新進気鋭の映画監督のショートフィルム8本を集めたオムニバス映画『Short Trial Project 2018』が3月16日(土)から全国ロードショーとなる。
この企画は、これからの活躍が最も期待される監督として榊原有佑/新波涼太、門馬直人、上田慎一郎、小椋久雄、Yuki Saito、諸江亮という6組7人の監督の8本のショートフィルムがまとめて公開されるというもの。
今回はその上映作品の1つである、『島のシーグラス』の主演・平田満さんと理学療法士の生き方を通じて生と死を見つめた映画『栞』の監督の榊原有佑氏にお話を伺った。
※『栞』は、北京国際映画祭の出品、フランス最大の日本映画祭である“KINOTAYO現代映画祭”の最優秀映像賞受賞作品。
『島のシーグラス』概要
舞台は、島民よりも猫の数が多く猫島とも呼ばれる熊本県上天草市の湯島。美しき島原湾に浮かぶこの離島に、この島とは縁もゆかりもない、平田満さんが演じる孤独で偏屈な老人・神田が移住した。田牧そらさん演じる島の少女・朱莉との時間を通じて、神田が変わっていく物語。
平田満×榊原有佑に聞く『島のシーグラス』とショートフィルムの魅力
Q:この作品のオファーを受けたときどう思いましたか?
平田満さん:
もっと短いものだと思っていました(笑)
ショートフィルムという話を聞き、本当にショートなんだろうなと思って、まあいいんじゃない?と(笑)ショートだから何もしなくてもムードたっぷりに撮ってくださるのかなと。
榊原監督:(笑)
平田満さん:
また、上天草市の湯島は別名猫島と言われるほど猫が多かったりするし、とっても面白そうだなと。また、脚本を読んで孤独な老人が島の少女と出会って、というストーリーも良い。短いも、長いもないですよね、小説とかもそうです。
ショートフィルムも、長編もやっぱり、芯というか、中心になるものがあるかどうかだと思います。もちろん、撮影に入ってからは全部監督の言うとおりに…(笑)
Q:ショートフィルムという事もあって、限られた時間の中で非常に濃いメッセージを伝える内容だったと思いますが、演じたご感想はいかがですか?
平田満さん:
『Short Trial Project 2018(以下STP2018)』は、一口にショートフィルムといっても色々なやり方とか、撮影の仕方があるんだなと思いました。
榊原監督の作品『島のシーグラス』については、本当に削ぎ落していて無駄な説明がない。過去のことを敢えて言わない。
すごく素敵なんですが、やってる方としては、これで合っているのか?と思いながらやっていました(笑)田牧そらちゃんとの交流というか、結局はそれなんだなと思いながらやっていました。
例えば、「こういうことがありました、はい、その顔をしてください!」というのではなくて、全部、ロケーション、湯島という土地柄、スタッフの方々も含めて、ずっとそこに、短い間とはいえずっと一緒にいる、こういうことを感じながら演じていました。素直に。
Q:平田満さん演じる偏屈で孤独な老人・神田と、島民の温かさ、おおらかさの対比が一層『島のシーグラス』を魅力的にしていたと思いましたが、湯島を選んだ理由をお聞かせください。
榊原監督:
もともと、湯島の離島振興のPRビデオを撮りたいという話がありました。
このきっかけから、実際に湯島に赴き、現地の風景を見ながら歩き回り、シナリオハンティングをして脚本を書いていきました。
実は神田役にはモデルがいるんです。本当に湯島に縁もゆかりもなく移住してこられた方で、今では島おこしの中心的な役割を担っていたりします。最初はどんな人かもわからないから警戒するのは当然ですけど、心を開けば受け入れる、という土壌があるんでしょうね。
本当にびっくりしたエピソードですけど、撮影中雨が突然降ってきたことがあります。
アテンドしてくださっていた島民の方が、お知り合い(?)の家に勝手に入っていって、傘をとってきて、貸してくれたんですよ。えっいいんですか!!!???とおもいましたが、いいんだよ、後で借りたっていうから、と。そのほかにも、このジャガイモもってけ~とか、これ食べてって~、バイクも乗っていいよ、車も使っていいよとか。本当にあったかい。
この島には、「これは俺のものだからだれにもやらん」っていう感覚がないんですよね。
Q:神田役に平田満さんを選ばれた理由を教えてください。
榊原監督:
平田満さんにオファーをさせていただいた理由はすごくシンプルで、
先輩の作品に出られていたりとか、身近なディレクターと一緒にやっていたり。
そういうのを傍から見ていて、いつかは自分も、とずっと思っていました。
また、スタッフも含めて平田満さんのファンが多くて!(笑)
スケジュールが多忙かなぁと思いつつもオファーさせていただきました。
Q:お二人にとってショートフィルムとはなんでしょうか?
