『万引き家族』でカンヌ国際映画祭の最高賞“パルムドール”を受賞した是枝裕和監督。
今や世界中で新作が待ち望まれる監督の、長編14作目となる最新作にして初の国際共同製作映画『真実』が、、10月11日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開となります。

『シェルブールの雨傘』(63)のカトリーヌ・ドヌーヴをはじめ、『ポンヌフの恋人』(91)のジュリエット・ビノシュ、『6才のボクが、大人になるまで。』(14)のイーサン・ホークなど、世界のトップ俳優陣を迎え、母と娘の間に隠された「真実」を巡って物語が展開していく、是枝監督構想8年の渾身作にして初の国際共同製作である本作。

この度、本作が第76回ベネチア国際映画祭 コンペティション部門 オープニング作品に選出されたことを受け、カトリーヌ・ドヌーヴ、ジュリエット・ビノシュ、リュディヴィーヌ・サニエ、クレモンティーヌ・グルニエ、マノン・クラヴェル、そして是枝裕和監督が記者会見とフォトコール、レッドカーペットに参加いたしました。記者会見には、是枝監督が「記者会見で集まっている記者の数が、僕が経験した中でも圧倒的に多かった」と明かすほど、世界中から集う大勢の記者たちが押し寄せ、続くレッドカーペットイベントはマスコミ陣のほかに沢山の観客が集まり大盛り上がり。
ジュリエットや是枝監督はサインを求められ、快く応じる場面も。公式上映は満席御礼で、上映中はカトリーヌ・ドヌーヴ演じる我儘で奔放で、でもチャーミングで憎めない国民的大女優ファビエンヌの毒舌に笑いが巻き起こったり、豪華キャストで描き出す母と娘の愛憎渦巻くドラマに涙したりと、観客もすっかり魅了された様子。

上映終了後は、そんな作品の温かさを反映するように6分にも及ぶスタンディング
オベーションが続きヴェネチアの観客から本作が愛されたことがひしひしと伝わる、オープニングを飾るに相応しいワールドプレミアとなりました!

画像1: © Getty Images

© Getty Images

10月11日より公開となる是枝裕和監督最新作『真実』が、第76回ヴェネチア国際映画祭 コンペティション部門オープニング作品に選出されたことを受け、カトリーヌ・ドヌーヴ、ジュリエット・ビノシュ、リュディヴィーヌ・サニエ、クレモンティーヌ・グルニエ、マノン・クラヴェル、そして是枝裕和監督が記者会見とフォトコールに参加いたしました。

参加者(敬称略)
カトリーヌ・ドヌーヴ(大女優ファビエンヌ役)、ジュリエット・ビノシュ(ファビエンヌの娘、リュミール役)、リュディヴィーヌ・サニエ(ファビエンヌの共演女優役)、クレモンティーヌ・グルニエ(リュミールの娘役)、マノン・クラヴェル(新進女優役)、是枝裕和監督

■記者会見・フォトコール

実施時間=11:00~(日本時間 28日21:00~)
場所=PRESS CONFERENCE ROOM-Palazzo del Casinò – 3rd floor

■レッドカーペット

実施時間=18:40~ (日本時間29日1:40~)
場所=Palazzo del Casino

■オープニングセレモニー

実施時間=19:00~ (日本時間29日2:00~)
場所=SALA GRANDE

■公式上映

実施時間=20:00~ (日本時間29日3:00~)
場所=SALA GRANDE

■メディア向け囲み取材

実施時間=22:30頃~(日本時間29日 5:30~)
場所=Stucchi room (HOTEL EXCELSIOR VENICE内3F)

実施日:8月28日(水)

