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心と体と 2017© INFORG - M&M FILM

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独創的でロマンティシズム溢れる恋愛譚

鹿が何かの象徴として、映画に使われることは今までに何度もあった。本作は、同じ食肉処理会社に勤務のさほど親しくもない年差のある男女が、社内の盗難事件に端を発し、事件解決のためにやってきた心理カウンセラーの質問で同じ夢を見ていたことを互いに知ってから急接近し始めるというスーパーナチュラル風味のエキセントリックなラブストーリー。

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『心と体と』2017© INFORG - M&M FILM

普段の仕事や生活が窮屈そうで、あまり幸せそうには描かれないので、毎夜、夢の中での鹿となった彼らが穏やかで至福の時を過ごしているのが伝わってくる。現代人へのシニカルな問いかけが、随所に織り交ぜられている。

鹿はメッセンジャー

筆者は、富士山へ撮影に出かけると夜、車道を悠々と渡る鹿と遭遇することがある。大きな角をはやした勇壮な雄鹿は一頭で孤独に行動し、雌鹿は小鹿を連れて、数頭の群れで行動している。天敵のニホンオオカミが絶滅しているので個体数は増え続けているそうなのだ。

画像: 夜、母鹿に続いて、道路を横断する小鹿、富士山麓、鳴沢村にて

夜、母鹿に続いて、道路を横断する小鹿、富士山麓、鳴沢村にて

鹿は神の使いと云われているので、たまに出くわすと嬉しいし、何か有難い気持ちが湧いてくる。

先日、突然、道路を横断しようとしている数頭の鹿の親子の群れと出くわし、車を急停車させ、次から次へと出てくる小鹿たち、全員、渡ってもらった。するとiPhoneのマップ情報が自動記録されたらしく、翌日、マップに"〇神社はいかがでしたか?感想をシェアしてみませんか”と見知らぬ神社のことを訊かれた。はて、なんだろう?とそこを調べてみた。縁がないとたどり着けないと云われている神社に鹿が呼んでくれたのかなと思い、翌週末にそこへお参りしてきた。

神聖なる生き物である鹿は、そんなことを妄想させてくれる。

18年のブランクを完全に払拭した才気あふれる劇場用長編映画

監督は長編デビュー作『私の 20 世紀』(89)がカンヌでカメラドール<最優秀新人賞>を受賞した、ハンガリーの鬼才イルディコー・ エニェディ。
本作では人間の孤独に寄り添いながらも、自分の殻から一歩踏み出す勇気を与えてくれる優しい物語を紡ぐ。18 年ぶりに発表した長編映画である本作は見事ベルリンを制し、アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた。
本国ハンガリーでは大ヒットを記録し、昨年 3 月 2 日公開から約 1 年以上もの間。異例のロングラン上映をしている。

狭くなり続けるこの惑星でどうやって尊厳をもって生きていけるか?

監督 イルディコー・エニェディ

人は食べるために牛を殺し、鹿に対してはそうではなく、家畜の牛と野生の鹿という類似点のある動物を登場させることで、我々、社会の鏡のような対等の存在として、エニェディ監督は描こうとしたと云います。

「家畜である牛、優雅で自由な鹿、彼らは我々の社会を写し出す鏡のような存在、そして、この惑星で同居していて、世界はどんどん狭くなっていっている。尊厳を持って、どうやって分け合って生きていけるか。我々は学んでいるのです。」監督 イルディコー・エニェディ

想定外なことが起こった鹿の撮影

画像2: 監督 イルディコー・エニェディ

監督 イルディコー・エニェディ

鹿のシーンの撮影には2台のカメラで寒い季節の朝から暗くなるまでの一日中、のべ6日間かかったとエニェディ監督は云います。鹿に強制することはできないので辛抱強く待ち続けた結果、まるで鹿が演技をしているかのようなシーンを収めることができました。

