「今、シリアは第三次世界大戦のような状態
人間を大切にしない思想と闘わなくてはいけない」

映画『ラッカは静かに虐殺されている』

学生からRBSSメンバー、ハッサン(Hussam Eesa)へのインタビュー
先行上映&トークin早稲田大学

この度、4月14日(土)に公開を控えたアカデミー賞ノミネート『カルテル・ランド』のマシュー・ハイネマン監督作品『ラッカは静かに虐殺されている』の上映とトークのイベントを早稲田大学にて開催致しました。

本作は戦闘が激化し混迷を極めるシリア内戦で秘密裡に結成された市民ジャーナリスト集団RBSS(Raqqa is being Slaughtered Silently/ラッカは静かに虐殺されている)と「イスラム国」(IS)とのSNSを駆使した情報戦、ニュータイプの戦争と言われる闘いを、現実の出来事とは思えない壮絶な緊迫感で捉えたドキュメンタリー映画です。

画像: 「今、シリアは第三次世界大戦のような状態 人間を大切にしない思想と闘わなくてはいけない」

この上映・トークは4月6日(金)早稲田大学早稲田キャンパス「ドキュメンタリー論」授業内にて開催いたしました。

映画『ラッカは静かに虐殺されている』の上映後、本作の主人公、市民ジャーナリスト集団RBSSのメンバー、ハッサン(Hussam Eesa)にSkype中継を通じて学生たちからのインタビューが行われました。
またインタビューを終えた後、本作の監修にも参加したシリア人ジャーナリスト、ナジーブ・エルカシュさんからシリアの現状解説が行われました。

『ラッカは静かに虐殺されている』 先行上映トークイベントin早稲田大学
【日程】2018年4月6日(金)
【会場】早稲田大学 早稲田キャンパス 3号館405号室 4F
【登壇者】
 野中章弘(早稲田大学政治経済学術院/ジャーナリズム大学院教授)
 ナジーブ・エルカシュ(シリア人ジャーナリスト)
 ハッサン Hussam Eesa(RBSSメンバー)※ Skype生出演

画像1: 『ラッカは静かに虐殺されている』 先行上映トークイベントin早稲田大学 【日程】2018年4月6日(金) 【会場】早稲田大学 早稲田キャンパス 3号館405号室 4F 【登壇者】 野中章弘(早稲田大学政治経済学術院/ジャーナリズム大学院教授) ナジーブ・エルカシュ(シリア人ジャーナリスト) ハッサン Hussam Eesa(RBSSメンバー)※ Skype生出演

映画『ラッカは静かに虐殺されている』は、戦闘が激化し混迷を極めるシリア内戦で秘密裡に結成された市民ジャーナリストRBSS(Raqqa is Being Slaughtered Silently)と「イスラム国」(IS)とのSNSを駆使した情報戦、ニュータイプの戦争と言われる闘いを、現実の出来事とは思えない壮絶な緊迫感で捉えたドキュメンタリー作品。
本作はIS支配下のラッカを描くドキュメンタリーではなく、ラッカから送られてくる情報を受けて発信する国外チームを追ったものである。

2018年4月6日(金)に早稲田大学早稲田キャンパスにて開催されたトークイベントは、 映画『ラッカは静かに虐殺されている』の上映後、学生たちから本作の主人公、RBSSの国外メンバー ハッサン(Hussam Eesa)へSkypeを通したインタビューが行われ、ハッサンが語る残酷な体験や日本人をはじめとする国際社会に訴える思いに学生たちは真剣に耳を傾けた。

インタビュー後にシリアの現状の解説を行ったシリア人ジャーナリスト、ナジーブ・エルカシュは、ハッサンが「ISによって侵略される前、内戦が起きる前のラッカは都心から遠く離れた土地であるために、国政から放置された貧しく部族社会的な田舎町。部族社会である故に人・部族を大切にし宗教規則に縛られすぎない自由で柔軟な風土のある町であった」と故郷のラッカについて語っていた事を明した。
また自身の母国シリアにおける取材活動の中においても、地方が見捨てられていると強く感じたこと、昨年今村元復興大臣が東日本大震災について「東北でよかった」と失言したことを例にあげ、日本においてもこの問題は通じておりこの問題を無視してはいけないと学生たちに呼びかけた。

