東京ドイツ文化センターでは、激動の1968年から半世紀経った今日、「今、私たちの社会はどのような転換期にあるのか?」をテーマに、映画上映、有名アーティストによるライブ・パフォーマンス、シンポジウム、ミクストメディアシアター、展示等、様々な表現形式を通じて、この50年の社会政治的展開をクリティカルに考察する“原点回帰にして未来への指標”となるイベント≪1968年―転換のとき:抵抗のアクチュアリティについて≫を開催します。

画像: 1968年―転換のとき:抵抗のアクチュアリティ”開催!映画特集は羽仁進、大島渚、アレクサンダー・クルーゲ、ハイナー・カーロウ作品など日独作品を比較検証!

さらに、その一環として、映画史においても多くの重要作品を生み出したダイナミックな時代であり、後の様々な芸術分野に影響を及ぼした1968年前後の作品にスポットを当てた、注目の映画特集上映+フィルム・パフォーマンスで贈る≪昨日からの別れ-日本・ドイツ映画の転換期≫の開催が2018年5月28日(月)~6月15日(金)に決定致しました。

戦後ドイツ映画の既成概念を打ち破りニュー・ジャーマン・シネマの様式を作り上げる礎となったアレクサンダー・クルーゲ『昨日からの別れ』、ベルリン映画祭でも上映されATG(日本アート・シアター・ギルド)を代表する作品となった羽仁進『初恋・地獄篇』、東ドイツで300万人もの動員を記録したハイナー・カーロウ 『パウルとパウラの伝説』、そして1968年における新宿の混沌をそのままフィルムに描きあげ、最も前衛的な大島渚作品の一つとなった大島渚『新宿泥棒日記』等、非常に刺激的かつ重厚な上映プログラムにご注目下さい!

50年前、いかにして若いアーティスト達が戦後の形式/常識を打ち破り、衝突と挑発的な姿勢によって政治性を持つ新しい映画言語を生み出したのか日独の作品を比較検証し、映画上映に併せて開催する一連のトークでは若い世代のアーティスト・批評家と68年世代との対話を通じ、今日と当時の視点から抵抗運動の可能性について考えます。
アカデミックでありながら、充分に楽しめる内容が盛りだくさんとなっております。

◆1968 ≪昨日からの別れ―日本・ドイツ映画の転換期≫ 

 

◆≪昨日からの別れ―日本・ドイツ映画の転換期≫ 
映画上映+フィルム・パフォーマンス 作品概要/上映スケジュール

映画特集上映 ※料金:各回 500円
(上映後のスカイプ・トーク/対談等のみ鑑賞は料金無料) 

5月28日(月) 

●17:00-映画上映

アレクサンダー・クルーゲ 『昨日からの別れ』 (西ドイツ、1966年、88分) 

画像: ©Alexander Kluge

©Alexander Kluge

ユダヤ人の親を持ち、東ドイツから西側へ逃げてきた22歳のアニタは、カーディガンを盗んだ容疑で保護観察の判決を受ける。その後厳しい保護観察司の監視につらい思いをしながらも西ドイツの生活に慣れる努力をし続ける。事務や語学レコード販売店で働き出し、店長と関係を持つようになったにも関わらず職場でお金を横領してしまう。フランクフルト大学へ入学する努力も失敗に終わリ、不倫をしても虚しいばかりだ。いくらあがいても西ドイツの社会にうまく入り込むことが出来ない主人公アニタは、当時の西ドイツ社会が排除しようとしたナチズムの過去の化身として捉えることができる。ドキュメンタリー手法やテキストの挿入など新しいスタイルを取り入れた『昨日からの別れ』は、戦後ドイツ映画の既成概念を打ち破り、ニュー・ジャーマン・シネマの様式を作り上げる礎となった。

■監督:アレクサンダー・クルーゲ 
■出演:アレクサンドラ・クルーゲ、ギュンター・マック、エファ・マリア・マイネケ、ハンス・コルテ 
■言語:ドイツ語上映(日本語字幕)  
©Alexander Kluge

19:00-スカイプ・トーク 
出演: アレクサンダー・クルーゲ(映画監督)×四方田犬彦(映画史家)×竹峰義和(哲学者)
言語:ドイツ語・日本語、逐次通訳付

5月29日(火) 

