「インポッシブル・アーキテクチャー」とは、文字通りだと、「不可能な建築物」となりますが、ここでは、完成に至らなかったけれど素晴らしい構想、未来に向けて夢想した建築、技術的には可能であったにもかかわらず、社会的な条件や規制によって実施できなかった建築、実現よりも既存の制度に対して批評精神を打ち出す点に主眼を置いた提案など、いわゆるアンビルト/未完の建築に焦点を当て、それらを仮に「インポッシブル・アーキテクチャー」と称しています。

このたび2020年1月7日から3月15日まで国立国際美術館において「インポッシブル・アーキテクチャー ―建築家たちの夢」が開催されています。
建築家たちの果てしない夢やロマンがあふれる建築作品は、絵画や彫刻などと同じ芸術作品ではないでしょうか。
同展は安藤忠雄、黒川紀章、新国立競技場で物議を醸したザハ・ハディドなど錚々たる世界的に有名な建築家、美術家、約40人による未完の建築物の模型や図面、関連資料などによる展覧会です。

建築物はアートです。
世界の名だたる建築家たちによる壮大なスケールの、まさに芸術と呼ぶべき感動的な建築物を、是非この機会にご覧ください。
それではシネフィル上でもいくつかの作品を紹介いたします。

画像: 映像制作:長倉威彦《ウラジーミル・タトリン、第3 インターナショナル記念塔》CG 映像 1998 年

映像制作:長倉威彦《ウラジーミル・タトリン、第3 インターナショナル記念塔》CG 映像 1998 年

《第3 インターナショナル記念塔》は、世界で最も高い高さ300メートルのエッフェル塔をしのぐ400メートルの構想でした。
まさにロシア革命、ロシア・アヴァンギャルドの象徴です。

画像: ヤーコフ・チェルニホフ 書籍『建築ファンタジー 101 のカラー・コンポジション、101 の建築小図』より挿図 1933 年 個人蔵

ヤーコフ・チェルニホフ 書籍『建築ファンタジー 101 のカラー・コンポジション、101 の建築小図』より挿図 1933 年 個人蔵

《建築ファンタジー》はチェルニホフが描いた1万7千枚ともいわれるドローイングから101点を選び、基本原理を記した書物です。
「建築ファンタジーは、新しい構成のプロセスや、新しい表現方法を示し、形態と色彩の感覚を訓練し、新しい創造と発明を鼓舞し、新しい発見を現実化させる手段を助けるのである」と書かれています。
カンディンスキーの絵画を連想させるものがある一方で、現実的な建築構造や機械的な面も見いだせます。

画像: ブルーノ・タウト《生駒山嶺小都市計画、遠望図、1933 年12 月》1933 年 大和文華館蔵

ブルーノ・タウト《生駒山嶺小都市計画、遠望図、1933 年12 月》1933 年 大和文華館蔵

ブルーノ・タウトは、1933年から1936年まで日本に滞在し、その間に多くの著書を著わし、日本の伝統的文化を高く評価しました。
《生駒山嶺小都市計画》は実現しませんでしたが、タウトがドイツで多く手掛けていた集合住宅設計の日本における唯一のものでした。
生駒山山頂には飛行塔があり、その横にホテル、緑豊かな山麓から段々状に集合住宅や小住宅が計画されていました。

画像: 制作監修:瀧澤眞弓《瀧澤眞弓、山の家、模型》1986 年 個人蔵

制作監修:瀧澤眞弓《瀧澤眞弓、山の家、模型》1986 年 個人蔵

東京帝国大学(現・東京大学)工学部建築学科を卒業した瀧澤眞弓は同期の5人の男性とともに「分離派建築会」を結成しました。
「分離派建築会」という名前は、ウィーン分離派の影響を受けて名付けられたものです。
なだらかな曲線が特徴の建築物で、音楽を構成する要素であるリズムや流動性を造形のヒントにしたようです。

画像: 村田豊《ソビエト青少年スポーツ施設》模型写真 1972 年頃 村田あが蔵

村田豊《ソビエト青少年スポーツ施設》模型写真 1972 年頃 村田あが蔵

空気膜構造とは、風船のように屋内の空気圧を外気圧より高めることで屋根を支える構造形式で、1950年代以降、さまざまに研究されていました。
村田豊はこれを大阪万博の富士グループ・パビリオン(1970)でも大きく実現させました。

画像: 安藤忠雄《中之島プロジェクトⅡ―アーバンエッグ(計画案)公会堂、断面図》1988 年 ギャラリー ときの忘れもの蔵

安藤忠雄《中之島プロジェクトⅡ―アーバンエッグ(計画案)公会堂、断面図》1988 年 ギャラリー ときの忘れもの蔵

大阪ミナミの商業施設の設計などでも知られる安藤忠雄は、事務所設立の1969年当時から、誰に依頼されるまでもなく公共建築の設計・提案を行っていました。
1978年には中之島プロジェクトとして、既存建物を巨大な建造物で覆うことによって外部空間と一体化させる計画を立案しています。
その10年後、1988年に創案されたのが《中之島プロジェクトⅡ―アーバンエッグ》で、大阪市中央公会堂の再生計画です。   

画像: 藤本壮介《べトンハラ・ウォーターフロント・センター設計競技1等案》CG 画像 2012 年

藤本壮介《べトンハラ・ウォーターフロント・センター設計競技1等案》CG 画像 2012 年

未来都市を思わせるCGによって再現された建築物は、セルビアの首都ベオグラードの商業・展示スペースを複合した施設(べトンハラ・ウォーターフロント)のコンペで一等を獲得したプロジェクト案です。