「準備段階から鹿についてたくさんのことを学びました。都市で女性が暗い道を歩く時、四方八方の危険を察知しないとならないように鹿も森ではすべてに注意を払う、肉食動物は獲物との距離を測るために前に眼が付いていますが、鹿の眼は頭部の横に付いていて360度、辺りを警戒できるようになっています。」監督 イルディコー・エニェディ

5か月かかったキャスティング

画像: 監督 イルディコー・エニェディ(左)とスロヴァキアン・ビューティ、アレクサンドラ・ボルベーイ(右) www.zimbio.com

監督 イルディコー・エニェディ(左)とスロヴァキアン・ビューティ、アレクサンドラ・ボルベーイ(右)

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画像: 主人公マーリア役:アレクサンドラ・ボルベーイ 『心と体と』2017© INFORG - M&M FILM

主人公マーリア役:アレクサンドラ・ボルベーイ 『心と体と』2017© INFORG - M&M FILM

まるで「レインマン」の兄・レイモンドを想起させる類まれな記憶力を持ち、繊細でピュアで内気、他人とのコミュニケーションが苦手で社会で生きてゆくのは、さぞや辛かろうとヒシヒシとその痛みが伝わってくる非常に抑制の効いた演技が要求される主人公マーリア役、このキャスティングには、長い時間がかかったという。

「マーリア役のキャスティングは難航したんです。30人くらいの若い女優に会いましたが、みな才能があって、やる気もありましたが、どの子も何かが足りなかったんです。5ヶ月もの間、マーリアを見つけることができませんでした。最初アレクサンドラ・ボルベーイには、精神科医の役をと考えておりました。
元気でストレートで、セクシーでホットな女の子。それが彼女です。実際舞台ではそんな役ばかりを演じていました。でも、どういうわけか、いつもアレクサンドラのことが頭にあって、試してみたくてしょうがなくなったのです。」監督 イルディコー・エニェディ

伝えたかったことは、“人生は人生である”ということ

監督 イルディコー・エニェディ

人生を惜しまないこと、自分を偽らず、逃げ出さず、閉ざさず、外へ出て行って、人生を冒険することをエニェディ監督は勧める。

「人生は白か黒、善と悪と明確に分けられるものではありません。辛い時でも美しい瞬間はあり、それが生きるということ。幸せになることだけが一番大事なことではありません。人生はアドベンチャーです。一歩踏み出してみてください」監督 イルディコー・エニェディ

画像2: 『心と体と』2017© INFORG - M&M FILM

『心と体と』2017© INFORG - M&M FILM

ストーリー

ハンガリー、ブダペスト郊外の食肉処理場。代理職員として働くマーリアはコミュニケーションが苦手で職場になじめない。片手が不自由な上司のエンドレは彼女を気に掛けるが、うまく噛み合わず…。そんな不器用な二人が急接近するきっかけは「同じ夢を見た」ことだった。恋からはほど遠い孤独な男女の少し不思議で刺激的なラブストーリー。

2017 年ベルリン国際映画祭 金熊賞<最高賞>など 4 冠の快挙! 東欧の鬼才、18 年間のブランクから鮮やかに復活。

ベルリン国際映画祭で審査員長をつとめた ポール・ヴァーホーヴェンに「日常であまりにも忘れがちな“思 いやり”を思い出させてくれたこの映画に、審査員みんなが恋をした。」と絶賛されている。

画像: 映画『心と体と』予告編 www.youtube.com

映画『心と体と』予告編

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映画『心と体と』
監督・脚本:イルディコー・エニェディ
出演:アレクサンドラ・ボルベーイ、ゲーザ・モルチャーニ、レーカ・テンキ、エルヴィン・ナジ
2017 年/ハンガリー/ハンガリー語/116 分/カラー/スコープサイズ/5.1ch/原題:Testről és lélekről/英題:On Body and Soul
後援・協賛:駐日ハンガリー大使館
配給・宣伝:サンリス
2017© INFORG - M&M FILM
4月14日(土)新宿シネマカリテ、池袋シネマ・ロサほか全国順次ロードショー

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