舞台はポップカルチャーの聖地・秋葉原。
10年前の6月8日に起こったショッキングな事件をモチーフに、絶望の中に生きる若者たちと大人たちが見たものとは...。悪いのは誰だ。犯人か、被害者か、メディアか、ネットか、社会か?
人類史上最も凄惨な今を生きる世界の若者たちから圧倒的支持を獲得している同時代映画『Noise』が3月1日(金)より テアトル新宿ほかにて公開されます!
世界が圧倒的支持の同時代映画でデビュー松本優作監督に聞く!
イギリス・レインダンス映画祭に詰めかけた観客と評論家の圧倒的支持を集め、 社会で生きる人々が抱える孤独や闇を描き、現代に生きる若者による若者と若者の親たちのための同時代映画と銘打たれら『Noise』。
この度、シネフィルではこの衝撃作『NOISE』で戦慄な監督デビューを果たした松本優作監督に、公開直前に質問を投げかけました!
狂気と混乱がのたうつ現代に生きる若者による
若者と若者の親たちのための“同時代映画”
まず初めにお聞きしたいのですが、この作品のテーマは監督自身が当時体感したことから生まれたとお聞きしていますが、実際どういう状況だったのですか?
僕が15歳の時、ニュースで秋葉原の無差別殺傷事件を知りました。その同時期に僕の友人が自殺してしまいました。無差別に人を殺すことと、自分を殺すこと。全く関係のない二つの出来事ですが、当時の僕にはどこかリンクしているように感じました。もしかしたら、このような出来事が起こる根本的な理由は同じではないのかと。そして僕自身が、自分の人生で一番苦しい時期だったこともあり、もしかしたら僕もどちらかの選択をしてしまうのではないかと感じました。
やはり、映画の企画・脚本からスタートして作品の製作資金やキャスティングなどはどのように進めていったのでしょうか?
もちろん、この映画は完全な自主制作映画ですので、誰かにお願いされて作ったわけではありません。主演を含めメインキャストの一部は決まっていたので、クラウドファンディングを行いました。それで200万ほど集まりました。しかし、そのお金だけでは、この映画を作ることができなかったので、知人に様々な会社の社長を紹介していただき出資を募りました。たくさんの社長さんに企画書を見せてプレゼンをしていく中で数社、映画に出資してくださる会社が見つかりました。
映画監督としては、今作が長編デビューとなりますが、映画監督にはどうした経緯でなられたのか教えてください?
もともと、バンド活動や絵を書いていたりしていたので、自分で何かを表現するのが好きな子供でした。たまたま、自分がどうしても表現したいことを実現するに当たって、絵やバンドではなく、映画でしか表現出来なかったからだと思います。
健の愛読書などで永山則夫の本や、中上健次の小説などが出てきますが、監督自身が影響を受けたもの(映画に関わらず、文学やそのほかのものでもいいです。)教えてください。
まさに永山則夫の「無知の涙」や中上健次の「十九歳の地図」は自分の人生に大きな影響を与えました。映画の中に出てくる大橋健という青年は、僕そのもののような気がしています。それ以外にも遠藤周作の「深い河」やジャック・ロンドンの「火を熾す」、村上春樹の「タイランド」など色々な小説を読みました。
秋葉原の地下アイドルの裏側やディープな部分までを撮られていますが、ご自身この地に思い入れは事件の他にもあったのでしょうか?また、渋谷や、新宿、六本木と違う部分でこのエリアをどう思いますか?
うーん、そうですね。僕自身、秋葉原のアイドルのライブを撮影する仕事や、大橋健のように運送屋でアルバイトをしていた時は秋葉原近辺を配達していたので、自分にとってはとても身近な街だったと思います。自分が苦しかった時代を秋葉原で過ごしたので。他の街よりいろんな意味で思い出深いです。
シネフィルではレインダンス映画祭や海外での評判から最初の『NOISE』を見つけて記事にしていったのですが、海外へはどのように出品されていったのでしょうか?
また、どのような反応だったでしょうか?