●17:00-映画上映 

羽仁進 『初恋・地獄篇』 (日本、1968年、108分)

画像: © 1968 羽仁進/ATG

© 1968 羽仁進/ATG

重い過去を背負う二人のティーンエイジャーの初恋をドキュメンタリーの様式で描くアヴァンギャルド映画。ヌードモデルのナナミはストリップ劇場で働いている。恋人のシュンは暴力と虐待の幼少時代の傷を抱えており、始めて一緒にホテルに行った夜に激しく動揺してしまう。初夜が失敗に終わっても、二人はより互いをよく知りシュンの過去と向き合っていこうと決心する。しかし脆い信頼の絆は、立ちはだかる未来に幾度と無くその強度を試されることとなる。『初恋・地獄篇』は初公開された1968年5月から僅か1ケ月後にベルリン映画祭でも上映され、羽仁進監督もその設立に加わったATG(日本アート・シアター・ギルド)を代表する作品となった。ATGは内容の制約なく革新的な日本映画を制作・配給し、その作品は実験的なカメラワークや断片的な叙述、荒削りで直接的、それでいて極めて繊細な映像言語などを特徴とする。

■監督:羽仁進 
■脚本:羽仁進、寺山修司 
■出演:高橋章夫、石井くに子、浅野春男、額村貴美子、木村一郎
■言語:日本語  
© 1968 羽仁進/ATG

上映後-対談 出演: 羽仁進(映画監督)×アレックス・ツァールテン(映画研究)

●20:00-映画上映  

ハイナー・カーロウ 『パウルとパウラの伝説』 (東ドイツ、1973年、105分)

画像: © DEFA-Stiftung Herbert Krois Manfred Damm

© DEFA-Stiftung Herbert Krois Manfred Damm

同じ地区で育った、スーパーマーケット店員のシングルマザー、パウラと、既婚の国家公務員パウルは顔見知り程度であったが、酒に酔った夜関係を持った二人は恋に落ちてしまう。開放的なパウラは関係に身をゆだねることを厭わないが、面子や世間体を気にするパウルは夫婦関係の硬直した日常にも、婚姻による特権を手放そうとしない。しかし、息子の事故死に対して罪悪感を持つパウラが関係を終わらせると、パウラへの気持ちの深さにやっと気づいたパウルは関係を取り戻そうと決意する。本作は東ドイツで300万人も動員した。社会主義や東ドイツの日常から脱し、階級差がないと謳われる社会のしきたりを越え個人の幸せや自由、自己決定を追い求めるパウルとパウラは国民的スターとなった。このような理由からエーリッヒ・ホーネッカー国家評議会議長は上映禁止を望んでいたが、試写会での大反響を受け承認することとなった。1980年代になって主人公を演じた俳優が西ドイツへ逃亡をしたことを機にこの作品の上映が禁止されることとなった。

■監督:ハイナー・カーロウ 
■脚本:ウルリヒ・プレンツドルフ 
■出演:アンゲリカ・ドムレーゼ、ヴィンフリート・グラッツェーダー、ハイデマリー・ヴェンツェル
■言語:ドイツ語上映(日本語字幕)  
■協力:国立映画アーカイブ   
© DEFA-Stiftung Herbert Krois Manfred Damm

5月30日(水)

●17:00-映画上映  

ペーター・ネストラー特集  (西ドイツ、1964-1967年、85分)

上映プログラム: 『Mülheim/Ruhr』 (1964)/『Rheinstrom』 (1965)/『Von Griechenland』 (1966)/『Im Ruhrgebiet』 (1967)

画像: ©Peter Nestler

©Peter Nestler

西ドイツの産業的な映画製作にショックを受けたペーター・ネストラーは1960年代から当時の公共放送や私営テレビの形式に則らない独自のスタイルで短編ドキュメンタリーを発表してきた。その特徴は例えば、歴史的な素材の扱い方に見て取ることができる。革新的なモンタージュによって彼は、歴史的資料と新しく撮影されたフッテージを組み合わせ、過去と現在を詩的なやり方で繋いだ。ネストラーがとりわけ興味を持ったことは、人々の日常であり、特に辛く困難な仕事を記録することで、当時の政治的、社会的そして経済的なプロセスを人々に示した。ネストラーの作品はドイツのテレビ局には過激すぎると受け入れてもらえず、検閲という問題と向き合わなければならなかった。ドキュメンタリー作品の制作を続けるため、ネストラーはスウェーデンへ移住した。

