シネフィル連載「映画にまつわる○○」#11 役者 谷健二
またしばらくぶりですが、今回のテーマは役者(俳優)。
とその前に最近のお仕事のご紹介。欅坂46の個人PVとして渡辺梨加さんの『ベリカ2号機』を監督しました。
予告編の再生回数が17万回以上もあり、改めて人気の高さにびっくりしています。素敵な仕上がりになっているので機会がある人はぜひ。
さて本題です。監督と役者といえば、切っても切れない仲。有名なところだと黒澤明と三船敏郎、小津安二郎と笠智衆、
最近だと宮藤官九郎と阿部サダヲなどなど..著名な監督と役者はよくセットで語られます。
役者とは、監督の思いを受け取ってお客さんに届けてくれる重要な存在であり、監督の分身だと思っています。
自身も映画や舞台で繰り返し出演してもらっている役者さんがいます。同じ現場を経験するうちに、お互いの気持ちが通じ合い、
演出含めて細かなニュアンスが伝えられるはもちろん、他の現場で養ってきた経験をぶつけあえる相手でもあります。
もちろん友達である必要はなく、刺激しあえる仲間です。監督作品『リュウセイ』『U-31』で主演してくれた馬場良馬さんは、
30歳前後という男性として難しい時期の役柄を2作を通じて見事に演じてくれています。
余談ですが、黒澤明が三船敏郎が亡くなったときに送った手紙の中に「一度ゆっくり飲みたかった」とあったと聞きました。
あれほど一緒に作品作りをいていながら、現場以外での付き合いがあまりなかったことに驚きました(晩年にかぎったことことかもしれませんが..)。
繰り返しになりますが、友達ではなくお互い刺激しあえる仲間、というのが理想ですかね。
さて、ここだけの話、役者といわれる人たちは実は苦手です(笑)。
人前に出て芝居するわけですから、当たり前のように自信に満ち溢れている人が多いです。
小さい時から目立つのが好きで、まわりから注目され、クラスの人気者から役者になっている(目指している)人が多いかと。
もちろん例外的に、引っ込み思案だったけど、演じることで本当の自分が見つかったといったケースもあると思いますが、
いずれにしろ、人前で芝居をするということは自信がないとできません。
かたや監督はじめ裏方の仕事はその対極にある人種です。自身に満ち溢れているかはおいといて、クラスの人気者であれば、
決して映画を撮っていないと思います(かなり偏見ありますが笑)。人にうまく説明できないなんともいえない感情であったり、
人や社会に対して満たされていない何かを映画を撮ることで消化している人が多いと感じます。
そんな性格的に合わないであろう監督と役者が組んで作り上げるのも映画の醍醐味のひとつかな、なんて創造して勝手に楽しんでいます。
最後に恒例の告知を。自身でもワークショップ(演技スクール)をやってます。未経験な役者志望の人たちを中心に、
これまで経験してきたことをしっかり伝えて、一人でも素敵な役者さんになってもらうことが目的です。
もちろん苦手な人たちなので、毎週のように会うのは気が進みませんが..(笑)こちらもご興味ある方がいたらぜひ。