画像: マーク・フォスター・ゲージ《ヘルシンキ・グッゲンハイム美術館》CG 映像 2014 年

マーク・フォスター・ゲージ《ヘルシンキ・グッゲンハイム美術館》CG 映像 2014 年

映像提供:マーク・フォスター・ゲージ・アーキテクツこの斬新で奇抜な建築物のCG映像は、フィンランドのヘルシンキ市街地に位置するウォーターフロント区画での、グッゲンハイム美術館分館の新規建設のためのものでした。
幻の美術館となりました。

画像: 山口晃《都庁本案圖》(会田誠提案による)2018 年 個人蔵 撮影:宮島径

山口晃《都庁本案圖》(会田誠提案による)2018 年 個人蔵 撮影:宮島径  

奇想天外な東京都庁の計画案。
お城が聳え立ち、石垣のように見えるのは、オフィスのガラス窓です。
これが実現していたなら、江戸時代から未来へタイムスリップしたかのようです。
インポッシブル・アーキテクチャー ―建築家たちの夢」建築家たちの果てしない夢を是非、ご堪能ください。

展覧会概要

会期: 2020年1月7日(火)―3月15日(日)

開館時間:10:00 ─ 17:00、金曜・土曜は20:00まで※入場は閉館の30分前まで          

休館日:月曜日(ただし、1月13日(月・祝)、2月24日(月・休)は開館し、翌日休館)

観覧料:一般900円(600円) 大学生500円(250円)
 ※( )内は20名以上の団体料金 
 ※高校生以下・18歳未満無料(要証明)
 ※心身に障がいのある方とその付添者1名無料(要証明)
 ※本料金でコレクション展もご観覧いただけます。
 ※夜間割引料金(対象時間:金曜・土曜の17:00~20:00)一般700円 大学生400円

主催:国立国際美術館、読売新聞社、美術館連絡協議会

監修:五十嵐太郎

協賛:ライオン、大日本印刷、損保ジャパン日本興亜、安藤忠雄文化財団、ダイキン工業現代美術振興財団

協力:Estate of Madeline Gins / Reversible Destiny Foundation

関連イベント

対談
五十嵐太郎(本展監修者、東北大学教授)×橋爪紳也(大阪府立大学研究推進機構特別教授、大阪府立大学観光産業戦略研究所所長)
※1月11日(土) 14:00~/B1階 講堂
※参加無料、先着130名、当日10:00から整理券を配布します

〈プレミアムフライデー企画〉ギャラリー・トーク
※1月31日(金)18:00~ /B3階展示室
※参加無料(要観覧券)、開始30分前から聴講用ワイヤレス受信機を貸し出します(先着90名)

対談
磯崎新(建築家)×浅田彰(批評家)
※2月15日(土) 14:00~/B1階 講堂
※参加無料、定員130名、要事前申込(1月17日(金)必着)
※申込方法はこちら http://www.nmao.go.jp/event/pdf/0215apply.pdf からご覧ください

講演会
「永遠の勾配──荒川修作+マドリン・ギンズ作品のなかの建築ドローイング」
講師:アイリーン・ソヌ(コロンビア大学アーサー・ロス建築ギャラリー 展示ディレクター)
※2月24日(月・休) 14:00~/B1階 講堂
※逐次通訳付
※参加無料、先着130名、当日10:00から整理券を配布します
※共催=JSPS科研費JP17H02289・関西大学東西学術研究所

〈プレミアムフライデー企画〉ギャラリー・トーク
※2月28日(金)18:00~ /B3階展示室
※参加無料(要観覧券)、開始30分前から聴講用ワイヤレス受信機を貸し出します(先着90名)

ギャラリー・トーク
※2月29日(土)14:00~ /B3階展示室
※参加無料(要観覧券)、開始30分前から聴講用ワイヤレス受信機を貸し出します(先着90名)

講演会
「カナダ建築センターのコレクションに見る建築家たちの夢」
講師:マルティン・デ・フレッター (カナダ建築センター コレクション部門長)
※3月14日(土) 17:00~/B1階 講堂
※逐次通訳付
※参加無料、先着130名、当日10:00から整理券を配布します

インポッシブル・アーキテクチャー ―建築家たちの夢@大阪cinefilチケットプレゼント

下記の必要事項、をご記入の上、インポッシブル・アーキテクチャー ―建築家たちの夢@大阪 cinefil チケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、招待券をお送りいたします。
この招待券は、非売品です。
転売業者などに転売されませんようによろしくお願い致します。
☆応募先メールアドレス info@miramiru.tokyo
*応募締め切りは2020年1月27日 24:00 月曜日 
1、氏名
2、年齢
3、当選プレゼント送り先住所(応募者の電話番号、郵便番号、建物名、部屋番号も明記)
  建物名、部屋番号のご明記がない場合、郵便が差し戻されることが多いため、当選無効となります。
4、ご連絡先メールアドレス、電話番号
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6、読んでみたい執筆者
7、連載で、面白いと思われるもの、通読されているものの、筆者名か連載タイトルを、5つ以上ご記入下さい(複数回答可)
8、連載で、面白くないと思われるものの、筆者名か連載タイトルを、3つ以上ご記入下さい(複数回答可)
9、よくご利用になるWEBマガジン、WEBサイト、アプリを教えて下さい。
10、シネフィルへのご意見、ご感想、などのご要望も、お寄せ下さい。
また、抽選結果は、当選者への発送をもってかえさせて頂きます。

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