[スピード・スクワッド ひき逃げ専門捜査班]

 毎度おなじみ韓国お得意のポリス・アクションと軽口をたたきたくなるような作品。
本庁内部捜査課がレースカー・メイカーJCモータースの若い社長チュン・ジェチョルと警察長官の間の収賄疑惑を捜査していた。しかし、十分な証拠を集められず、捜査の指揮にあたっていた美人課長ユン・ジヒョンは上司に叱責されて、捜査班は解散。彼女に目をかけられていた直属の部下で、キャリア・ウーマン・タイプのウン・シヨンは、田舎の警察署の轢き逃げ専門捜査班に左遷されてしまう。 
 赴任した捜査班室は狭い地下室にあり、ウ・ソニョン係長はおなかの大きい妊婦と知り、先行きが思いやられるとめげるシヨン。相棒となるソ・ミンジェ刑事は轢き逃げ現場で突っ立って、その時の状況を「車がこう来てぶつかって被害者はあっちへ撥ねられ……」と脳内で再現し、現場から離れた地面から手掛かりとなる破片を採取するといった風変りな若者だった。
彼らが捜査しているのは三か月前にJCモータース所有のレース場近くの公道でおきた轢き逃げ事件。捜査が進むにつれて、犯人はチュン・ジェチョルに絞られていく。このあまりに都合よい展開には、鼻白むところもあるのだが、そこが韓国映画らしいところともいえる。

画像1: © 2019 SHOWBOX AND HODU&U PICTURES ALL RIGHTS RESERVED.

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画像2: © 2019 SHOWBOX AND HODU&U PICTURES ALL RIGHTS RESERVED.

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 自己中心で冷酷、粗暴なチュン・ジェチョルと、地道に手掛かりを拾っていくミンジェ。二人の対比が面白い。
轢き逃げ専門捜査班で過ごしていくうちに、係長もミンジェも優秀な警官とわかり仲間意識を抱くようになるシヨン。疑獄事件はもみ消され、シヨンにも捜査中止が命じられるが、無論それを無視して密かにチュン・ジェチョルの行動を洗いなおしていく。
 元F1レーサーでスピード狂のチョン・ジェチョルと元不良のミンジェが並走車、対向車を転倒させながら展開する爆走カーレース、腐敗上司の策謀で味方であるべき警察組織から命を狙われる危機——アクションも二段構成なら、登場人物のキャラクター、ストーリー展開も一ひねりしてあって飽きさせない。
ユーモラスな場面、ほろりとさせられる人情譚もあるというてんこ盛りの内容なのだが、冒頭で書いたようにデジャヴ感が否めない点が惜しまれるところ。

画像3: © 2019 SHOWBOX AND HODU&U PICTURES ALL RIGHTS RESERVED.

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 監督はデビュー作「コインロッカーの女」(15、「未体験ゾーンの映画たち 2016」で公開)に次いでこれが二作目のハン・ジュニ。ウン・シヨンに「女は冷たい嘘をつく」(10)のコン・ヒョジン、ソ・ミンジェに日本映画のリメイク「リトル・フォレスト 春夏秋冬」(18)のリュ・ジュンヨル、チョン・ジェチョルに「造られた殺人」(15)のチョ・ジョンソクが扮している。

北島明弘
長崎県佐世保市生まれ。大学ではジャーナリズムを専攻し、1974年から十五年間、映画雑誌「キネマ旬報」や映画書籍の編集に携わる。以後、さまざまな雑誌や書籍に執筆。
著書に「世界SF映画全史」(愛育社)、「世界ミステリー映画大全」(愛育社)、「アメリカ映画100年帝国」(近代映画社)、訳書に「フレッド・ジンネマン自伝」(キネマ旬報社)などがある。

『スピード・スクワッド ひき逃げ専門捜査班』』予告

画像: 【予告】スピード・スクワッド youtu.be

【予告】スピード・スクワッド

youtu.be

<STORY>制御不能のスピード狂を追え!!韓国映画史上最大最速の追撃戦が始まる!!
元F1レーサーのチョン・ジェチョルが会長を務める巨大企業JCモータース。本庁内部調査課のシヨンは、ジェチョルと警察庁長官との収賄事件を捜査していた。しかし、長官の圧力により、シヨンは捜査半ばで交通課のひき逃げ専門捜査班に異動させられてしまう。チームのメンバーは、シヨンと妊婦のウ係長、そして頼り無い巡査のミンジェだけで、捜査マニュアルも無い吹き溜まりのような部署だった。しかし、ミンジェの事件に関する洞察力だけは認めざるを得ないものがあった。そんな中、シヨンは3ヶ月前に起きた未解決ひき逃げ事件の容疑者がジェチョルだと知る。シヨンは許可も取らずに捜査を進めるが、一方でミンジェも単独で事件を追っていた―。

出演:コン・ヒョジン『ドアロック』、リュ・ジュンヨル『毒戦BELIEVER』
チョ・ジョンソク『EXIT』、ヨム・ジョンア『完璧な他人』、チョン・ヘジン『名もなき野良犬の輪舞』、イ・ソンミン『工作 黒金星と呼ばれた男』
キム・キボム(KEY)、ソン・ソック「最高の離婚 ~Sweet Love~」

監督:ハン・ジュニ『コインロッカーの女』
撮影:キム・テギョン『毒戦BELIEVER』
武術監督:ホ・ミョンヘン『新感染 ファイナル・エクスプレス』『神と共に 第二章:因と縁』/美術:チャン・グニョン『アシュラ』

2019年/韓国映画/韓国語/133分/シネマスコープ/5.1ch/字幕:仲村渠和香子/映倫区分G

原題:뺑반/英題:Hit-and-Run Squad/
提供:ニューセレクト
配給:アルバトロス・フィルム
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シネマート新宿・心斎橋他全国順次ロードショー中!

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