今年、節目の第70回目を迎えるカンヌ映画祭。
この連載では、毎年5月に催される世界最高峰の映画祭の昨年の模様をまとめてレポート!
この映画祭の魅力をお伝えします。
第69回カンヌ国際映画祭便り【CANNES2016】18
快晴ながらヒンヤリとした21日(土)。17時からは、エキュメニック賞および国際批評家連盟賞の発表&授賞式に参加。また、公式部門第2カテゴリーの“ある視点”部門も本日が閉幕日で、ドビュッシー・ホールにて行われた授賞式セレモニーを取材した。
パレ・デ・フェスティバル内にあるサロン“アンバサダー”でエキュメニック賞と国際批評家連盟賞が発表!
17時より全キリスト教協会が選出するエキュメニック賞(“長編コンペティション部門”対象)と国際批評家連盟賞が“アンバサダー”で発表され、授賞作品の関係者が喜びを語った。受賞作は以下の通り。
☆エキュメニック賞受賞結果
●『イッツ・オンリー・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド』グザヴィエ・ドラン監督
●『アメリカン・ハニー』アンドレア・アーノルド監督
●『アイ・ダニエル・ブレイク』ケン・ローチ監督
☆国際批評家連盟賞(FIPRESCI)受賞結果
●長編コンペティション部門:『トニ・エルトマン』マーレン・アーデ監督(ドイツ)
●ある視点部門:『ドッグス』ボクダン・ミリカ監督(ルーマニア)
●監督週間&批評家週間部門:批評家週間上映作『ロー』ジュリア・ドゥコウナ監督(フランス)
“ある視点”部門では、日本関連の2作品『淵に立つ』と『レッドタートル ある島の物語』がダブル受賞!
今回、全18作品中7本の初監督作が並んだ“ある視点”部門のアワード・セレモニーが、19時から映画祭ディレクターのティエリー・フレモーの司会によりドビュッシー・ホールで催された。
今年、この部門の審査員を務めたのは、スイスの女優マルト・ケラー(委員長)、スウェーデンの監督リューベン・オストルンド、メキシコの俳優ディエゴ・ルナ、オーストリアの女性監督ジェシカ・ハウスナー、フランスの女優セリーヌ・サレットの総勢5名。
最高賞の“ある視点賞”に輝いたのは、フィンランドの新鋭監督ユホ・クオスマネンの初長編作『ザ・ハピエスト・デイ・イン・ザ・ライフ・オブ・オリ・マキ』。
本作は1962年のヘルシンキで、ボクシングのフェザー級世界タイトルマッチをアメリカ人チャンピオンと戦った実在のボクサー、オリ・マキを主人公に据えた物語で、北欧映画らしいのどかさと独特のユーモアにあふれた心温まるモノクロ作品だ。
国中の期待を背負ったボクサーのオリ・マキは、万全の態勢でタイトルマッチに臨もうとするが、予想外の恋に落ちてしまい……。
審査員賞は〈カンヌ国際映画祭便り8〉でお伝えした深田晃司監督の『淵に立つ』が獲得 。初カンヌでの受賞に驚きの表情を隠せない深田監督は、「すみません。フランス語の勉強が間に合わなかったので日本語で話します。本当にとても嬉しいです。いろんな人に感謝を言わなくてはなりません。私の映画は本当に多くの人に支えられてきました。まずは、この映画のキャスト、スタッフにお礼を言いたいと思います」と喜びを伝えた。
授賞式後には日本人報道陣が、深田監督と現地に残って授賞式を見守った出演者の古舘寛治と筒井真理子の3人を囲んだ。
監督賞は『キャプテン・ファンタスティック』のマット・ロス監督が獲得。本作は、森の中で6人の子どもを独自の教育方針で育てているエキセントリックな父親が、ひょんなことから都会に出る羽目となるロードムービーで、TVドラマの俳優としても活躍するマット・ロス監督の長編2作目。
授賞式では主演俳優のヴィゴ・モーテンセンも監督と共に登壇し、破顔しながらマット・ロス監督と喜びを分かち合った。
脚本賞はフランスの姉妹監督デルフィーヌ&ミュリエル・クランが脚本も兼務した『ザ・ストップオヴァー』で受賞。ある視点特別賞にはアニメ映画の『レッドタートル ある島の物語』(〈カンヌ国際映画祭便り13〉にて既報)が輝き、日本関連作品がダブル受賞を果たす結果となった。
☆“ある視点”部門受賞結果
●ある視点賞
『ザ・ハピエスト・デイ・イン・ザ・ライフ・オブ・オリ・マキ』ユホ・クオスマネン監督
●審査員賞
『淵に立つ』深田晃司監督
●監督賞
『キャプテン・ファンタスティック』マット・ロス監督
●脚本賞
デルフィーヌ・クラン/ミュリエル・クラン『ザ・ストップオヴァー』デルフィーヌ・クラン、ミュリエル・クラン共同監督
●ある視点特別賞
『レッドタートル ある島の物語』マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督
(記事構成:Y. KIKKA)
吉家 容子(きっか・ようこ)
映画ジャーナリスト。雑誌編集を経てフリーに。
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