孤高の映画作家 クリス・マルケルの特集上映「クリス・マルケル特集2019 永遠の記憶」を4月6日(土)から2週間、ユーロスペースで緊急開催されます。
記憶と記録、歴史と個人史、戦争、虚構と現実。
永遠に消えることのないテーマで、多くの作品を発表したクリス・マルケル。
フィルム、写真、本、ビデオ、ゲームなど、多様なメディアを自在に使った作品は優雅で詩的であり、見るたびに新しい発見のある稀有な映画作家であり、2012年の没後も世界のクリエイターに大きな影響を与え続けています。
没後7年を迎える今、日本では初めて劇場公開される『イヴ・モンタン~ある長距離歌手の孤独』を含む8作品を上映する本特集上映は、クリス・マルケルの魅力を<再発見>する、格好の機会となります。
クリス・マルケル Chris Marker(1921年~2012年)
パリ生まれの映画作家/プロデューサー/写真家など。
本名はクリスチャン=フランソワ・ブッシュ=ヴィルヌーヴ。
第二次世界大戦中は、ナチスに対するレジスタンスに参加。『夜と霧』(1955年)でアラン・レネの助監督を務める。
記憶と記録、歴史と個人史、戦争、虚構と現実など、永遠に消えることのないテーマで数多くの作品を発表。フィルム、写真、本、ビデオ、ゲームなど、多様なメディアを自在に使って完成させる作品は優雅な映像詩のようであり、映画史上、他に例のない作風を確立させ、『12モンキーズ』(1995年製作・日本公開は1996年/ゴールデングローブ賞最優秀助演男優賞(ブラッド・ピット)他)のテリー・ギリアム監督を始め、影響を受けたクリエイターは世界中に数多い。
監督以外にも、『ベトナムから遠く離れて』(1967年製作・日本公開は1968年/アラン・レネ ウイリアム・クライン アニエス/ヴァルダ クロード・ルルーシュ ヨリス・イヴェンス ジャン=リュック・ゴダール共同監督)のプロデューサーなど、多彩な作品の誕生に寄与した。また数回来日し日本についての作品もつくっている。
主な監督作は下記
1956年 北京の日曜日
1958年 シベリアからの手紙
1959年 宇宙飛行士
1960年 ある闘いの記述
1962年 美しき五月
1965年 不思議なクミコ
1967年 ベトナムから遠く離れて
1974年 イヴ・モンタン~ある長距離歌手の孤独
1977年 空気の底は赤い
1982年 サン・ソレイユ
1985年 A.K. ドキュメント黒澤明
1990年 音楽を聴く猫
1993年 アレクサンドルの墓:最後のボルシェヴィキ
1996年 レベル5
1999年 アンドレイ・アルセニエヴィッチの1日
2001年 未来の記憶
2004年 笑う猫事件
クリス・マルケルは 世界のあらゆる場所にいるのにどこにも見つからず
この世を去ってなお不死を約束されている
―岡田秀則さん(映画研究者)
上映作品
『北京の日曜日』
Dimanche à Pékin
1956年/フランス/カラー/DCP/20分
監督・撮影:クリス・マルケル ナレーション:ジル・ケアン
日本語版字幕:松岡葉子
配給:パンドラ
マルケルは夢だった中国行きを、1955年、中国友好使節団旅行への参加で実現。その際に撮影した映像をもとに、ある日曜日のスケッチとして革命後の北京の人々や風景を鮮やかに描いた初期短編。本作ではマルケルは撮影も自分で担っている。
『シベリアからの手紙』
Lettre de Sibérie
1958年
/フランス/モノクロ/DCP/61分
監督:クリス・マルケル 撮影:サッシャ・ヴィエルニ/クリス・マルケル
ナレーション:ジョルジュ・ルーキエ
日本語版字幕:松岡葉子
配給:パンドラ
開発途上のシベリアの街と風景や人々の様子を、アニメーションやアーカイブ映像を挿入しつつ書簡形式のナレーションで描く。“シネ・エッセイ”の作家として注目された1作。
『ある闘いの記述』
Description d'un combat
1960年/イスラエル=フランス/カラー/DCP/57分
監督:クリス・マルケル 撮影:ギスラン・クロケ
ナレーション:ジャン・ヴィラール
日本語版字幕:松岡葉子
配給:パンドラ
1961年ベルリン国際映画祭短編部門金熊賞
1948年の建国以来12年目を迎えたイスラエルの複雑な現実を描く。1967年の第三次中東戦争勃発後、マルケル自身が本作の上映を禁じた時期があった。
『不思議なクミコ』
Le mystèreKoumiko
1965年/フランス/カラー/35㎜/47分
監督・撮影・編集・ナレーション:クリス・マルケル
音楽:武満徹『弦楽のためのレクイエム』他
出演:村岡久美子
日本語版字幕:寺尾次郎
提供:株式会社創人舎(シネマトリックス)
1964年、東京オリンピックに湧く高度成長真っ只中の日本を、フランス語を学ぶ満州生まれのひとりの日本人女性を通して描いた映画エッセイ。
『イヴ・モンタン~ある長距離歌手の孤独』
La solitude du chanteur de fond
1974年/フランス/カラー/DCP/60分
監督・編集:クリス・マルケル
出演:イヴ・モンタン
日本語版字幕:松岡葉子
配給:パンドラ
チリ難民支援コンサートのためにリハーサル中のイヴ・モンタン。世界的な歌手にして俳優でもある彼へのインタビューや、出演映画の断片映像などにより、その意外なポートレイトが…
『サン・ソレイユ』
Sans soleil
1982年/フランス/カラー/DCP/104分
1983年ベルリン国際映画祭OCIC特別賞他
監督・撮影・編集:クリス・マルケル
日本語版字幕:松岡葉子
配給:パンドラ
世界を旅するカメラマンから届いた手紙を朗読する女性。日本とアフリカ、記憶や旅をテーマに、フィクションやドキュメンタリー、哲学的考察が混在したマルケルの代表作の1本。
『A.K. ドキュメント黒澤明』
1985年/フランス=日本/カラー/35㎜/74分
監督・編集:クリス・マルケル
音楽:武満徹
ナレーション:蓮實重彦
提供:アスミック・エース株式会社
黒澤明監督による日仏合作映画『乱』の撮影過程を記録したドキュメンタリー。数多くのスタッフやエキストラが行き交う大掛かりな撮影現場。彼らに混じって武満徹の姿も。臨場感のある画面はクリス・マルケルの別の貌である。
『レベル5』
Level Five
1997年/フランス/カラー/DCP/110分
監督・撮影・編集:クリス・マルケル
撮影:ジェラール・ド・バティスタ/イブ・アンゲロ
出演:カトリーヌ・ベルコジャ
日本語版字幕:渡辺真也
配給:パンドラ
ローラは亡くなった恋人の仕事を引き継ぎ沖縄戦についてのコンピュータ・ゲームを完成させようとする。仮想空間の中に現実と虚構が交錯するマルケル晩年の問題作。
孤高の映画作家 「クリス・マルケル特集2019」予告
4月6日(土)~4月19日(金)渋谷ユーロスペースにて開催
参考資料:キネマ旬報/「山形国際ドキュメンタリー映画祭2013公式カタログ」
協力:アスミック・エース株式会社/シネマトリックス
宣伝デザイン:桜井雄一郎(マグマファクトリー) 宣伝協力:スリーピン(原田徹)