映画史に刻まれる、最も切なく、最も純粋な愛の物語として第74回ゴールデン・グローブ賞では作品賞(ドラマ部門)受賞、第89回アカデミー賞では8部門にノミネートされ、見事、作品賞・脚色賞・助演男優賞の3部門受賞し、オスカーの栄光を手にした『ムーンライト』。
現在日本でも一見そうは見えないが、実はものすごくピュアなラブストーリーだった!とジワジワ口コミで広がり続け、現在大ヒット公開中です。
本作は、自分の居場所を探し求める主人公の姿を、色彩豊かで圧倒的な映像美と情緒的な音楽と共に3つの時代で綴った物語。
この度、『ムーンライト』は主人公の視点とシンクロしつつ映画を観ることを可能にしている“背中越しショット”の名作だとわかる映像がイギリスの編集者Ollie Paxtonによってアップロードされているのが分かりました。
幼少期、少年期、青年期の3つの時代をそれぞれ別の役者が演じているにも関わらず、印象的な目の演技によって同一人物にしか見えない本作。
英国の編集者のみならず、日本ではライムスター宇多丸も断言!
“背中越しのショット”が多用される意味は主人公の見る世界にシンクロするため
3人のコラージュにより1人の人間の顔になっているポスターも話題ですが、今回の映像は3人の美しい“背中越しショット”を集めたもの。
ドラッグ中毒の母親や、繰り返される学校でのいじめなどの環境ゆえに、周囲から浮いてしまっている主人公シャロンが抱える不安や、彼らの性格、そして孤独感を美しくフレームしたと、Ollie Paxtonは語っています。
実は、このショットの意味を解説している人が日本にもおりました!
TBSラジオ『ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル』の看板コーナー「週刊映画時評ムービーウォッチメン」でお馴染みのライムスター宇多丸さんです。(4/22放送分)
「周囲からちょっと浮いているっていう感覚を抱いている主人公なわけですよ。同じ世界に生きているのに、自分はそこに生きていないような、その社会に属していないような、ちょっと乖離した感覚を常に持っているわけですね」と、黒人、ゲイ、貧困、ドラッグといった主人公を取り巻く環境により、孤独や孤立感を抱えていという人物設定を解説。
「その主人公の内的な視点っていうのと、観客の目線、それが一致するわけですよ。主人公が見ている世界。つまり非常に主観的な、主人公シャロンから見た世界が映し出されている。なので、この映画全体に、主人公が歩いていく背中をカメラがずーっと追っていくショットとか、主人公の主観ショットが多用されるのも、同じくやっぱりこれ、全体が主人公シャロンから見た、主人公が見た世界っていうのを強める効果なわけです」と、
意識的にこのようなショットが多用されている理由を説明しつつ、肝心の主人公からみた世界については、「もちろん例えば、お母さんがドラッグ中毒であるとか、あるいは苛烈ないじめを受けているとか、残酷さや暴力性をはらみつつも、本当はこの世界っていうのは美しいんだ」と、すべてを肯定する強いメッセージが込められていると解説をしております。
私達が生きる世界は、きれいなものばかりではないけれど、清濁併せ呑む必要もあるけれど、それでも、それだかこそやっぱり美しいのだと信じたくなる希望を感じることができる映像となっております。
イギリスの編集者Ollie Paxtonによる『ムーンライト』動画
【イントロダクション】
自分の居場所を探し求める主人公の姿を、色彩豊かで圧倒的な映像美と情緒的な音楽と共に3つの時代で綴ったこの物語に、世界中が瞬く間に虜になった。
北米で大ヒットを記録し、第74回ゴールデン・グローブ賞では作品賞(ドラマ部門)受賞、第89回アカデミー賞では8部門にノミネートされ、作品賞・脚色賞・助演男優賞を受賞し、見事オスカーの栄光に輝いた。世界中から熱狂的な賛辞を贈られている。なぜ『ムーンライト』が世界中を魅了しているのか―。それは、人種、年齢、セクシュアリティを越えた普遍的な感情が描かれているからだ。どうにもならない日常、胸を締め付ける痛み、初恋のような切なさ、いつまでも心に残る後悔・・・思いもよらない再会により、秘めた想いを抱え生きてきたシャロンの暗闇に光がさしたとき、私たちの心は大きく揺さぶられ、深い感動と余韻に包まれる。
監督・脚本:バリー・ジェンキンス
エグゼクティブプロデューサー:ブラッド・ピット
キャスト:トレバンテ・ローズ、アッシュトン・サンダース、アレックス・ヒバート、マハーシャラ・アリ、ナオミ・ハリス、アンドレ・ホーランド
© 2016 A24 Distribution, LLC
提供:ファントム・フィルム/カルチュア・パブリッシャーズ/朝日新聞社
配給:ファントム・フィルム【2016/アメリカ/111分/シネマスコープ/5.1ch/R15+】
原題:MOONLIGHT