■監督:ペーター・ネストラー 
■言語:ドイツ語上映(日本語字幕) 
©Peter Nestler

●19:00-映画上映  

NDU(日本ドキュメンタリスト・ユニオン) 
『沖縄エロス外伝 モトシンカカランヌー』
(日本、1971年、94分、16mm[デジタル])

画像: NDU(日本ドキュメンタリスト・ユニオン) 『沖縄エロス外伝 モトシンカカランヌー』 (日本、1971年、94分、16mm[デジタル])

モトシンカカランヌーとは沖縄の方言で、元金のいらない商売、または仕事のことで売春婦、ヤクザ、ドロボウ、などのことである。コザ周辺のモトシンカカランヌーを描いたドキュメンタリーは、、二年間に渡り沖縄を取り巻く複雑な政治的状況を映し出す。差別、収奪、犠牲の上に成り立つ沖縄と本土との関係は、せまりくる七十一年本土復帰に際し、再び問いに付されることになる。
1968年に、新しいドキュメンタリー映画運動を模索すべく布川徹郎、井上修らによって結成されたNDUは、政治的に評価されていた先行世代の作家や集団を含めて、既存の日本ドキュメンタリー映画のあり方を徹底的に批判していった。

■監督:NDU (日本ドキュメンタリスト・ユニオン) 
■提供:プラネット映画資料図書館 ■言語:日本語

上映後-対談 出演: 井上修(映画監督)×佐藤零郎(映画監督、NDS)  

5月31日(木) 

●16:00-映画上映  

大島渚 『新宿泥棒日記』  (日本、1969年、95分、35mm)

画像: ©大島渚プロダクション

©大島渚プロダクション

鳥男と名乗る学生は書店で万引きをした際にウメ子という若い店員と知り合う。彼はすぐに政治的・性的に直接的な彼女の態度に惹かれる。1968年、背景に新宿での学生運動が激化する中、二人は共に性の解放を模索するが、社会的秩序によりうまく行かない。しかし、様々なセラピーを通じて二人は性の解放に辿り着き、新宿での騒乱と重なり合う。デザイナー、美術家の横尾忠則を主人公に、状況劇場の唐十郎、紀伊国屋書店の田辺茂一、性学者の高橋鐡などを迎えるとともに、脚本家に足立正生などを加えるなどして、1968年における新宿の混沌をそのままフィルムに描きあげ、最も前衛的な大島渚作品の一つとなった。

■監督:大島渚 
■脚本:大島渚、足立正生、田村孟、佐々木守 
■出演:横尾忠則、横山リエ、田辺茂一、高橋鐵、渡辺文雄、唐十郎
■言語:日本語  
©大島渚プロダクション

上映後-対談 出演: 横尾忠則(美術家)× 成相肇(東京ステーションギャラリー学芸員)

●19:00-映画上映  

ペーター・フライシュマン 『下部ババリアの人間狩り[迫害]』 
(西ドイツ、1969年、88 分、16mm)

画像: ©Peter Fleischmann

©Peter Fleischmann

20歳の整備士、アブラムは久しぶりにバイエルン州の下部にある故郷の村へ帰ってきた。村の人たちが彼の滞在していた場所について尋ねても、彼は一向に話そうとしなかった。この小さな村の中で、彼が同性愛的な犯罪を犯して刑務所に入っていたという噂が広がるのに、時間はかからなかった。そうでなくてもアブラムと彼の母は昔引っ越してきたときから、村に受け入れられない存在だったのだが、その噂のせいで完全に孤立してしまう。妊娠中のハネローレが彼の唯一の理解者なのだが、彼女が妊娠中の子供がアブラムの子だとあちこちに広めことが、村に更なる波乱を巻き起こすのであった。戦後ドイツの郷愁映画に真っ向から対立するフライシュマンのニュー・ジャーマン・シネマ初期の古典。フライシュマンの作品の中で農村の牧歌的叙情は、鈍重な村社会に変容し、社会的抑圧の温床として提示される。