第76回ヴェネチア国際映画祭レポート

【公式記者会見】 

画像2: © Getty Images

© Getty Images

Q:最初にご挨拶。映画の制作、出演のきっかけ。

<是枝監督>

まずはこの素晴らしいキャストとともに作り上げた本作をオープニング作品に選んでいただいたヴェネチア国際映画祭の方々に、この場で感謝したいと思います。ありがとうございます。
元々は、楽屋のシーンだけで出来上がる舞台を考えていました。しかし、実際に映画が動き出したのは、ジュリエット・ビノシュさんから一緒に映画を作る冒険をしないかと、2011年に提案をいただいたことがきっかけです。その時点では、日本で撮るのか、フランスで撮るのかといった確たる目標があったわけではないのですが、ふと、あの話をフランスで撮ってみようかと思いつきました。戯曲の主人公は、その国の映画史を代表する女優だったので、もしかすると、そのような女優さんを撮るチャンスが生まれるのではと思ったんです。そこで、大幅に戯曲を書き直して、母と娘の話に仕上げました。脚本が完全に固まる前の段階で、何度もお二人にお会いして、インタビューをさせていただき、女優という人生を送られている方の生の言葉を、どのように脚本に落としていくかという作業を、継続的な信頼関係のなかで、数年に渡って行っていきました。その結実したものがこの『真実』です。

<カトリーヌ・ドヌーヴ>
是枝監督が言ったように、脚本の初稿を読んだ後で会いました。それからパリ、そしてカンヌで会って、日本でも会いました。こんなことが1年以上続きました。面会や本読み、コメントを通して、彼が言ったように、作られていったのです。是枝は映画の中で演じる人物を少しずつ私たちに近づけることを考えていました。私の場合、映画に出演する時は、人物を演じるにしても、自分というものを作品に投入します。特に今回は、関係が複雑なのは分かっていました。是枝は英語もフランス語も話さないので、いつも通訳を挟んでの会話です。それも悪いことではありません。大事なことを話すように促されるからです。

<ジュリエット・ビノシュ>
是枝監督と仕事をすることは数年前からの夢でした。是枝は2011年と言ったかと思いますが、私はもっと前からだと思います。12年前・・・。(会場に向かって)14?2014年?14年前?14年前ね。京都で一緒になりました。特別な機会でした。本当に夢のようでした。是枝監督の映画に出ることは、役者が監督に対して抱く夢を実現することです。さらにカトリーヌとの共演も夢のようです。『ロバと王女』は私が子供の頃大好きな映画でした。彼女と共演できたことは光栄で夢のようです。だからこの映画は私にとって夢の実現なのです。それに未来の頼もしい才能に出会うこともできました。私にとってとても鮮烈で、貴重な経験でした。

<カトリーヌ・ドヌーヴ>
(上のビノシュの回答を受けて)私もジュリエットと共演したいと思っていました。彼女の映画はほとんど全部、見ています。でも不思議なことに、これまで一度も共演したことがなかったのです。初めての共演はうれしい驚きであり、待ち望んだものでした。

Q:監督は、「家族」をテーマにした映画を作ることを得意としていらっしゃるようですが、あなたの目から見たら、このフランス人とアメリカ人の家族はどのような家族なのでしょうか?私から見るととても滑稽であると同時に、機能不全に陥っている家族です。

<是枝監督>
今回の作品はファミリードラマの要素もあるのですが、演じるということを通して、一組の母と娘が和解とは言わないまでも、お互いがお互いの人生を、つまりは自分自身の人生を少しだけ受け入れて先に進むという、そのような女性二人の話を書きたいと思っていました。その二人の周りには、血縁関係に関係なくいろんな女性や男性がいて、その輪が広がっていくことで、いろんな場所に魔法が使われて、その魔法には嘘も含まれているんですが、それが人と人を繋いだり、和解させたりしていくという、そのような物語を描きたいと思いました。

Q:ドヌーヴさんは先ほど、ファビエンヌにご自身をかなり込めたとおっしゃいましたが、ご自身とファビエンヌというキャラクターにどれくらい観客が共感することを望んでいらっしゃいますか?

