第75回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門でマジック・ランタン賞を受賞し、第31回東京国際映画祭で審査員満場一致で東京グランプリ&最優秀脚本賞のW受賞に輝いた『アマンダと僕』が6月22日(土)より、シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開いたします。
この度、公開に先駆け、6月10日(月)に、映画ジャーナリストの立田敦子さん、映画解説者の中井圭さんによるトークイベント付き試写会を開催いたしました。
ミカエル・アース監督にインタビューをした際のお話や本作を読み解く映画作品について、そして近年、「子ども」を描いた傑作映画が相次いで生まれているワケまで、解説していただきました!
【イベント概要】
■日時 :6月10日(月) 20:50~21:10
■会場 :ユーロライブ(渋谷区円山町1-5 KINOHAUS 2F)
■登壇者:立田敦子さん(映画ジャーナリスト)、中井圭さん(映画解説者)
いつまでも余韻が残る大傑作!
まず、本作の感想について、「昨年、東京国際映画祭で観た作品の中で、1番感動的で心に残った作品。劇場公開されるのが嬉しいです。何よりも素晴らしいのは、アマンダを演じたイゾール・ミュルトリエの演技ですね」と立田さん。対して中井さんは、「私も、昨年の東京国際映画祭で1番素晴らしい作品だと感じました。決して登場人物に強さを求めず、人の弱さに寄り添う作品。それを見つめるミカエル・アース監督の優しさが感じられて、心にスーッと入ってくるような、いつまでも余韻が残る映画でした」と語った。
演技初経験のイゾール・ミュルトリエ。キャスティングの決め手は溢れ出る生命力!
監督が本作を撮ろうと思った動機の一つは、2015年のパリ同時多発テロ事件だという。「大きな喪失の中で人間が立ち上がっていく姿を描きたいと思ったときに、“子ども”を媒体にしたらどうかと考えたそうです。どんなに辛いことがあってもご飯を食べるし、可愛いウサギがいれば愛でる。素直に反応する子どもは、考えすぎてしまう大人より生命力に溢れ、映画ではそんな場面をいくつも捉えています」と立田さんが解説。アマンダ役のキャスティングについて、「1番のポイントとなったのが生命力。イゾールは演技初経験ですが、監督が体育教室からたまたま出てくる彼女を見つけてビラを渡したことがきっかけ。幼さがありながらも、どこか大人びた部分があるし、食べ物を食べているときは無邪気に明るい。その生命力に感動して彼女をキャスティングしたそうです」と語った。「確かにキャスティングが本作をかなり牽引しているところがあると思う。映画の冒頭でダヴィッドはどこか頼りなく、大人になりきれていないし、姉が亡くなった直後は彼がどんどん崩れていく様子が描かれていますよね」と中井さん。「どちらかが一方的に支えるのではなく、それぞれが支え合っていく。大人が子どもを庇護するのではなく、アマンダの存在によって大人が救われていく様が描かれているのがリアルだし、素晴らしいと思いました」と立田さんが語った。
是枝裕和監督の『誰も知らない』が世界に影響を与えた影響とは
近年、世界的に「子ども」を描いた傑作映画が相次いで生まれているが、実は是枝裕和監督の影響があると、立田さんは言う。「カルラ・シモン監督の『悲しみに、こんにちは』やショーン・ベイカー監督の「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」など、子ども目線で厳しい現実と向き合った子どもや家族を描いた良作が数多く公開されていますが、それぞれの監督に話を聞くと、みんなが是枝監督の『誰も知らない』(04)の子どもの演出方法に影響を受けたと語っているんですね。ミカエル・アース監督もそう語っています。世界的な不況やテロの問題などについて、悲惨なものをそのまま描くのではなく、新たな希望を描く為に子どもの目線を用いるという試みです。『誰も知らない』は世界的なムーブメントを作った作品だと言えると思います」対して、中井さんは「私が本作を観て真っ先に思い浮かんだのが、過去に傷を抱えた男が身寄りのなくなった甥を引き取ることになる『マンチェスター・バイ・ザ・シー』。この作品で描かれる人々は前には進むけど、完全に傷が癒えるわけではない。ストーリーや演出の仕方に通ずるところが多くあると思います。特に、本作のラストシーンの演出には監督の誠実さを感じましたね」と語った。
シングルファザーを描いた作品が相次いで公開されている?