榊原監督:
映画、映像のいいところは抽象的に描いてもお客さんが主体的に「取り」に来てくれれば想像が補ってくれる、という事だと思います。そして、それはショートフィルムだからこそ際立つんだと思います。例えば2時間説明もなしに見続けるのは厳しいけど、ショートフィルムは短期集中。短い間に個人個人でいろいろな想像ができて、その人だけの作品になれる。
これがショートフィルムとしての美学だと思っています。
勿論細かな設定は裏で準備をしていますけど、回想を挟んだり、言葉で説明をすることなく、主体的にのめりこんで「取りに行く」、つまり想像をしてもらえるということがショートフィルムの魅力の一つだと思います。
平田満さん:
作家性が出る、出やすいのがショートフィルムなのかもしれません。
例えば、長編だと、長い時間の中で色んな変遷があったりしてだんだん厚みが出てくる。また、ストーリーも、シチュエーションもたくさん変わっていって編集で切ったり貼ったりできる。それも面白いけど、ショートフィルムはスパッとしていて、ピタッと終わる。
作家が伝えたいことが、ダイレクトに伝わってくるんです。これがとても気持ちがいい。
今回の『島のシーグラス』では、監督が伝えたいことがそのまま伝わってきて、あとは見た人の想像力にゆだねて補完してもらう。ゆだねるというのは勇気のあることだと思いますが、すごく気持ちがいい作品に仕上がっています。
STP2018の他の作品も見ましたけど、どれも本当にすごく見どころがあった。
Q:最後に、STP2018と、『島のシーグラス』をこれから見られる方に一言お願いします。
榊原監督:
ショートフィルムは馴染みのない方もいらっしゃるかと思いますが、本当に短いからこそ、逆に割り切って、思い切った演出であったりストーリーであったりする作品が多いです。
『島のシーグラス』も勿論そういった意識で臨んだ作品で、ショートフィルムだからこそ、という面白さが見えてくる作品になっていますので、ぜひこの機会に見て頂きたいです。
平田満さん:
個性がそのまま出ています。
特に『島のシーグラス』は、監督のきれいな心がそのまま画面にあらわれています(笑)
心洗われるショートフィルム。
ありきたりかもしれませんが、本当に心が洗われました。
『Short Trial Project 2018』は3月16日(土)に全国ロードショー
Aプログラム
『島のシーグラス』(監督:榊原有佑)
『ブレス』(監督:新波涼太、門馬直⼈)
『ヘタクソで上⼿な絵』(監督:上⽥慎⼀郎)
Bプログラム
『2nd Memories』(監督:⼩椋久雄)
『正装戦士スーツレンジャー』(監督:上⽥慎⼀郎)
『セミが鳴いた⽇』(監督:榊原有佑)
『アンナとアンリの影送り』(監督:Yuki Saito)
『シラユキサマ』(監督:諸江亮)
平田満、田牧そら/
川添野愛、黒澤はるか/
藤野優光、星野晶子/
伊藤悌智、櫻井麻七/
石井貴就、金刺わたる/
すズきさだお、木野愛子/
花坂椎南、小野莉奈/
戸畑心、山本栄司
監督:
榊原有佑/新波涼太、門馬直人/上田慎一郎/
小椋久雄/ Yuki Saito /諸江亮
配給:and pictures / SAIGATE Inc.
詳細は下記より