<カトリーヌ・ドヌーヴ>
私が映画で演じる時は、どうしても自分が入ります。でもこの人物は私とはかけ離れています。だからとても愉快な経験でした。女優を演じながら、自分とはかけ離れた人物を演じている印象だったのです。この女優の世界は私とかけ離れています。娘との関係も、私のとは非常に異なります。ですから女優を演じるのは興味深くて愉快でした。私とかけ離れている女優ですからね。私が経験したこと、私が知っていることと違います。だから私自身と映画で演じた人物の間に類似性を見い出すのは、難しいですね。彼女のことはよく理解できます。演じるのも楽しかったですが、本当に自分とはまったく別の人物を演じているようでした。

Q:ご挨拶と出演のきっかけなど。

<リュディヴィーヌ・サニエ>
最初に言いたいのは、私もかなり前から是枝監督を知っているので、彼の映画に出ることは夢の実現でした。ジュリエットほど昔ではありませんが、5~6年前に是枝監督に会いました。女優の役に私を考えてくれていたことに、驚きました。カトリーヌと同じように、私もこの女優と自分とが似ているとは思いませんが、演じるのは楽しいものでした。本物らしさを追求したからです。とても軽くて無邪気に見える人物ですが、何と言うか、問題を抱えています。楽しかった。それにコメディーも追究しました。この人物において、コメディーの喜びは、本物で具体的でした。私とは最も離れたところにいる人物を演じたいという欲求もありました。

<マノン・クラヴェル>
第一に、私にとって初めての長編映画で、人生において最も美しく偉大な経験でした。それまでの経験はとても小さなものでした。今回の人物を演じるにあたっては、キャスティングから撮影までの間、さらに撮影中においても、常に話し合いを行いました。この人物を創作するための、真の会話でした。私の場合、この人物は、私に近いところがあります。是枝監督と一緒に作り上げたのです。これは本当に面白い経験でした。私から出発し、ある種の方向性を推し進め、神経症的な要素を加え、それを引き延ばし、ある種の夢や恐怖を加える。こうして私が演じる人物が出来上がりました。

Q:カトリーヌ・ドヌーヴさんとジュリエット・ビノシュさんに質問です。映画の準備の話をされました。どんな経験だったかを教えてください。撮影についてお話しいただけますか?言語の壁についても言及されました。どんな経験でしたか?困難や試練があったのでしょうか?ありがとうございます。

<カトリーヌ・ドヌーヴ>
とてもユニークで複雑な経験でした。最初の週は少し大変でしたね。ある人を見ながら、他の人の話を聞くのに慣れるまでに時間がかかりました。なぜなら話は是枝監督の通訳を通していたからです。でも時間が経つと…。まず質問したり、何か言いたい時は、肝心なことに絞って話します。撮影についてのおしゃべりがないのです。それはかなり特殊なことでした。でも顔を見て、表情を見れば、何かが読めます。監督が通訳を通してコメントを伝える前に、彼の顔を見て感じました。彼が望んでいる方向に進んでいるのか、そうでないのかを感じたのです。確かに特殊でユニークな経験でしたし、一般的に生活で感じるコミュニケーションの大きな制約を超えるものでした。でも経験してよかったと思います。是枝監督と一緒に撮影できて幸せでした。直接思いを伝えられないというフラストレーションはありましたけどね。