最近は『パパは奮闘中!』など、シングルファザーを描いた作品が相次いて公開されているという。「ちょっと前までは、シングルマザーを描いた作品が多かったのですが、映画は時代を写す鏡。『クレイマー、クレイマー』などの元祖イクメン傑作映画もありますが、いろんな状況が生まれていて、もうシングルファザーは特別なことではないんですね。24歳で独身の男性が、ある日突然幼子の父親になるかもしれない」と立田さんが語った。
絶望ではなく希望を描くミカエル・アース監督
ミカエル・アース監督の演出について、「本作は、エッフェル塔やシャンゼリゼ通りなど、パリの観光名所が出てきません。監督が描きたかったのは、パリの日常のなかで一般の人が感じる心情。本作はテロという事件を用いますが、誰もが大切な人やモノを失った経験があるように、日常に起こり得ることとして親の死を描いていますよね。そして、アマンダがよく食べる(笑)。食べることで人間が元気になっていく。当たり前のことだけど、なるほどと思う演出でした」と立田さん。「確かに生きてることを実感するショットがいくつもありましたね。そして、本作はほとんどのシーンが16mmフィルムで撮られていますが、アマンダとダヴィッドがロンドンに行くシーンは35mmフィルムで撮られています。彼らの心がどんどん開けていくのに合わせて、画面の解像度も上がっていくんですね。そういった演出がとにかく巧い」と中井さん。「おっしゃる通り、絶望ではなく希望を描く監督ですよね。喪失を描くストーリーでも、観終わった後になぜか爽やかな印象が残るのが、本当に素晴らしい作品だと思いました」と立田さんが語り、大いに盛り上がったトークイベントを締めくくった。
各界の著名人からも絶賛の声!
第31回東京国際映画祭では、審査員の満場一致でグランプリと最優秀脚本賞W受賞の快挙を成し遂げ、プレスや一般の観客からも「今年のベスト映画!」「何度も涙が頬をつたった」との声が飛び交っている本作。
各界の著名人からも、絶賛の声が続々と寄せられました。
新たな天才子役現る!その純真な瞳に心を掴まれる
いわゆる泣ける映画とは次元の違うリアルな涙に心を打たれる
この映画を見たというより、この映画でアマンダとともに生きた、と言いたい
――谷川俊太郎(詩人)
母を失ったアマンダ、姉を亡くした僕、堰を切って溢れる悲しみと行き場のない憤りを抱えた二人の心に行き着く先はあるのか。遣る瀬無い思いを抱えながらも薄皮を一枚ずつ剥いでいくように、寄り添い生きていこうとする二人。
アマンダの涙に滲んだ笑顔は、一筋の希望そのものだ。
その真っ直ぐな瞳は演技というものを遥かに超えている。
そして私の心を捕らえて離れない。
――南 果歩(女優)
ある日、突然日常が壊される…これはあなたにも起こりうる物語
そうだ、こんな風にしていつもの毎日が壊されたのだと・・これは遠い何処かのお話ではなく、目の前にあった現実なのだと・・目の前に泣いているアマンダがいたら、私は間違いなく彼女のために何かをしたいと思ったはず。二人に寄り添いたいと思った私がいました。
――中村江里子(元フリーアナウンサー)
不安やためらい、安心や怯え。人生の歯車が狂った時、誰にでも訪れる心の動き。
わが身に起きた物語のように、私の心も揺れた。
――こぐれひでこ(イラストレーター)
遺された人々の痛みに寄り添い、未来を描く…その姿勢に日本のクリエイターも共感した心の復興は街の復興とは違って複雑なものだと実感していた私は、前向きに未来へ踏み出すダヴィッドの選択に光を見た。
この映画はテロの恐怖や怒りに焦点を当てるのではなく、被害者や遺族たちの痛みや悲しみに寄り添っているところに私は心を掴まれ、それを乗り越えながら生きていこうとする人々の苦悩を描こうとしたミカエル・アース監督の眼差しにシンパシーを感じたのだ。
――行定勲(映画監督)
Elvis has left the building.この言葉からはじまる映画。そして全て。
テロリズムから生まれた傷や憎しみではなく、喪失を柔らかに人と人とで包み、
前へ進んでいく物語。傑作。
――枝優花(映画監督/写真家)
若いこと、子どもであること、繊細であること…弱さを抱えた人々が傷つき再生するのに、特別なことは必要ない。
日常を生きることが、日常を壊す者に勝利する唯一の方法なのだ。
