ローラの言葉に号泣者続出 “J.T.リロイ”こと作家、ローラ・アルバート来日 公開初日レポート
『作家、本当の J.T.リロイ』
『作家、本当の J.T.リロイ』が新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷ほかで公開がスタートしました。
本作の公開を記念し“J.T.リロイ”こと、作家のローラ・アルバートが来日。
聞き手に、映画評論家の森直人さんを迎えて、 公開インタビューが新宿シネマカリテで行われました。

画像1: ローラ・アルバート

ローラ・アルバート

【イベント概要】
■日程:2017 年 4 月 8 日(土)
■会場:新宿シネマカリテ(新宿区新宿 3 丁目 37-12 新宿 NOWA ビル B1F)
■登壇者:ローラ・アルバート(作家)、聞き手:森直人(映画評論家)

1996 年に突如として文壇に現れた天才少年作家 J.T.リロイ、自伝『サラ、神に背いた少年』で時代の寵児になった作家 は実在しなかった。文壇を揺るがす衝撃の実話を映画化したドキュメンタリー『作家、本当の J.T.リロイ』の公開初日舞台挨拶が 8 日、新宿シネマカリテで行われた。

当日、ローラ・アルバートは映画『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』でヘアメイクを手がけたデザイナーScatha が来日を祝してデザインしたというスペシャルなドレスに身を包んで登壇。日本の 観客に向けて熱いメッセージを送った。

「自分がここにいる」ことを知ってほしかった。 ――J.T.リロイとは何だったのでしょう?

ローラ:
人生を苦しみなく生きていくことは難しいことです。みなさんもそれぞれに いろんな苦しみやトラウマを抱えていると思います。
過去の虐待の経験から、私は自分自身を「恥ずべき悪い人間」だと考えていて、 そんな自分が他人の目には「見えない存在」になっているように感じていました。 しかし、本当は私は「自分がここにいる」ということを知って欲しかったし、自分の話を聞いて欲しかったのです。「人に仮面を与えれば真実を語り出す」というオスカー・ワイルドの言葉がありますが、そういう意味でも私にとっての J.T.リロイは 「いたずら好きなお茶目なイノセンス」のようなものでした。
自分では言えないことを、アートを使って痛みや苦しみも含めて自由に表現する ということが J.T.リロイの存在そのものだったと思います。
たとえば『ザ・ウォーク』という映画では、主人公はワールドトレードセンターのツインタワーの上にワイヤーをかけて綱渡りをしているときに「自分が生きている」と心から実感します。もちろんそこに死の可能性はあるのですが、彼は他のやり方では生きていけないのですね。それと同様に私も他の方法では生きていけなかったのです。

画像2: ローラ・アルバート

ローラ・アルバート

「理解されている」という感覚はとても感動的。 ――この映画を公開したことで何か大きな影響はありましたか?

ローラ:
J.T.の騒動があった後、私は自分の行った悪意のないアーティスティックなジェスチャーを理解できない人々からずっと攻撃を受けてきました。
患者の説明する症状に耳を傾けずに診断を下す医者のように、彼らは私の説明や動機には一切耳を傾けず、そこにあ るパラダイムを勝手に組み替えて判断を押し付けてきたわけです。最終的に私は彼らと戦おうと決意しましたが、絶望や怒りや悲しみから立ち去るには多くのエネルギーを要し、また多くの人や状況から自分を切り離さなくてはなりませんでした。

そして、なにより私は自分のことをきちんと説明しなくてはならないという気持ちを持っていましたが、このドキュメンタリーがその役割を果たしてくれたと感じます。映画を通じて、自分のすべてをさらけ出すことはとても大事なプロセスであると同時に、自分と向き合わなければならない辛い行為でもありました。 しかし、こうして日本の観客のみなさんと直接お会いして感じたことは――とくに日本の方は公の自分とプライベートな自分、あるいは、本音と建前ということをよく理解していらっしゃるからだと思うのですが――ここでしかできないかたちで自分のことを理解してくれるということです。 この「理解されている」という感覚はとても感動的で、日本での経験やみなさんとの対話によって、私は解放されました。

誰もがみなアーティスト。魂を自由に。 ――ローラさんにとってアートとは?