<ジュリエット・ビノシュ>
私は撮影の前にしっかり準備したいタイプなのですが、準備できるか尋ねた時に、「是枝監督は役者が準備することをあまり好まない」と聞いたので、戸惑いました。最初は是枝監督の指示を待ちましたが、撮影中に彼が私と一緒に演じていることに気付きました。私と一緒に呼吸し、言葉が理解できなくても、一緒に演じていたのです。私は彼が求めるものを漠然と理解しようとしていました。そのうち夕食のシーンの撮影がありました。私がカトリーヌを挑発するシーンです。これは2人の関係がクライマックスに達する瞬間であり、「真実」について、ついに母親を攻撃する場面です。私が演じる人物は母親のウソによって傷ついた女性です。母親の言葉の中に真実を見つけられず傷ついています。私は完全に役に入っていました。カトリーヌが映画の中で「なんて深刻なのかしら」というように、私が演じる人物は実に深刻なのです。その部分を表現すべきだと思いました。わたしは深刻な側面を押し出しました。その瞬間から、確か翌日だったと思いますが、是枝監督はラッシュを見て、「シーンに重みを加えてくれてありがとう」と言ってくれました。穏やかに港を目指す船のようでした。他の役者たちを乗せてくれたのです。カトリーヌと私以外にも人物はいますが、この2人の関係が映画の中心です。これまで映画で共演したことも、他の状況で一緒になったこともない女優たちです。その2人が出会って、何年も待ち続けた映画に出るのです。そういう意味では映画の魔法です。思いもしなかった時に、私たちを引き合わせてくれたのですからね。

Q:今回のクレモンティーヌ・グルニエちゃん(子役)の立ち位置と演出について

<是枝>
オーディションで会ったとき、とても自由奔放で、彼女なら、おばあちゃん(ファビエンヌ役)の性格が隔世遺伝で孫に伝わっているという設定に出来るなと思いました。そこで彼女に合わせて、キャラクターを書き直しました。日本での撮影と同じように、事前に台本を渡さずに、おばあちゃんの家に遊びに行く話だよと言うことだけ伝えて、あとは現場では通訳を介して、「おばあちゃんにこういってごらん」、「ママのいったことを繰り返してごらん」と、口伝えで台詞を渡すというやり方で全編撮影しました。彼女の存在が大人たちのお芝居にもいい風を吹かせてくれたなと思っています。そして、ここに並んでくださった女性キャスト陣のアンサンブルの一角をちゃんと担ってくれたなと思っています。本当に感謝しています。

Q:監督の映画に出演してみて

<クレモンティーヌ:グルニエ>
撮影した時、最初は言われたことがよく分からなかったけど、途中から何を求められているか分かってきました。どこに立って、何を言えばいいかも。最初は、どこで何を言えばいいか、間違ってばかりだけど、途中から成長して、うまくなりました。

【フォトコール模様】

 真っ青な空が輝く晴天に恵まれた、第76回ヴェネチア国際映画祭のオープニング。レースがあしらわれた優雅なプラダのドレスで登場したカトリーヌ・ドヌーヴ。赤を基調としたグッチのジャケットスタイルでスタイリッシュに登場したジュリエット・ビノシュ。プラダのシャツスタイルで爽やかな装いのマノン・クラヴェル。ミュウミュウの白いブラウスで登場したリュディヴィーヌ・サニエ。キラキラと光沢感のあるグリーンのディオールのドレスに身を包んだクレモンティーヌ・グルニエちゃん。そして、是枝裕和監督が記者会見場に登場。会見場は報道陣で満員(250人キャパ)。面々が現れるなり、マスコミ陣からは歓声と拍手が。大盛り上がりのなか、それぞれが海外媒体の質問に応じ、会見終了後は、是枝監督がファンからのサインの要望に快く応える姿も見受けられました。

画像3: © Getty Images

© Getty Images

フォトコールでも、沢山のメディアが集まり、「是枝!」、「カトリーヌ!」、「ジュリエット!」と歓声が止まらず、昨年『万引き家族』でカンヌ国際映画祭パルムドール賞を受賞し、今や世界中で注目を集める是枝監督の最新作である本作への注目度の高さが感じられました。

