“日芸映画祭”は、今年で9回目を迎える映画祭です。毎年、企画立案から作品選定、 上映交渉や会場運営まで、私たち日本大学芸術学部の学生が主体となって開催してい ます。「宗教」、「天皇」と続き、昨年のテーマは「朝鮮半島と私たち」でした。このように、社会性と時事性を兼ね備えたテーマこそが日芸映画祭最大の特徴です。
そして今年度、私たちが満を持して掲げるのは「スポーツの光と影」。スポーツの良い面と悪い面をそれぞれ描いた珠玉の映画が全17本上映されます。
企画のきっかけになったのは、昨年5月に日本大学で起こったアメフト部のタックル事件です。同じ日本大学の学生である私たちは、面倒なことに巻き込まれないよう に、長い間この問題から目を背けてきました。しかし、東京オリンピックを目前に控 え、スポーツに対しても同調圧力が強まる中、ようやく無関心なままではいけないと 考えるようになりました。
オリンピックの開催には、いま日本が抱えている様々な問題に言及することなしに、多額の費用が投じられ続けています。それだけでなく、酷暑が心配される気候への不安や、将来の展望のない施設建設、招致の不正疑惑など、開催を望まない国民も少なくはありません。
スポーツのあり方自体に関しても、疑問を感じる部分が多く存在します。勝利至上 主義によってもたらされるドーピングや体罰、政治利用、賭博、指導者と選手の間に 起こるハラスメントの問題など......。度々マスコミで報道されているのはそれらのたった一部分に過ぎず、殆どのケ ースでは黙認されたままになっているのが現状です。また、身近な例で言えば、学校の体育教育にも見過ごせない問 題が沢山残されています。幼い頃から運動の出来不出来で優劣をつけられる教育方法には、私たちも当事者として無自覚のうちに苦しめられていました。
私たちは映画を学んでいる大学3年生で、必ずしも運動が得意ではありませんが、だからこそ美化されたスポーツ のイメージに対して懐疑的です。本映画祭「スポーツの光と影」では、私たち学生のスポーツに対する想いを、映画 を通して伝えていきます。
上映作品
ユホ・クオスマネン監督の『オリ・マキの人生で最も幸せな日』(2016)は、世界タイトル戦に臨むフィンラ ンドのプロボクサー、オリ・マキを主人公にした作品。第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で作品賞グ ランプリを獲得した本作は、来年1月日本公開を前に今映画祭でプレミア上映が決定。
イギリスの映画運動“フリーシネマ”を代表するトニー・リチャードソン監督の名作『長距離ランナーの孤独』(1962)では、感化院で長距離走の才能を見出された若者の社会に対する反抗心が描かれる。イギリスの権利元と交渉し、日本国内で唯一保存されていた16mmフィルムでの貴重な上映が決まった。
スポーツと性の問題を描いた異色のスポ根映画として知られる増村保造監督の『セックス・チェック 第二の性』(1968)や、若尾文子と石原裕次郎の夢の共演が見逃せない舛田利雄監督の『スパルタ教育 くたばれ親 父』(1970)、イスラム教の戒律によりサッカー場における女性の入場を禁止しているイランの現状を描いたジ ャファール・パナヒ監督の『オフサイド・ガールズ』(2008)、スポーツがモダンな娯楽だった時代を生き生き と活写した清水宏監督の『花形選手』(1937)などにも注目。
〈これまでの日藝映画祭〉
第一回の「映画祭1968」(2011年度)で取り上げた学生運動を皮切りに、マイノリティ、宗教、日韓問題など、様々な問題に踏み込んだテーマが特徴の映画祭です。 設定されるテーマはいずれも私たちにとって“切実”であり、映画を上映することによって社会を見つめ直し、新たな考えを生み出す機会を作りたい、という思いで毎年開催しています。
☆過去の映画祭チラシはこちら→%%http://nichigei-eigasai.com/topics.html - about%%{cyan}
<映画祭「スポーツの光と影」開催概要>
会期:2019年12月13日(金)〜12月19日(木)
会場 ユーロスペース(東京都渋谷区円山町1-5KINOHAUS3F
〈上映スケジュール→%%http://nichigei-eigasai.com/schedule.html%%{cyan}〉
・12月14日(土)『ピンポン』(2002年/曽利文彦監督)★曽利文彦監督
・12月15日(日)『スパルタ教育 くたばれ親父』(1970年/舛田利雄監督)★村川透監督(本作助監督)
・12月16日(月)『ひゃくはち』(2008年/森義隆監督)★森義隆監督
・12月18日(水)『疑惑のチャンピオン』(2015年/スティーブン・フリアーズ監督)★栗村修さん(ツアー・オブジャパ ン大会ディレクター)
□主催:日本大学芸術学部映画学科映像表現・理論コース映画ビジネスゼミ、ユーロスペース
□上映協力:アークエンタテインメント、アイ・ヴィー・シー、アスミック・エース、アルバトロス・フィルム、エタン チェ、KADOKAWA、キュリオスコープ、神戸映画資料館、国立映画アーカイブ、松竹、新日本映画社、東風+、gnome、東宝、日活、ノマド・アイ、ファントム・フィルム、ブロードウェイ、ポイント・セット、ロングラ イド、Celluloid Dreams、Park Circus
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