■監督:ペーター・フライシュマン 
■出演:マーティン・シュペア、エルゼ・クヴェッケ、アンゲラ・ヴィンクラー、ミヒャエル・シュトリクスナー、マリア・シュタットラー、グーニャ・ザイザー、ヨハン・ブルナー、ハンナ・シグラ、レナーテ・ザンドナー、エルンスト・ワーグナー、ハンス・エルヴェンシュペーク 
■言語:ドイツ語上映(日本語字幕) 
©Peter Fleischmann

6月1日(金)

●17:00-映画上映  

ウラ・シュテックル 『エリカの煩悩』 (西ドイツ、1976年、64分)

画像: ©Ula Stöckl

©Ula Stöckl

1968年にウルム造形大学で映画学を卒業したウラ・シュテックルは、彼女の卒業製作兼デビュー作である「新しい人生には猫がいる」で、ドイツで初めてのフェミニスト映画を生み出した。それは、ドイツのテレビのために製作された室内劇「エリカの煩悩」と同じ、男女それぞれの社会的役割の描写と性の関係性の新しい繊細さというテーマの幕開けであった。二人の女性、エリカとその友達のフランチスカのドラマを描く中でシュテックルは、人間関係が互いにどう作用するのかを描いている。

■監督兼脚本:ウラ・シュテックル 
■出演:カリン・バール、ヴェラ・チェコヴァ 
■言語:ドイツ語上映(日本語字幕)  ©Ula Stöckl

●19:00-映画上映  

佐々木美智子+城之内元晴特集

上映プログラム:
『いつか死ぬのね』(日本、1968-1974年、25 分、16mm(デジタル)) ■監督:佐々木美智子

『日大大衆団交』 (日本、1968年、21分、16mm)/『ゲバルトピア予告』 (日本、1969年、13分、16mm)■監督:城之内元晴

画像: © 佐々木美智子

© 佐々木美智子

写真家の佐々木美智子によって、日大全共闘を撮った自らの写真と仲間たちとの日常を撮影した断片的映像が組み合わされた、1968年から74年までの時代のドキュメントであるとともに、極めて私的な作家個人のための日記映画。親密な関係性のなかで、闘争の日々を写し、記録してきた佐々木は、既存の写真的、映画的方法論とは位相を異にするモンタージュによって、それらを繋ぎ合わせていった。同じく日大全共闘の記録として知られる城之内元晴のゲバルトピアシリーズから『日大大衆団交』、『ゲバルトピア予告』を合わせて上映。両者の関係は、闘争の現場における共同にとどまらず、『ゲバルトピア予告』のスチール写真を佐々木が担当するなどしている。
■言語:日本語 
© 佐々木美智子

上映後-対談: 出演:佐々木美智子(写真家)× 渚ようこ(歌手)

6月2日(土) 

●11:00-映画上映  

日本大学芸術学部映画研究会特集

上映プログラム:
『釘と靴下の対話』 (日本、1958年、30分、16mm) /『プープー』 (日本、1960年、20分、16mm)/『椀』 (日本、1961年、 25分、16mm)

画像: 日本大学芸術学部映画研究会特集

日本大学芸術学部映画研究会、および新映画研究会は、1957年に結成され、作家主義を排した集団製作によって、学生映画界のみならず日本の独立映画、あるいはニューウェーブ映画の新しい地平を切り開いた。授業料の紛失を通じて、戦後における学生の閉塞状況をシュルレアリスム的に描いた記念すべき第一作『釘と靴下の対話』、1960年の日米安保闘争の高まりを背景に、連鎖していくイメージをアナーキズム的に描いた『プープー』、ある村落共同体の土着的な閉鎖性を通じて、安保闘争の敗北を問うた『椀』などによって、1950年代後半から60年代前半の政治的、社会的な状況を、既存の劇映画やドキュメンタリー映画とは一線を画する新しい実践と理論によってフィルムに定着させた。これらを歴史的背景として、60年代後半にはアンダーグラウンド映画やより広範な自主上映運動などが生み出されていくこととなった。