【レッドカーペット模様】

画像4: © Getty Images

© Getty Images

快晴のヴェネチア、リド島で開幕した第76回ヴェネチア国際映画祭。大勢のマスコミや観客があふれる中、オープニングのレッドカーペットに登場した、イタリアのファッションブランド、アルマーニのタキシードとえんじ色の蝶ネクタイの是枝裕和監督。フランスのファッションブランド、ジャン=ポール・ゴルティエの朱色と黒のドレスに身を包み、さすがな貫禄を見せるカトリーヌ・ドヌーヴ。是枝監督と同じくアルマーニのセクシーなドレスで大人の魅力溢れるジュリエット・ビノシュ。フランスのファッションブランド、シャネルの黒のジャケットとミニ丈ボトムスのセットアップでスタイル良くクールにきめた、リュディヴィーヌ・サニエ。ジュリエット・ビノシュの娘役で8歳、映画初出演のクレモンティーヌ・グルニエはフランスのファッションブランド、クリスチャン・ディオールの白のドレスで天使のような可愛さをふりまいていました。またこちらも長編映画初出演のマノン・クラヴェルはイタリアのファッションブランド、プラダのチューブトップドレスで大女優たちに囲まれながらも堂々とシックにきめていました。観客からは「コレエダ!」という歓声が上がり、是枝監督の国際的な人気ぶりが伺えました。またジュリエット・ビノシュ、是枝監督は会場に集まった観客の元へ駆け寄り、サインといったファンサービス行う様子も見せました。レッドカーペットには審査員グループとして塚本晋也監督も登場。
そのほか、ニコラス・ホルトなどの人気俳優も登場し、映画祭のオープニングイベントを大いに盛り上げていました。

画像5: © Getty Images

© Getty Images

画像6: © Getty Images

© Getty Images

画像7: © Getty Images

© Getty Images

【オープニングセレモニー&上映後の会場の様子】

オープニングセレモニーが開催されたキャパシティ約1030席の会場が満席となる中、大きな拍手に迎えられながら、レッドカーペットを終えたカトリーヌ・ドヌーヴを先頭に『真実』のキャスト陣が場内に入場。最後に是枝裕和監督が着席し、オープニングセレモニーがスタートしました。監督の最新作である『真実』はもちろんのこと、映画祭に出品された作品たちが次々とスクリーンに映し出されながら、審査員のパートでは先ほどのレッドカーペットにも登場した塚本晋也監督の紹介も。その後、同劇場で遂に、オープニング上映が開始された本作。上映中はカトリーヌ・ドヌーヴ演じる我儘で奔放で、でもチャーミングで憎めない国民的大女優ファビエンヌの毒舌に笑いが巻き起こったり、豪華キャストで描き出す母と娘の愛憎渦巻くドラマに涙したりと、観客もすっかり魅了された様子。上映終了後は、そんな作品の温かさを反映するように6分にも及ぶスタンディングオベーションが続き、是枝監督やカトリーヌ・ドヌーヴ、ジュリエット・ビノシュらは、満面の笑みを見せながら、割れんばかりの歓声を全身で受け止めました。ヴェネチアの観客から本作が愛されたことがひしひしと伝わる、オープニングを飾るに相応しいワールドプレミアとなりました。

画像8: © Getty Images

© Getty Images

画像9: © Getty Images

© Getty Images

【囲み取材】

Q:公式上映後のキャスト陣の反応はいかがでしたか?

<監督>
上映が終わった後にカトリーヌさんが「とても温かい良い上映だったわ」と、すごく笑顔で語りかけてくれたので、よかったなと思いました。なかにいると、観客の反応を確認するほどの余裕がないのと、僕自身出来上がってからまた何度も作品を観ていないので、編集の事を気にして見てしまっていて。(笑)でも良かったみたいです。ジュリエットさんも、「観ていて、いろんな感情の層が厚い映画になっていて楽しめた」と仰っていたので、まず2人の感想にホッとしました。

Q:お客さん笑っていましたか?特にどのシーンでしたか?