ローラ:
一度自殺を考えたことのある人であれば理解出来ると思いますが、本当に一日一日を生き延びることは大変で、何かに縋りつかなければ生きていけないというときにアートは救いの方法になります。
少なくとも私にとってはそういう役目を果たしてしてくれたと思っています。

私に限らず、誰しも他人から認められたいという気持ちを持っていると思いますが、それは言い換えれば、クリエイティブな欲求や表現の必要性を持っているし、誰もがみな潜在的なアーティストであるということです。
たとえば、自分の子どもがアーティストになりたいという場合には「どうやって稼いで生きていくのか」ということに注意が向き、魂の表現したいという欲求よりもお金の問題が重視されますが、私は健全でさえあれば表現方法はなんでもいいと思っています。大事なのはアートをつくり続けることです。
最終的にそれが他人にどういう影響を与えるかはわかりません。しかし自分自身への影響は非常に大きいと思います。アートはイマジネーションを使う行為ですが、それに携わるこ とで別の高度な次元のものとつながる時間が生まれます。通常、人生のなかで私たちは自分をコントロールしながら生
きていると思うのですが、アートを生み出す過程においては、神聖な未知のスペースに入り込み、そこから何かが降りて くるのを信じることが必要になります。そして、アートをつくり続けることは、自分のコントロールを手放し、魂を自由にする ためのプロセスだと思っています。

私の使命はアートを通じて世の中にインパクトを与えること。 ――今後の活動について教えてください。

ローラ:
当時、自分が闘っているときはとてもそんな気持ちになれなかったのですが、いまは様々なプロセスを経て、自分の回想録を書き始めたところです。 ここでも書くことによって「癒し」が起こっていると感じます。
また、この映画によっていろんな<ギフト>が与えられましたが、まだ私は完全に立ち直ったというわけではなくて、今でもときどき絶望する瞬間というのはあります。しかし、そういうときに私が考えるのは「きっとすべてのことには理由がある」ということです。 自分がアートを行い続けることでスピリチュアルな次元での<ガイダンス>が得られるはずだと考えています。
また、私がやらなければならないのは、アートを通じて世の中にインパクトを与えること、よりよい世界をつくることだと思っています。時折、小説を通じて「自分は一人じゃないんだと思った」という声が寄せられますが、そんなふうにたった一人でも苦 しんでいる人が救われるのであれば、自分のやっていることには意味があるのだと思います。
最後、ローラの話に涙を流す観客に向けて「大丈夫?あとでゆっくりお話しましょう」とやさしく声をかける場面もあり、 あたたかな拍手に包まれながら初日イベントは大盛況のうちに幕を閉じました。

画像: ローラ・アルバート(作家)、聞き手:森直人(映画評論家)

ローラ・アルバート(作家)、聞き手:森直人(映画評論家)

■プロフィール■
ローラ・アルバート
1965 年、アメリカ・ニューヨーク州ブルックリン生まれの女性。1996 年から J.T.リロイ名義で小説を書き始め、「サラ、 神に背いた少年」(2000)、「サラ、いつわりの祈り」(2001) がベストセラーになる。2004 年には「かたつむりハロルド」 を出版。「J.T.リロイ」という名前は、先に自分が創り出していた 2 つの名前「ジェレマイア」と「ターミネーター」の頭文字と、彼女が相手をしたテレホンセックスの客の名前「リロイ」から取っている。

画像: 【イベント概要】 ■日程:2017 年 4 月 8 日(土) ■会場:新宿シネマカリテ(新宿区新宿 3 丁目 37-12 新宿 NOWA ビル B1F) ■登壇者:ローラ・アルバート(作家)、聞き手:森直人(映画評論家)

■作品紹介■
なぜ、“作家”ローラ・アルバートは 10 年もの間、J.T.リロイに物語を語らせたのか。世界を驚かせた事件の真実を、彼女自身の言葉とセレブたちの通話音声によって解剖する。
1996 年に突如文壇に現れ、女装の男娼となった過去を綴った自伝『サラ、神に背いた少年』で時代の寵児とな った謎の天才美少年作家、J.T.リロイ。その才能にほれ込み、映画監督のガス・ヴァン・サントは『エレファ ント』の脚本を依頼。二作目の著作『サラ、いつわりの祈り』はアーシア・アルジェントによって 2004 年に映画化された。しかし、2006 年ニューヨーク・タイムスの暴露記事によって事態は一変する。

画像: 信じられない実話!世界がダマされた!!『作家、本当のJ.T.リロイ』 予告 youtu.be

信じられない実話!世界がダマされた!!『作家、本当のJ.T.リロイ』 予告

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監督:ジェフ・フォイヤージーク(『悪魔とダニエル・ジョンストン』)
撮影監督:リチャード・ヘンケルズ
音楽:ウォルター・ワーゾワ
出演:ローラ・アルバート、ブルース・ベンダーソン、デニス・クーパー、ウィノナ・ライダー、
アイラ・シルバーバーグ ほか
(2016 年/アメリカ/111 分/カラー、一部モノクロ/1.85:1/DCP/原題: Author: The JT Leroy Story)
配給・宣伝:アップリンク
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新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷ほか全国順次公開中!

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