■製作:日本大学芸術学部映画研究会 ©日大映研、新映研アーカイブ編集委員会

上映後-対談 出演: 平野克己(映画監督)× 相澤虎之助(映画監督、空族)

●14:00-映画上映  

ルドルフ・トーメ  『紅い太陽』 (西ドイツ、1970年、 87分)

画像1: ©Rudolf Thome

©Rudolf Thome

ヒッチハイクでミュンヘンに向かったトーマスは、あるバーで昔のガールフレンド、ペギーに再会する。泊まる場所がない彼はペギーが他の女友達とシェアハウスをするアパートに迎えられる。しかしこの女性たちが男への憎悪から誓いを立てていたことは彼はまだ知る由もない。その誓いによると愛人は5日以内に殺されなければならないのだ。監督のトーメは1960年代にドイツで花を開き始めたドイツ女性解放運動を取り上げる。日常的な行為や会話を見つめ、ポップでカラフルな映像言語を使ったトーメの作品は、一見したところ非政治的な映画のように見える。しかし美しい映像で描き出されるのは不安を掻き立てるほどに的を得た「ひと夏の恋」の亡霊の姿なのである。構造的・物理的な暴力はヒッピー的イデオロギーの解体を意味し、黄色い太陽は血のような紅に染まる。

■監督:ルドルフ・トーメ 
■脚本:マックス・ツィールマン 
■出演:マーカート・ボーム、ウシ・オバーマイヤー、シルビア・ケクレ、ガビー・ゴー、ディアナ・ケルナー、ヘンリー・ファン・ライク、ハルク・ボーム 
■言語:ドイツ語上映(日本語字幕) 
©Rudolf Thome

16:00-対談 出演: ルドルフ・トーメ(映画監督)×渋谷哲也(ドイツ映画研究) ■言語:ドイツ語・日本語 逐次通訳付

6月2日(土) 

●18:00-映画上映  

ルドルフ・トーメ 『紅い部屋』 (ドイツ, 2010年, 101分)

画像2: ©Rudolf Thome

©Rudolf Thome

ベルリンにある生化学研究所のキス研究家、フレッド・ヒンターマイアーは研究に没頭するあまり、人付き合いもおろそかで、研究を理解しない妻とは離婚の危機にあった。ある日彼は偶然に、魅力的な女性ルジーとその恋人で、男性の心の世界を研究しているジビルと知り合う。その後この3人は、真実の人生と愛に近づく方法を模索する、不思議な関係になる。《紅い太陽》から40年、監督のルドルフ・トーメは愛を自身の映画上の主題とすることに忠実であり続ける。本作では愛を結論がいつまでも定まらない実験装置として描いている。
■監督兼脚本:ルドルフ・トーメ 
■出演: カタリーナ・ロレンツ、セイネブ・サレー、ペーター・クナーク、マックス・ワーグナー他
■言語:ドイツ語上映(日本語字幕) 
■映像提供:同志社大学今出川校地学生支援課 
©Rudolf Thome

上映後:ルドルフ・トーメ監督によるQ&A

6月3日(日)

●11:00-映画上映 

オノ・ヨーコ、ジョン・レノン 『Rape』 (オーストリア, 1969年, 78分)

画像: ©Yoko Ono

©Yoko Ono

※イントロダクション:関直子(東京都現代美術館主任学芸員)

1968年にオノ・ヨーコが書いたスコア『Film No.5: RAPE (or Chase)』をベースに、ロンドン市内の通りすがの女性を事前に許可を得ずカメラチームは執拗に公園から通りへと追う。次第に不安に駆られカメラか逃れようとする彼女。カメラチームは最終的に女性のアパートまで追跡を続ける。カメラの途切れない視線による支配が「普通の」行動パターンを中断させるというウォーホルの理論が、身体的な暴力がなくともここで極端に残酷なかたちで現われる。オーストリアの放送局ORF制作によるこの映画はオノ・ヨーコとジョン・レノンも長年晒された公共の監視に対する批評であると共に、芸術とマスメディアの穏やかな共生関係への別れの歌としても捉えることができる。