海外映画祭には普通に一般応募したり、試写を見に来てくださった英国の映画配給会社社長アダム・トレルさんなどのバックアップもあり、比較的たくさんの映画祭に出品させていただきました。
海外の映画祭の反応で僕が一番印象深かったのは、この映画で描かれているテーマは世界共通だという感想です。秋葉原という街をメインに描いて入るものの、描かれているテーマは世界共通だと。そのような感想を多くいただきました。
美沙、理恵、健。そして、そのそれぞれの親との関係などが交互に展開して、重なり合う形ですが、このような構成は最初から考えていたのですか?
このような事件がなぜ起きてしまうのか?初めはその答えを見つけた上で脚本を書くつもりだったのですが、どれだけ考えても答えは見つかりませんでした。そのため、映画を作る過程で、答えを見つけ出そうとしました。その上で大きく分けて、加害者の視点、被害者の視点、事件とは一見関係のない視点、この三つの視点で描くことで事件の真に迫ろうとしました。そのため、このような構成となりました。
それぞれの疎外感、孤独感が伝わってくるのですが、そのような状況が普通になっている日本の状況をどう思いますか?
うーん。そうですね。僕はこの映画を作るに当たって、過去に起こった似たような事件をたくさん調べました。過去の事件を調べて行く上で、その時代によって事件が起こったきっかけは違えど、根本的には今も昔も大きくは変わってないのかもしれません。もしかしたらネットが普及したいまの時代の方が、自分の居場所を見つけやすい分、昔よりこのような事件が起こりにくいのかもしれません。あくまで僕の推測ですが。
抽象的な質問ですが、監督にとって親子とは、家族とは?
難しい質問ですね。切っても切れないものだと思います。
回想シーンなど、随所で幻想的でかつキレのいいイメージを伝える映像が挟み込まれています。その中も、音楽がいい感じで挿入されていますが、監督自身音楽に対してはbanvoxの参加も含め最初からこだわりを持っていたのでしょうか?
僕自身、ずっと音楽活動をしていたこともあって、拘りはありました。banvox君とは音楽と環境音とのボーダーレスを目指しました。なので一見、環境音に聞こえる部分もbanvox君の音楽だったりします。またbanvox君に映画の環境音を渡して、それをピースのようにはめていきながら音楽を作っていただきました。本当に素晴らしい音楽を作ってくださりました。
松本監督にとっての将来の夢があったら教えてください。
これといった夢があるわけではないのですが、普段生きている中で、疑問に思ったことなどを、もっと上手く映画で表現できるように頑張りたいです。
短編映画『日本製造/メイドインジャパン』も発表したばかりですが、次回の長編作の予定とか、またどのようなテーマを描きたいとか教えていただけますでしょうか?
5月にネパールで映画を作る予定です。この映画の内容も僕の実体験によるものです。
僕としては自分が生きている中で、社会とリンクする映画を作り続けたいです。僕でしか作ることができない映画を作りたいです。
最後に、この作品をこれからご覧になる方へのメッセージをください。
この映画は、僕自身が人生で一番辛かった時期に作った映画です。
今を苦しんでいる人に、是非見て欲しいです。
松本優作初監督作品『NOISE/ノイズ』予告
【STORY】
事件で母を亡くした少女は、強圧的な無職の父と暮らしながら地下アイドルのライブで歌う。アルバイトで暮らす青年は、母親が借りた闇金からの取立てに家を追われボイスレコーダーに収録した憤りを公衆電話を使って吐きだす。制服のまま少女は、仕事と家庭内介護に疲れた父の家から 飛びだす。絶望の中に生きる若者たちと大人たちが見たものとは...。
キャスト&スタッフ
篠崎こころ 安城うらら 鈴木宏侑 岸建太朗 仁科貴 小橋賢児 布施博 來河侑希
川崎桜
日向すず 真中のぞみ
企画・監督・脚本・編集:松本優作
撮影監督:岸建太朗
音楽プロデューサー:banvox
製作プロダクション:vivito
製作:『Noise』製作委員会
配給:マコトヤ
2018|JAPAN|COLOR|シネスコ 2.35:1|3.0ch|115min.|
©「Noise」製作委員会