以下に、学生とハッサンのQAを紹介する。

画像2: 『ラッカは静かに虐殺されている』 先行上映トークイベントin早稲田大学 【日程】2018年4月6日(金) 【会場】早稲田大学 早稲田キャンパス 3号館405号室 4F 【登壇者】 野中章弘(早稲田大学政治経済学術院/ジャーナリズム大学院教授) ナジーブ・エルカシュ(シリア人ジャーナリスト) ハッサン Hussam Eesa(RBSSメンバー)※ Skype生出演

ーRBSSのメンバーは映画の中でISから殺害予告などの脅迫を受け、トルコやドイツなどの国外にいても常に命を狙われています。そういったリスクを背負いながら実名と顔を公表して活動をされていますが、メンバーの中から顔と名前を公表することについて反対する意見はありましたか?

ハッサン:RBSSの中から特に大きな反対意見はあがりませんでした。活動当初はアラビア語で情報を発信していたのですが、国際社会・世界にIS支配下のラッカの悲惨な状況を伝えるためには何が必要かと議論する中で、英語で情報を発信することや、フェイクニュースではないか?ISの活動の一つではないか?という外から聞こえる声を打開するためにシリアから出て活動をするメンバーが顔と実名を公表するという結論に至ったのです。

ただ、顔と実名を明らかにすることは、公表したメンバーの命だけではなく、ラッカの中に残っている家族の命が狙われるという大きなリスクを伴うものです。実際に映画の中でも映像が出ていますが、ISはRBSSのメンバーのハムードの父親を拘束・殺害し、後にその映像を公開しています。更に彼の兄弟の一人も殺害され、もう一人は行方不明になっています。これが、実名と顔を公表しての活動をするうえでの一番のたいへん大きな悩みです。

ーRBSSの活動をやめればISから命を狙われる危険性はなくなると思われますが、活動をやめない理由を教えてください。

ハッサン:活動を辞めれば命が狙われるという事はありません。ISはRBSSがISについての報道を始めた2014年の春、メンバーの一人を誘拐・殺害しました。そこから現在に至るまでわたしたちRBSSのメンバーの命を狙いつづけています。そして、米軍・有志連合の空爆援護を受けたクルド人主導のシリア民主軍(SDF)がラッカを陥落し、いわば彼らに敗北したISの復讐の矛先は、わたしたち(RBSS)のような弱い集団に向かっているのです。

ーSNSの発信に対する反応で印象に残っているものがあったら教えてください。

ハッサン:印象に残っている反応のひとつは、ISに入った兵士のお母さんとのやり取りです。「家庭の中にISに通じるような背景が全くないのに、自分の息子がなぜISに洗脳されてしまったのか分からないけれども、おそらく息子が人を殺してしまったかもしれない」と泣きながら感情的に謝罪してきました。彼女とのやり取りが非常に印象に残っています。

ーRBSSの情報を受け取った日本人に何を望みますか?

ハッサン:とても簡単なことです。ISの思想との闘いに参加してほしいと思っています。ISの思想との闘いは私たちシリア人だけの問題ではなく、全人類の問題です。シリア人もあなたたち日本人も同じ人間なのです。

私たちは、見ていただいたように、ひどく残酷な状況の中で活動することができました。あなたたちには私達よりもっとたくさん行動する手段があると思います。例えば私たちのようなジャーナリスト団体と交流するなど、日本社会の中でも、一人一人の人間を大切にしない思想と戦うことが大事だと思います。

ーRBSSの目指すゴール、何が終焉なのか教えてください。

ハッサン:私たちの活動の目的はシリアという国家の民主化です。RBSSの活動の原点はシリア革命にあります。2011年の春、ラッカではアサド政権の退陣を求める市民デモがはじまり、アサド政権は軍・治安部隊を出動させてデモ隊を弾圧したのです。わたしたちはアサド政権及びシリア政府による弾圧に抵抗し「自由と民主主義」のために活動をはじめたのです。現在も「自由と民主主義」という目的に変わりはありません。

ISがラッカに入ったときも、たしかにISのやり方は宗教に忠誠的であるなど手段は独特でしたが、アクターが独裁政権からISに変わっただけで、町が破壊されているという事に変わりはありませんでした。私たちにとってラッカは家族がいる町ですから、その町をを守るという事については何も違いがないのです。