■監督・脚本:オノ・ヨーコ、ジョン・レノン 
■出演:エヴァ・マイラート、ニコラス・デイヴィッド・ノウランド 
■言語:台詞なし 
©Yoko Ono

●13:30-映画上映  

足立正生 『性遊戯』 (日本, 1968年, 71分)

画像: ©足立正生全映画上映実行委員会

©足立正生全映画上映実行委員会

学生運動で大学が占拠される中、暇をもてあましたノンポリの大学生、健、ガイラ、オバケの三人が、バリケードの中の解放区は本当にフリーセックスなのかを確かめようと占拠された大学へと向かう。彼らは活動家の女学生・妙子を見つけ拉致・強姦する。健と奇妙な関係を築くこととなった妙子はのちに自分が妊娠していると告白し、関係を持った4人の学生活動家から父親を突き止めようとする。全共闘運動が高まる1968年に日大芸術学部のバリケード内を中心に撮影された作品。状況劇場の吉沢健、暗黒舞踏の中嶋夏を主人公に迎えるとともに、助監督の小水一男、秋山道男を役者として起用し、政治のみならず、性と政治の革命とは何かを描いた足立正生の代表作。

■監督:足立正生 
■脚本:出口出(足立正生) 
■出演:吉沢健、中嶋夏、山谷初男、青目海、小水一男、秋山道男 
■言語:日本語 
©足立正生全映画上映実行委員会

●15:00-シンポジウム  「映像における性と政治をめぐって」 
足立正生(映画監督)×古畑百合子(メディア学)×平沢剛×ローランド・ドメーニグ

●18:00-映画上映  

ヴァリー・エクスポート 特集

(オーストリア、1966-1974年、 80 min)
上映プログラム:
『Selbstportrait mit Kopf』 (1966 -1967)/『TAPP und TASTKINO』 (1968)
『Die süße Nummer. Ein Konsumerlebnis』 (1969)/『Body Tape』 (1970)/『Facing a Family』 (1971)
『Interrupted Line』 (1971)/『Hyperbulie』 (1973)/『Mann & Frau & Animal』 (1970-73)/『Remote...Remote...』(1973)
『Asemie』 (1973)/『Schnitte/ Elemente der Anschauung』 (1971-74)/『Body Politics』 (1974)
※上映前簡単な解説あり

画像: ©Valie Export

©Valie Export

映画、写真またはビデオ……ヴァリー・エクスポートはすべてのジャンルの境界線を壊し、メディアアートと60‐70年代のフェミニスト・アヴァンギャルドのパイオニアとしての国際的な地位を築いてきた。新しいメディアを取り入れ芸術の概念を広げ、作り変えていった。メディアとしての身体が、ヴァリーとその作品を特徴付ける。公共の場における破壊行動を通じて身体的な限界と社会的なタブーを打ち破り、女性の身体に書き込まれた社会的なコードの解体を試みる。ヴァリーの作品は理論的概念的考察を経て生み出されており、芸術を研究として捉えるという1960年代に始まるパラダイムシフトの一例とをなしている。

■監督:ヴァリー・エクスポート ■言語:ドイツ語(英語字幕) 
©Valie Export


 フィルム・パフォーマンス ※料金;各回 1000円

6月12日(火) 

●19:00-フィルム・パフォーマンス  

飯村隆彦、日本、1962-2018年

プログラム:
『サークル&スクエア』(1966-2018 約20min)/『リリパット王国舞踏会』(1964-66、12min)『いろ』(1962、10min)/『Love』(1962、10min)/『あんま』(1963、13min)
フィルムアンデパンダンより 『うらとおもて』( 2min、1964)/『My Documentary』(5min、1964)

画像: ©飯村隆彦/東京都写真美術館

©飯村隆彦/東京都写真美術館

1960年代初頭より日本の実験映画、個人映画を牽引し、60年代後半におけるドイツでの巡回上映、73年のベルリン滞在によって、日本とドイツの前衛芸術の交流を促した飯村隆彦の作品をパフォーマンスという観点から紹介する。フィルム・パフォーマンスの草分けとして知られる「スクリーン・プレイ」で使用された『いろ』、自らもパフォーマーとして参加しながら土方巽の舞踏を撮影した『あんま』、風倉匠の特異な身体を構造的に記録した『リリパット王国舞踏会』のダブルプロジェクション版、64年に結成されたフィルムアンデパンダンより自身の作品を上映。また今回の特集では、スクリーンから客席まで巡らされたブラックリーダーのループフィルムに作家自身がパンチャーで穴をあけつづけ、明滅する光と影が映し出される『サークル&スクエア』のパフォーマンス上映も行われる。
■アーティスト・トーク:飯村隆彦(映像作家) 
■言語:日本語 
©飯村隆彦/東京都写真美術館