<監督>
笑ってくれてましたね。
最初のファビエンヌのインタビューのシーンで結構つかめていた感じですね。
最初の掴みがよくて、随所で笑って欲しいところで笑いがおきていました。
最後にリュミールが娘を使ってお母さんにお芝居をしかけて、娘が戻ってくる前に自分でセリフを繰り返しているシーンで、結構いい反応が、笑いがおきていたので、あそこで笑いが起きるという事は物語全体をちゃんとつかんで1時間40分ついてきてくれたんだなという事なので、「あっ大丈夫だ」とホッとしました。

Q:ヴェネチア国際映画祭は『三度目の殺人』ぶりですが、レッドカーペットは改めていかがでしたか?

<監督>
カンヌに比べるとレッドカーペットは階段がないので、すごくフレンドリーなんですよね。集まってきてくださった観客の方もフラットで、垣根がないので、なんとなく気楽にサインに応じられるところもあります。昔に比べるとセキュリティはきつくなっているけど、それでも緩いですよね。(笑)それが良さだなとも思います。ただ、いつ全員出揃って撮影なのかとか、観客に呼ばれているけどサインしにいってもいいのかとか、ここでテレビの取材なのかとか、いろいろ教えられないままだったのですが(笑)それも含めて楽しみました。

Q:是枝監督は最初の長編『幻の光』がヴェネチアで上映されましたね。以前、「ヴェネチアの人だと思われている」と仰っていたこともあるかと思うのですが、アルベルト・バルベーラさん(ヴェネチア国際映画祭ディレクター)からは、どんな言葉をかけられましたか?またオープニング作品に選ばれたことについてどんな想いですか?

<監督>
アルベルトさんは映画祭に選んでくださったときだけじゃなくて、僕がカンヌに呼ばれることが多く、ここに来られない間も作品を観て感想を伝えてくださったり、この10年以上すごく親しい付き合いをさせていただいている間柄なので、作品も観ていただいて、完成する前に観ていただいて意見をいただくようなことも、この作品に限らずやっているんです。とても信頼している映画人で、嘘を吐かない方でもあるのですが、今回も正直なリアクションで「オープニングに」と言う形で呼んでいただけました。終わった後も握手を求めにきてくださって、良かったなと。映画祭のスタートを決める大役でしたので、その役割は、果たせたかなと思っています。
最初の記者会見で集まっている記者の数が、僕が経験した中でも圧倒的に多かったので、カトリーヌさんとジュリエットさんが揃うとこういうことなんだなと思って、驚きでした。

Q:記者会見すごくいい雰囲気だったと思います。カトリーヌさんも穏やかに話されていました。

<監督>
(カトリーヌに)通訳が入るから、もうちょっと短くしゃべったほうがいいわよってあとで注意されました(笑)

Q:昨年、映画祭の会場に近いホテル・デ・バンで映画祭75周年の写真展があり、黒沢監督だけでなく、錚々たる日本の監督が宝物のように扱われていました。今回の映画祭ではその先輩たちの雰囲気を感じましたか?

<監督>
『羅生門』がありますからね。日本人にとっては特別な映画祭というのは承知しております。2年前に来た時は(北野)武さんがいらして、ホテルのロビーでご挨拶した時に思ったのは、やっぱり武さんの映画祭なんですよね。存在感をすごく感じて。武さんのファンがホテルの外に集まっていて。僕らの世代は武さんがリードして、国際映画祭で黒澤、溝口、小津の次は大島、今村がいて、そこから新しい監督が出てきたということで武さんが道を照らしてくれた後を歩いているって、ヨーロッパの映画祭では感じるんですが、ヴェネチアではよりそれを強く感じますね。

Q:授賞式も控えますが、意気込みは?