――今日マチ子(漫画家)
喪失からの回復が暖かい光線で包み込まれ、感動が止まらない。
ミカエル・アース監督は地に足のついた天使のまなざしを持っている。
――矢田部吉彦(東京国際映画祭 プログラミング・ディレクター)
愛する者を失った人間のリアルな感情が描かれる
飾り気のない、日常生活の中での耐えがたき悲しみが、静かに伝わってくる作品です。愛する人を亡くした時のもだえ苦しむ悲しみと、どのようにして折り合いをつけたら良いのかと、苦しみ悩む。その姿が見事に映し出されており、体験者でないと理解できない微妙な部分までが、甦ってくる傑作です。
――高木慶子(上智大学グリーフケア研究所特任所長)
人には、心の居場所が必要です。それを失うことは人生において最大の危機。
そんな危機を抱えながら、寄り添ってくれる人を信じたり、寄り添う気持ちを強めたりしていくのは、決して簡単なことではありません。
なんとか、本当になんとか生きる登場人物たちのことが、物語が閉じた今でも頭から離れません。
――星野概念(精神科医)
消えない悲しみを抱えながら、それでも寄り添って生きる青年と少女。
二人ならきっと乗り越えられる。
深い悲しみのそばに日常の尊い光があることを、アマンダが命を輝かせておしえてくれました。
たとえ一人ぽっちの夜でも、 ひとは決して、一人ではないのだ。
――大島花子(シンガーソングライター/歌手・坂本九の長女)
アマンダの泣き顔や無邪気な笑顔が頭から離れません。
一人では生きていけない。そんな大切な事を思い出させてくれた映画でした。
――三戸なつめ(モデル/女優)
突然の悲劇によって引き合わされた2人が、現実に必死に直面しながら心を通わせ合う姿が、フランスの美しい情景の中で表現されています。
人との信頼を時間をかけて築く勇気をもらえる映画でした。
――琉花(モデル)
希望の光が差し込むラストは観客を大きな感動に包み込み!
僕はアマンダを決して忘れないだろう。
「もう終わり、望みはない!」
物心両面で唯一頼れる母を奪われたアマンダの哀しみと絶望。
だが不思議なことに、この映画は小さな希望に輝いている。
――石田純一(俳優)
色と光の美しい映画。生活の喜びのひとつひとつ、喪失の苦しみのひとつひとつが、幸福は儚いけれど強いことを思い出させてくれる。
小さいアマンダ、最高。
――江國香織(小説家)
どんなに悲しみの淵にあろうと、人は立ち直ることができる。愛情をみつけられたら希望はやってくるんですね。
――柴田理恵(女優)
必死に生きるとは?人間が立ち直るとは?決して表に誇張せず、静かに胸の奥から湧き出る情熱に胸を打たれる。言葉にするには複雑な感情をスクリーンに表現したミカエル・アース監督から目が離せない。
――有村昆(映画コメンテーター)
人はどんなに悲しいことがあっても自分で考え生きていかなければいけない。
辛い時にも楽しい時にも、人はいつでも人に頼りながら、それでも自分らしく生きていけばいいのだと思いました。
――栗原はるみ(料理家)
東京国際映画祭-東京グランプリ&最優秀脚本賞のW受賞!
『アマンダと僕』予告
【STORY】
夏の日差し溢れるパリ。便利屋業として働く青年ダヴィッドは、パリにやってきた美しい女性レナと出会い、恋に落ちる。穏やかで幸せな生活を送っていたが―突然の悲劇で大切な姉が亡くなり、ダヴィッドは悲しみに暮れる。彼は、身寄りがなくひとりぼっちになってしまった姪アマンダの世話を引き受けることに…。若いダヴィッドには親代わりになるのは荷が重く、アマンダは母親の死を理解できずにいた。しかし、消えない悲しみを抱えながらも二人の間に少しずつ絆が芽生えはじめる―。
監督・脚本:ミカエル・アース
共同脚本:モード・アムリーヌ
撮影監督:セバスチャン・ブシュマン
音楽:アントン・サンコ
出演:ヴァンサン・ラコスト、イゾール・ミュルトリエ、ステイシー・マーティン、オフェリア・コルブ、マリアンヌ・バスレー、ジョナタン・コーエン、グレタ・スカッキ 2018
年/フランス/107
分/ビスタ/原題:AMANDA
提供:ビターズ・エンド、朝日新聞社、ポニーキャニオン
配給:ビターズ・エンド
©2018 NORD-OUEST FILMS–ARTE FRANCE CINÉMA bitters.co.jp/amanda/