6月14日(木) 

●19:00-フィルム・パフォーマンス  

金井勝+城之内元晴、日本、1968-91

プログラム:
『時が乱吹く』(1991年、16mm[デジタル]、62min) 
■監督:金井勝 ■出演:城之内元晴、高橋孝英、高橋葉子、亘真紀、金井勝

画像: ©金井勝 Katsu Kanai

©金井勝 Katsu Kanai

『新宿ステーション』(1968-1974年、16mm、15min) 
■監督:城之内元晴

画像: ©城之内美稲子(Mineko Jonouchi)

©城之内美稲子(Mineko Jonouchi)

短歌篇『夢走る』(1987)、俳句篇『一本勝負の螽蟖』(1988)、詩篇『ジョーの詩が聴える』(1989)に幕間2景を挟んで完成された。当初は、実験的な時代劇として構想されていたが、城之内元晴の事故死を受け、二作目から異色の追悼作品へと大きく方向転換していった。11分間のワンシーン・ワンショットによって金井自身が城之内について語りながら日常と妄想を横断する『一本勝負の螽斯』、あの世から届いた城之内の手紙を元に、『新宿ステーション』の詩を引用しながら、自宅の庭を這いまわりその記憶をたどる『ジョーの詩が聴こえる』。今回の特集では、『新宿ステーション』の上映当時に、城之内がスクリーンの前で詩を朗読したように、金井による詩と映像のパフォーマンスに合わせて二作品の上映が行われる。

■アーティスト・トーク:金井勝(映像作家) ■言語:日本語  
©金井勝 Katsu Kanai 
©城之内美稲子(Mineko Jonouchi)

6月15日(金) 

●19:00-フィルム・パフォーマンス

シュウゾウ・アヅチ・ガリバー、日本、1966-68年
プログラム:
『Switch』(1966、16mm[デジタル])/『Screen』(1967、16mm[デジタル])
『Film』(1968、16mm[デジタル])/『Box』(1968、16mm[デジタル])

画像: ©シュウゾウ・アヅチ・ガリバー

©シュウゾウ・アヅチ・ガリバー

1960年代は伝説的なヒッピーとして、70年代からは絵画、彫刻、写真、パフォーマンス、インスタレーションなどの幅広いジャンルを横断する現代美術作家として知られているシュウゾウ・アヅチ・ガリバーの60年代後半における映像作品を上演する。カメラによって1秒24コマで四角いフレームのフィルムに記録される時間と形式、映写機の光による白いスクリーンへの投射とそれを見る観客という空間、そうしたメディア自体の構造や環境、そしてその概念を原理的に問い返していく諸作品は、まったく新しい表現の登場というだけにとどまらず、映画・映像という分野のあり方を根底から揺さぶる出来事であった。今回の特集では、『Switch』、および『Box』のパフォーマンス上映が行われる。

■アーティスト・トーク:シュウゾウ・アヅチ・ガリバー(美術家)
■言語:日本語 
©シュウゾウ・アヅチ・ガリバー

映画特集上映+フィルム・パフォーマンス 開催概要

【日 程】 
映画上映:5月28日(月)~6月3日(日)
フィルム・パフォーマンス: 6月12日(火)、14日(木)、15日(金)

【会 場】 ゲーテ・インスティトゥート 東京ドイツ文化センター
(東京都港区赤坂7-5-56 ドイツ文化会館内)
【料 金】 映画上映各回500円/フィルム・パフォーマンス各回1000円 
【主 催】 ゲーテ・インスティトゥート 東京ドイツ文化センター
 TEL:03-3584-3201

【映画上映/フィルム・パフォーマンス スケジュール】 

下記より 

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