる自主製作映画『
ÈMOTION=伝説の午後・いつか見たドラキュラ』が、画廊・ホール・大学を中心に上映されジャーナリズムで高い評価を得る。『喰べた人』(63)はベルギー国際実験映画祭で審査員特別賞を受賞。この頃からテレビコマーシャルの草創期に本格的に関わり始め、チャールズ・ブロンソンの「マンダム」、ソフィア・ローレン、カトリーヌ・ドヌーヴなど外国人スターを多数起用、その数は3000本を超える。
1977年『HOUSE/ハウス』で商業映画にも進出。同年の『瞳の中の訪問者』と共に“ブルーリボン新人賞”を受賞。故郷で撮影された『転校生』(82)『時をかける少女』(83)『さびしんぼう』(85)は“尾道三部作”と称され親しまれている。
『異人たちとの夏』(88)で“毎日映画コンクール監督賞”、『北京的西瓜』(89)“山路ふみ子監督賞”、『ふたり』(91)“アメリカ・ファンタスティックサターン賞”、『青春デンデケデケデケ』(92)“平成4年度文化庁優秀映画作品賞”、『SADA』“ベルリン国際映画祭国際批評家連盟賞”、宮部みゆき原作『理由』(04)は“日本映画批評家大賞・監督賞”、“藤本賞奨励賞”を受賞。東日本大震災を受けた『この空の花-長岡花火物語』(11)ではTAMA映画賞・最優秀作品賞ほか多くの賞を受賞。最近の作品に、少年少女版『この空の花』として製作されたAKB48のPV『So long ! THE MOVIE』(13)、北海道芦別市を舞台にしたふるさと映画『野のなななのか』(14)等がある。『この空の花』『野のなななのか』に続く『花筐/HANAGATAMI』(17)は、余命宣告を受けながら完成させた大林宣彦的“戦争三部作”となる。

以下、代表作などの予告

『HOUSE ハウス』(1977年)

商業映画デビュー作。現在でも世界の映画祭等で数多く上映されている。

画像: HOUSE (1977) Trailer - The Criterion Collection youtu.be

HOUSE (1977) Trailer - The Criterion Collection

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『転校生』(1982年)

画像: 転校生 バージョン1予告 youtu.be

転校生 バージョン1予告

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『時をかける少女』(1983年)

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時をかける少女

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『さびしんぼう』(1985年)

画像: Sabishinbou 「さびしんぼう」 - 1985 - Trailer 予告編 youtu.be

Sabishinbou 「さびしんぼう」 - 1985 - Trailer 予告編

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『野ゆき山ゆき海べゆき』(1986年)

画像: 1986年 『野ゆき山ゆき海べゆき』予告編 youtu.be

1986年 『野ゆき山ゆき海べゆき』予告編

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異人たちとの夏(1988年)

画像: 異人たちとの夏(予告) youtu.be

異人たちとの夏(予告)

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『青春デンデケデケデケ』(1992年)

第16回日本アカデミー賞優秀監督賞

『はるか、ノスタルジィ』(1993年)

第17回日本アカデミー賞優秀編集賞

画像: はるか、ノスタルジィ 予告 youtu.be

はるか、ノスタルジィ 予告

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『SADA〜戯作・阿部定の生涯』(1998年)

第48回ベルリン国際映画祭国際批評家連盟賞

画像: Sada (1998) Trailer youtu.be

Sada (1998) Trailer

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『花筐/HANAGATAMI』(2017年)

大林宣彦監督がデビュー作『HOUSE/ハウス』(77)より以前に書き上げられていた幻の脚本が40年の時を経て奇蹟の映画化!

画像: 映画『花筐/HANAGATAMI』予告編|12月16日(土)有楽町スバル座他全国順次公開 youtu.be

映画『花筐/HANAGATAMI』予告編|12月16日(土)有楽町スバル座他全国順次公開

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『海辺の映画館-キネマの玉手箱』近日公開予定

大林宣彦監督が、20年振りに「尾道」へ還ってきた。
尾道にある海辺の映画館を舞台にした最新作は、まさに“キネマの玉手箱”!物語は、戦争の歴史を辿りながら、無声映画、トーキー、アクション、ミュージカルと様々な映画表現で展開していく。
生のエネルギーに溢れた誰も体験したことがないエンタテインメントが、幕を開ける!

画像: 大林宣彦監督が圧倒的な映像世界で贈る最新作『海辺の映画館-キネマの玉手箱』予告 youtu.be

大林宣彦監督が圧倒的な映像世界で贈る最新作『海辺の映画館-キネマの玉手箱』予告

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2017年、肺がんで余命3ヶ月と言われて撮影を続けた『花筐/HANAGATAMI』そして、2019年には東京国際映画祭で特集企画として大林宣彦(おおばやしのぶひこ)監督の特集上映が開催され同時に特別功労賞を受賞。
2020年には、最新作『海辺の映画館―キネマの玉手箱』の公開が控えていた。

最後に、以下、近年のスピーチを2本を紹介します。
黒澤明監督のことを語り、また東京国際映画祭で語っている。
また、自主映画の代表作の一つ『EMOTION=伝説の午後・いつか見たドラキュラ』(1966年)を紹介します。

大林宣彦監督が伝えた巨匠・黒澤明の"遺言"

画像: 大林宣彦監督が伝えた巨匠・黒澤明の"遺言" / Nobuhiko Obayashi conveys the great filmmaker Akira Kurosawa’s last message. youtu.be

大林宣彦監督が伝えた巨匠・黒澤明の"遺言" / Nobuhiko Obayashi conveys the great filmmaker Akira Kurosawa’s last message.

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『海辺の映画館―キネマの玉手箱』東京国際映画祭での舞台挨拶

画像: 『海辺の映画館―キネマの玉手箱』舞台挨拶 大林宣彦監督 | "Labyrinth of Cinema" Nobuhiko Obayashi (Director) youtu.be

『海辺の映画館―キネマの玉手箱』舞台挨拶 大林宣彦監督 | "Labyrinth of Cinema" Nobuhiko Obayashi (Director)

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『EMOTION=伝説の午後・いつか見たドラキュラ』
(1966年/16mm/38分)

画像: Emotion (1966) youtu.be

Emotion (1966)

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大林宣彦監督
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