介護うつの果てに母を亡くした青年の苦悩と希望を描いて大ヒットした香港映画『誰がための日々』の公開が、2月2日(土)より新宿K’s cinema ほか順次公開されることが決定致しました。
映画を見終わった後、一瞬言葉が出てこないぐらい観客を圧倒する重々しいこの作品は、撮影当時 20 代後半の香港の新人監督ウォン・ジョン(黄進)が撮った長編第 1 作目である。
2013 年 3 月、 香港政府機関である商務及経済発展局が香港の新人発掘を目的に試験的に企画し、電影発展局 が企画を支持、基金を設立した「首部劇情電影計劃」の第 1 回受賞企画となった本作は、計画の目的を見事に達したと言える。
2017 年香港金像奨で(主演男優賞、助演男優賞、 助演女優賞/エレイン・ジン、助演女優賞/シャーメイン・フォン、監督賞、新人監督賞、脚本賞、音楽賞) の8 部門にノミネートされ、助演男優賞、助演女優賞、新人監督賞を受賞。
台湾金馬奨では助演女優賞と新人監督賞を受賞、大阪アジアン映画祭ではグランプリを獲得し、一躍アジアで注目される香港の監督となったからだ。香港で香港の人のために作られる地元に根付いた映画が注目を集めている昨今、この新香港ニューウェーブとも言える流れの決定的な作品がこの『誰がための日々』である。
物語は、ショーン・ユー演じるトンが 1 年間の精神科病院での入院生活を終えるところから始ま る。会社を辞め 1 人で母の介護をしていたトン。
弟はアメリカに行ったきり戻らず、父はお金を 入れるだけで家には寄り付かなかった。母は傍にいるトンに辛く当たるしか術がない。でもトンは母を施設には入れたくなかった。
結果、介護うつになり、ある事故を起こして最愛の母を死な せてしまう。裁判は無罪、しかし躁鬱病で措置入院させられる。
「家族の支えが必要」と医者から言われ、父が迎えにくる。母の居た部屋を解約し、狭い父の部屋で 2 人は暮らし始める。母を見捨て家から逃げていた父を恨むトン、久しぶりに会う病気の息子をどうしていいか分からず、 知らぬ間に家族を傷つけたと悔やむ父。事件や病気に対する周囲の偏見と誤解、差別と向き合う内に、理解し合えなかった父子を、次第に結びつけていく。
脚本家のフローレンス・チャンは、 実際に香港で起きた事件にインスパイアされて、このオリジナル脚本を書いている。
製作費は 200 万香港ドル(日本円で約 3000 万円)、16 日間で撮影した。
主演のショーン・ユー とエリック・ツァンは、脚本を読んで出演を快諾。報酬に関係なく出演を決定している。ショーンとエリックの顔ぶれは、日本では「インファナル・アフェア」での共演が印象的だろう。
また ショーンはパン・ホーチョン監督作品「恋の紫煙」シリーズ(東京国際映画祭、大阪アジアン映 画祭で上映)が、熱狂的な支持を受けている。
エリックは、俳優として様々な作品に出演しながら、香港の新人への支援を惜しまず、本作によってウディネ・ファーイースト映画祭、ニューヨークアジア映画祭で生涯功労賞を受賞している。
[STORY]
トン(ショーン・ユー)は婚約者のジェニー(シャーメイン・フォン)と家を買い、結婚し家族を作ろうと考えていた。忙しすぎるとジェニーに言われても、施設には入れたくないと、母(エレイ ン・ジン)の介護を 1 人でやっていたトン。
父は長く家に寄り付かず毎月お金だけを送ってくる。 弟はアメリカに行ったきり帰ってこない。母は思うようにならない自身の苛立ちをトンにぶつける。
ぎりぎりの状態でトンはうつ病を発症、ある事件を引き起こし、最愛の母を亡くす。1 年後、躁うつ病の治療を終えて退院するトンの前に、ずっと会わなかった父ホイ(エリック・ツァン)が迎えに来ていた。2 段ベットを置いた狭い部屋で、父子は暮らし始める。
監督:ウォン・ジョン
脚本:フローレンス・チャン プロデューサー:デレク・チウ、ヘイワード・マック
出演:ショーン・ユー、エリック・ツァン、エレイン・ジン、シャーメイン・フォン
2016 年/香港/広東語/102 分/原題:一念無明/
配給:スノーフレイク
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