<監督>
この間のインタビューで意気込まないって言ったんですよ。(笑)
言葉の選び方が難しいですが、僕はオープニングで満足ですね。作るたびにコンペで受賞を期待されるのは作り手にとってはプラスではなくて、色んなものを作りたいと思っているなかで、今回は本当に軽いタッチで秋のパリの水彩画を描くように、日差しに溢れてほかほかするような読後感で、観客の方には劇場を出ていってほしいなと思っていています。コンペの受賞に偏見を持っているわけではないのですが、三大国際映画祭のコンペの受賞って意外ともう少しこってりした油絵の方が好まれる傾向があると思うんです、いいか悪いかは別として。今作ではそことは違うところに球を投げているというか。作っている時からそう思っていて、そして実際に作りたい方向で仕上がっているです。でももし、今日のお客さんとは別の評価をしていただけることがあるのでしたら嬉しいです。

Q:今日、今の気持ちは今までと何が違いますか?(日本で作った作品で海外の映画祭に来ることとの違い)

<監督>
難しいな…記者会見にでた時に今回作ったのは日本映画ではないものとしてみられているなと一番感じましたね。
ヨーロッパの映画祭ってヨーロッパの文化の中で育ってきたものだから、日本映画含んだアジア映画ってどこか違う目線でみられている。今回はこちら(ヨーロッパ)の土俵で作った作品だと見られているとちょっと感じました。

Q:違う土俵で作ったとみられていると思うのですが、自分としては本作品手ごたえは?

<監督>
フランス映画だからこうしなければとか、日本映画の良さなど自分で線を引いてつくっていないので自分が普段やっていることをどうしたら同じように意思の疎通をはかりながら尊敬するスタッフとキャストと物が作れるかというのは考えましたし、やっぱり通訳のレアさんという方を見つけたのが凄く大きいのですが、その辺は相当用意周到に僕がやりたいことをやる為にスタッフィングに時間をかけました。一番摩擦が起きている所は僕は知らないふりをしてプロデューサーの福間に任せているので、僕はノーストレスでした。本当に。自国ではないところで作る事に対して何か言い訳ができるような齟齬をきたしたことはないので。つまらなければ僕のせいだなと思います。異文化のせいに出来ない状況で作れたのはよかったと思います。逃げ道がない感じで。

Q:できた映画を見ても自分が普段やっていることを出せたという手ごたえはありましたか?

<監督>
あります!ただ、最終的にはフランスの方がみてどのくらいこの映画が、もちろんフランスのスタッフが見てOKだしてくれてはいるんですけど日本語だと最終形をみても字幕を見てでしか判断が出来ないっていうところでどこかまだちょっと出来合上がったものにたいしての自己評価が最終的にどう落ち着くのかがつかめないところはあるんですけど。現場にかんしていうとほぼ自分の思い通りに、制作のプロセスも、出来上がった作品もですけどできたんじゃないかとそこは自信あります。

Q:今のところ一番印象に残っている、高揚した事ありますか?

<監督>
まだきて24時間経ってないので(笑)今日の公式上映のカトリーヌさんの衣装は素晴らしかったな。
なんか君臨している感じがするな。記者会見もそうですけど彼女が会場に入った時におきる対する拍手は彼女のキャリアに対してのリスペクトだと思うんですよね。それが嬉しいですよね。僕も一緒に拍手を送りたい気持ちでしたけど。
24時間の中ではあの記者会見の会場に入った時の拍手かな。あー嬉しいなと思いました。

『真実』特報

画像: 是枝監督が世界の俳優陣と、新しい家族の形を描く『真実』特報 youtu.be

是枝監督が世界の俳優陣と、新しい家族の形を描く『真実』特報

youtu.be

原案・監督・脚本・編集:是枝裕和 

出演:カトリーヌ・ドヌーヴ『シェルブールの雨傘』/ジュリエット・ビノシュ『ポンヌフの恋人』/イーサン・ホーク『6才のボクが、大人になるまで。』/リュディヴィーヌ・サニエ『8人の女たち』 撮影:エリック・ゴーティエ『クリスマス・ストーリー』『夏時間の庭』『モーターサイクル・ダイアリーズ』

配給:ギャガ
©2019 3B-分福-MI MOVIES-FRANCE 3 CINEMA

10月11日(金) TOHOシネマズ 日比谷 ほか全国ロードショー

This article is a sponsored article by
''.