ーシリアの現状と展望を教えてください。

ハッサン:皆さんご存知の通り、たくさんの国が介入しているため、第三次世界大戦のような状況です。シリアの内戦は代理戦争であるため、たくさんの国家が参加しており、複雑な状況
です。そのため、すぐに解決するとは思いません。現在の段階では希望が見えません。

2017年10月に米軍・有志連合の空爆援護を受けたクルド人主導のシリア民主軍(SDF)がラッカを陥落させISが撤退しましたが、現在のラッカは市民に主食のパンが潤沢にいきわたらなかったり、ISが残した地雷による二次被害が多発、また瓦礫の中に埋まっている死体が腐敗し感染症が蔓延するなど衛生状況は劣悪な環境にあります。また暗殺も続いていて、この暗殺が誰による暗殺なのか分からず、人々は誰に監視されているのか不安な状況で生活しています。

また、教育も大きな問題です。ISに占拠されていた間、彼らはまともな教育を受けていないのです。なので私たちは現在、若手講師の教育プロジェクトなどの形でラッカのコミュニティを支援する手段を考えています。

映画『ラッカは静かに虐殺されている』は、4月14日(土)からアップリンク渋谷、ポレポレ東中野など全国順次公開予定です。

上映期間中にはシリア人ジャーナリストや、現地でISと同行した戦場ジャーナリストなどをお呼びして、映画の背景に迫るトークイベントも行います。

<『ラッカは静かに虐殺されている』公開記念トークショー>
4月14日(土) 13:25の回上映後(会場:アップリンク渋谷)
ゲスト:ナジーブ・エルカシュ(シリア人ジャーナリスト)、岡崎弘樹(アラブ思想・シリア文化研究者)
4月15日(日) 12:20の回上映後(会場:ポレポレ東中野)
ゲスト:黒井文太郎(軍事ジャーナリスト)、常岡浩介(ジャーナリスト)
4月15日(日) 15:05の回上映後(会場:アップリンク渋谷)
ゲスト:磯部涼(ライター)、石田昌隆(写真家)、鍵和田啓介(映画評論家・編集者)
4月21日(土) お昼の回上映後(※時間は4月16日発表予定)会場:アップリンク渋谷  
ゲスト:白川優子(国境なき医師団)、横田徹(ジャーナリスト)
4月22日(日) お昼の回上映後(※時間は4月16日発表予定)会場:アップリンク渋谷  
ゲスト:安田菜津紀(ジャーナリスト)、望月優大(ライター・編集者)

次々と殺されていく仲間や家族。そして暗殺の魔の手は、自らにも忍び寄る。
ドキュメンタリー史上、最も緊迫した90分

『ラッカは静かに虐殺されている』予告

画像: 『ラッカは静かに虐殺されている』予告 youtu.be

『ラッカは静かに虐殺されている』予告

youtu.be

戦後史上最悪の人道危機と言われるシリア内戦。2014年6月、その内戦において過激思想と武力で勢力を拡大する「イスラム国(IS)」がシリア北部の街ラッカを制圧した。かつて「ユーフラテス川の花嫁」と呼ばれるほど、美しかった街はISの首都とされ一変する。爆撃で廃墟と化した街では残忍な公開処刑が繰り返され、市民は常に死の恐怖と隣り合わせの生活を強いられていた。海外メディアも報じることができない惨状を国際社会に伝えるため、市民ジャーナリスト集団“RBSS”( Raqqa is Being Slaughtered Silently/ラッカは静かに虐殺されている)は秘密に結成された。彼らはスマホを武器に「街の真実」を次々とSNSに投稿、そのショッキングな映像に世界が騒然となるも、RBSSの発信力に脅威を感じたISは直ぐにメンバーの暗殺計画に乗り出す――。

映画『ラッカは静かに虐殺されている』
監督・製作・撮影・編集:マシュー・ハイネマン(『カルテル・ランド』)
製作総指揮:アレックス・ギブニー(アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞『闇へ』監督
(2017/アメリカ/92分/英語・アラビア語/1:2.35/5.1ch/DCP)
配給・宣伝:アップリンク

【Facebook】https://www.facebook.com/RaqqaMovieJP/
【Twitter】https://twitter.com/raqqamoviejp

2018 年 4 月 14 日(土)アップリンク渋谷、ポレポレ東中野ほか全国順次公開

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