映画の見られ方が変わってきた2018年の映画興行

そろそろ年の締めくくりといったムードが色濃くなってきている今日この頃、今年の映画興行は何といっても『カメラを止めるな!』を置いて語れないだろう。

小規模公開の超低予算映画が口コミや様々な要素が重なって異例の公開拡大・超ロングラン、興収30億円突破など、まさに2018年の映画ビジネスを象徴する出来事となった。

『カメラを止めるな!』によって映画の見られ方、選ばれ方が変わってきたのは間違いなく、今年は秋以降も”タイ版カメ止め”として話題となり同じく公開拡大を果たした『バッド・ジーニアス』や、口コミにより動員が上向きロングラン上映している『若おかみは小学生!』など、封切り週末が最大で以降は客足が落ちていくという通例とは違った興行展開を見せる作品が多く出てきている。

公開2週目の週末興収が初週の2倍強をマークした、
『ヌヌ子の聖★戦 ~HARAJUKU STORY~』

それらの現象と同様に、小規模公開作ながら2週目の週末興収が初週の2倍となった映画が、『ヌヌ子の聖★戦 ~HARAJUKU STORY~』である。

『ヌヌ子の聖★戦』は、『60歳のラブレター』や『神様のカルテ』で知られる深川栄洋監督が初の企画・プロデュースを担当。監督は、深川監督の作品を始め助監督として活躍してきた進藤丈広氏。本作が映画監督デビュー作となる。

原宿を舞台に、双子コーデで注目を浴びる読者モデル2人の葛藤を描く良質な人間ドラマとなっているが、毎週数々の新作が封切られる映画業界で、初週の数字を2週目が上回るのはかなり異例の事。今回は進藤丈広監督に話を伺った。

がむしゃらで挑んだ、監督デビュー作

画像1: 「ヌヌ子の聖★戦 ~HARAJUKU STORY~」より ©2018 SAIGATE Inc.

「ヌヌ子の聖★戦 ~HARAJUKU STORY~」より ©2018 SAIGATE Inc.

進藤監督は東京都の出身。母親が映画好きで、幼い頃に劇場で観た「ジュラシック・パーク」で映画への憧れを抱き、映画監督を志すように。日本映画学校(現・日本映画大学)を卒業し助監督の途に入り、深川栄洋監督や青山真治監督などの作品に携わってきた。

自身で監督した短編作品を深川栄洋監督に見せたところ評価され、プロデュース業に意欲を感じていた深川氏から監督デビューの話を持ち掛けられる。

原宿、双子コーデ、モデルといった現在の要素に至るまで様々な企画を経たそうだが、自身も10代後半から20代頭に慣れ親しんだ原宿という街を、”モラトリアムの時の空間”、”青春の場所”と称し、今回の作品の舞台としては最適だと考えていたとの事。

現在34歳で、17歳のW主演の2人のちょうど2倍の年齢。本作のキャスティングでは一般オーディションも開催し、芸能界を目指す一般の中学・高校生達とも多く会ってその世代の熱量を目の当たりにしたという。

「ヌヌ子の聖★戦」が描くのは、大人への通過儀礼として多くの人が味わう、ちょっと苦い感情や人間関係。進藤監督も、同じ目線に立とう、同じように自分自身も成長していこう、というスタンスで初めての映画監督業に臨んだ。完成した映画に関して、「今から大人になる人、もう大人の人、誰もが共感できるような、普遍的な人間の感情を描いた作品になった。」と手応えを感じていた。

打ちのめされた公開初日、集客に奔走する日々

「ヌヌ子の聖★戦」は11/9(金)に渋谷シネクイントで先行公開、満を持して11/16(金)に全国ロードショーを迎えるが、客入りは厳しかった。郊外の劇場では閑古鳥が鳴いていた。

その時を振り返り進藤監督は、「作品には自信があったので、率直に悔しかった。」と語る。プロデューサーの深川氏からも深刻な電話が度々きたという。そこから進藤監督と深川氏の2人は、映画で描かれるような若者が集う都内の専門学校を回ったり、お互いのツテを手繰って宣伝に奔走した。進藤監督自身も、友人知人に片っ端から連絡をしたという。「勿論これまでSNSではずっと告知をしてきたが、もっと面と向かって声をかけて観てもらわないとと思った。この映画を機に自分の人生の棚卸をしているよう。卒業以来会っていない小学校の同級生にも連絡して観に来てもらった。」と語る。

そうした奔走が実を結び、ネットでの作品の口コミも手伝ってか、2週目の週末興収が初週の2倍強を記録した。閑古鳥が鳴いていた郊外の映画館にも人が入ってきた。東京集中ではなく、全国でその現象が起きたという。

進藤監督も深川氏も、この現象には驚きを隠せなかったそう。集客の上昇も手伝い、複数の劇場で上映延長が決定した。

常にSNSで映画の評判をチェックしている進藤監督は、「観た人からの反応は本当に良い。リピーターが多く、ロケ地の聖地巡礼をしているファンも現れている。」と語り、「劇場で鑑賞した人がSNSで発信し、横に広がってきたのでは。」と興行を分析している。

画像2: 「ヌヌ子の聖★戦 ~HARAJUKU STORY~」より ©2018 SAIGATE Inc.

「ヌヌ子の聖★戦 ~HARAJUKU STORY~」より ©2018 SAIGATE Inc.

下北沢トリウッドでは12/21(金)までの上映

今回ご紹介した「ヌヌ子の聖★戦 ~HARAJUKU STORY~」、現在は下北沢トリウッドでロングラン中で12/21(金)まで、イオンシネマ港北ニュータウンとイオンシネマ京都桂川で12/13(木)までの上映予定となっている。

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映画「ヌヌ子の聖★戦 〜HARAJUKU STORY〜」 予告編

画像: 映画「ヌヌ子の聖★戦 〜HARAJUKU STORY〜」 予告編60秒 youtu.be

映画「ヌヌ子の聖★戦 〜HARAJUKU STORY〜」 予告編60秒

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画像: 進藤丈広 監督

進藤丈広 監督

進藤丈広
1984年東京都出⾝
日本映画学校を卒業後、深川監督作品の「神様のカルテ」「ガール」や、⻘⼭真治監督「共喰い」、パク・チャヌク監督「お嬢さん」など、助監督として数多くの映画に参加。
2016年には、自主制作「敏感に喜ぶ」で福岡インディペンデント映画祭で優秀作品賞受賞、TAMA NEW WAVEある視点部門入選。
2017年、Amazonプライムドラマ「チェイス第一章」1,4,7話を監督して商業デビューを果たし、「ヌヌ子の聖★戦〜HARAJUKU STORY〜」が⻑編映画デビューとなる。
2018年にはFOD「こんな未来は聞いてない!!」で監督を務める他、Music Videoも手掛ける。次世代の監督として期待を集める。

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