いま大注目の若手俳優、吉村界人が主演を務め、モデルで映画初出演のSUMIREと映画や舞台で活躍中の若手実力派俳優の若葉竜也を迎え、映画『黒い暴動♥︎』の宇賀那健一監督による、娯楽が失われた世界を描いた、現代社会へ送る静かなるノイズ映画『サラバ静寂』が誕生した。
シネフィルでは、本作の企画・脚本・監督を務める宇賀那健一とトキオ役の若葉竜也に映画『サラバ静寂』についてと、監督と俳優という仕事について聞いた。
■ストーリー
「遊楽法」という音楽や映画、小説などの娯楽が禁止される法律が施行された日本。ネジ工場で働くだけのつまらない生活を送っていたミズト(吉村界人)とトキオ(若葉竜也)はある日、偶然根絶されたはずの音楽が沢山保存されている廃墟を見つけてしまう。廃墟に通いつめ、どんどん音楽に魅了されていく2人は、未だに闇ライブが行われているという「サノバノイズ」の存在を知り、そこへいくことを夢見て一緒に音楽を作りだすのだが、音楽を心から憎んでいる杉村(斎藤工)率いる警察、そして、音楽を所持している罪で父親を殺されたヒカリ(SUMIRE)も2人のいる廃墟へと歩みを向けていた…。
――二人の出会いについてお聞かせください。
宇賀那:出会いは、若葉君の撮った映画に僕が役者として出演しました。
若葉:自主映画を制作していて、その作品に参加していただきました。
宇賀那:その後、連絡を取り合うことはなくて、去年『黒い暴動♥︎』で湖畔の映画祭に行った時に再会して。「また、何か一緒にやろうね」と。それが今回の『サラバ静寂』に繋がりました。
――お2人とも監督であり役者でもありますが、今回の現場と他の現場と比べていかがですか?
若葉:宇賀那さんがプレーヤーとしていることは、僕としてはプレッシャーで。上手い具合にごまかす瞬間って、役者だったらみんな経験があると思うんですけど。絶対に見逃さないと思うから、嘘はつけないなっていうプレッシャーはありました。別に、他の現場で嘘ついてるわけじゃないですけど(笑)。
宇賀那:僕は「こうやって」って言われてやらされるのが嫌なんです。他の役者もそうじゃないかなって思うので、そういう言い方は絶対にしないで概念的なことというか、もっとぼんやりとした感じで「これだったら、どう思う?」、「これだったら、こうなるんじゃない?」とか、役者の持ってるものを活かすような演出を心がけています。
若葉:いっぱいアイデアを聞き入れていただけたので、トキオとして生理的に合わない部分でないと宇賀那さんには意見をしませんでした。その部分も柔軟に聞き入れてくれました。
――役作りについては、事前に話し合はありましたか?
若葉:なかったです。
宇賀那:僕は、あまり話し込むことが好きじゃないんです。読み合わせもしません。お互いに固まってしまうのが嫌なんです。芝居が固まると自分でも飽きてしまうので。その場で何かが生まれて来る感じが好きなんです。前作もワンシーンしか読み合せてなかったですね。でも、それが毎回続くかどうかは分からないし、作品内容と規模感とかによって、たぶん変えていくんのかなと思います。今回は長編で時間ないとは言え、そういうことができる環境と役者だったんじゃないかなと思っています。
――役者さんからするとやりやすい環境ですよね?
若葉:リハーサルをやり過ぎると、どこにブレるかが見えちゃうっていうか、たとえば声が裏返るとか、そういう人間としてのブレってあるじゃないですか?それが「あっ、このシーンて、これぐらいブレるんだ」っていうところが見えた段階で、もうそれがブレの範囲ではなくなっていますよね。だからリハーサルが少ない現場っていうのは、自分でもビックリするような心のブレとか、ザラザラしたものが意外と映ったりするんです。今回は、良かったなと思いました。
宇賀那:たぶん自分が芝居をやっていたからかもしれないですが、できるだけ良いとこを使いたいと思うからですかね。もともとカット割をしっかり決めて、というのはそんなになくて、芝居見てその場で決めてくかんじでした。
――現在、映画監督と俳優としてお2人は活躍されていますが、意識されていることはありますか?
若葉:この仕事って、ルーティンワークにしてしまったら面白くなくなってしまうと思うんです。だから自分が何者でもない状態で現場に入ることを意識してます。
宇賀那:映画は体験だなと思っていて、たとえば観る映画館や上映環境によって変わってきます。その映画館に1800円を払って、誰かともしくはひとりで観にいくことは、ひとつの体験だと思うんです。誰かとその場所で観たことは絶対に記憶に残るでしょ。ちゃんと大きなスクリーンで見せることを意識をもって作り手も作らないといけない。音も大切です。受け手としてもその体験を大切にしていきたいと思っています。
―今後の目標など教えてください?
若葉:具体的な目標はあまりなく、今は目の前の作品を1本1本を全力でやっています。そうやっていくことで、50歳とか60歳になったときに、かっこいいな、と思える位置にいけるのかな、と思います。だから、漠然と将来映画をやっていきたいとか、俳優をやっていきたいではなく、日々の生活をちゃんとしていくことからですかね。
宇賀那:僕も同じです。将来、後悔はしたくないので、今は目の前にあるものを全力でやります。もちろん、やりたいことはいっぱいあります。海外で撮ってみたいとか、こういう人と仕事したいとか、そういう目標はありますが「じゃあ大きく目標って何だ?」って言われると、今はとにかく目の前のことを、ちゃんとやってくってことなのかなあとか思いますね。
――最後に、自主映画時代からの付き合いがあり、作品もお互いに何本も観られていると思いますが、改めて今現在の印象をお聞かせください。
宇賀那:メチャクチャ演技が上手いからムカつくなって思いますね(笑)。だから次に一緒に仕事した時はもうちょっとボロが出るような……。
若葉:そんな役を?
宇賀那:そう、ボロが出るような役をやってもらわないと困るなあって。みんなが必死な姿が見たいのに、悠々と上手いことやるから、腹が立つなあと思って。
若葉:僕も必死なんですよ。
宇賀那:もっとイジメたい(笑)。
――若葉さんから見ていかがですか?
若葉:元々知り合いだったということは大きくて、信頼して現場に入れたのは良かったです。「次も呼んでください!」
宇賀那:不思議だったのが、何年か前に知り合ってそのあとは会っていなかったのに、その間の信頼関係が構築されていたんです。
若葉:モノづくりの現場はその信頼関係を築き上げる力が凄いんだなと思いました。
――本日は、ありがとうございました。
インタビュー:谷健二・尾崎康元 撮影:尾崎康元
映画『サラバ静寂』予告編
企画・脚本・監督:宇賀那健一
出演:
吉村界人・SUMIRE・若葉竜也・森本のぶ / 斎藤工
内木英二・川連廣明・泊帝・美館智範・カトウシンスケ・影山祐子・髙木直子・田山由起・細川佳央
杉山拓也・仲上満・古澤光徳・伏見狸一・南久松真奈・高橋美津子・ミヤザキタケル・ヒス・ソニー
出演アーティスト:
大貫憲章 仲野茂 ASSFORT GOMESS 切腹ピストルズ 今村怜央 / 灰野敬二
渡辺俊美(ZOOT16・TOKYO NO.1 SOULSET)&三星幸紘・COLORED RICE MEN・GOMA・始発待ちアンダーグラウンド
リンダ&マーヤ・羊文学・SMASH YOUR FACE・INU(町田町蔵)・かせきさいだぁ・オキシドーターズ×遠藤ミチロウ