長編デビュー作『月下の囁き』(99)から17年。
塩田明彦監督が原点回帰して挑んだ初ロマンポルノ作品『風に濡れた女』
都会の喧噪を避け、過去から逃げるように山小屋で暮らす男・高介(永岡佑)は、生命力を持て余し、野性味溢れる魅力を放つ女・汐里(間宮夕貴)との出会いによって、欲望の渦に巻き込まれていくはめに…。
ロマンポルノの名匠・神代辰巳監督をリスペクトし、師匠の大和屋竺(脚本家・監督)にたたきこまれた脚本術で、本能むきだしのままヒートアップする男と女の駆け引きを軽妙に描いている。
主演を務めるのは永岡佑と間宮夕貴。
永岡は、19才で俳優デビューし、タナダユキ監督の『月とチェリー』(04)で初主演。NHK大河ドラマなど数々のドラマや映画に出演する実力派俳優で、近年の「重版出来!」(TBS)での好演が高く評価されている。間宮は、石井隆監督『フィギアなあなた』(13)で映画初出演。その後も『甘い鞭』(13)、『GONIN サーガ』(15)など石井監督作品に立て続けに出演し、女優として開眼。
今年公開された『屋根裏の散歩者』(16)でもオールヌードを披露。その潔い脱ぎっぷりに、各界から熱視線を浴びている。
本作は、歴史ある第69回ロカルノ国際映画祭のコンペティション部門にも選出され、<若手審査員賞>を受賞。
ロマンポルノ作品として国際映画祭のメインコンペへ招待されたのは本作が初めてとなる。
本映画祭では、神代監督の『恋人たちは濡れた』(73)と共に招待された。ロカルノを皮切りに数々の海外映画祭から招待を受けており、自由に性を描いたセンセーショナルな映画として海外でも注目されている。
塩田明彦 略歴
1961年、京都府生まれ。立教大学在学中より黒沢清、万田邦敏らと共に自主映画を制作。その後、多数のロマンポルノ作品で脚本を手掛ける大和屋竺の下で脚本を学ぶ。劇場映画デビュー作『月光の囁き』(99)と『どこまでもいこう』(99)がロカルノ国際映画祭に正式出品。2001年、宮崎あおい主演『害虫』(02)でナント三大陸映画祭審査員特別賞・主演女優賞を獲得する。『黄泉がえり』(03)、『どろろ』(07)が興収30億円を超えるヒットを記録するなどメジャー大作も多数手掛ける。 著書に『映画術・その演出はなぜ心をつかむのか』(イーストプレス)、『映画の生体解剖×映画術 何かがそこに降りてくる』(Amazonにて電子書籍として販売中)など。近年の作品として『抱きしめたい』(14)などがある。本作が第69回ロカルノ国際映画祭の国際コンペティション部門へ正式招待され「若手審査員賞」を受賞。
風に濡れた女 予告
ストーリー
かつて劇作家として知られた柏木高介(永岡佑)は、今では世捨て人のような暮らしを送っている。ある日の昼下がり、港でたたずむ高介の目の前を、自転車に乗った女が通りすぎ海に突っ込んだ。全身を濡らして陸にはい上がって来た女は、おもむろに上着を脱ぎ「今晩泊めてもらえない?」と話しかけてくる。その不思議な女は、汐里(間宮夕貴)。
高介は何も見なかったふうを装い、拾ったアンティークの椅子を乗せたリアカーを引いてその場を去ろうとするが、汐里は野良犬のようにまとわりつき追いかけてくる。高介に泊める気がないことを理解した汐里は、「アンタは私にロックオンされたんだ。逃げられると思うなよ」と捨てゼリフを残し去っていった。
翌日、高介がコーヒー豆を買いに寄ったいきつけのカフェで、ウェイトレスとして働く汐里と出くわす。奇妙な出会いをしたばかりにも関わらず、懐かしそうに近寄ってきた汐里は、カフェの店長(テイ龍進)を体でてなずけ、店長の別居している妻の洋服を着て平然と働いていた…。そんな中、かつての劇団仲間で高介の女だった演出家・響子(鈴木美智子)が、巡業の途中、劇作家としての高介の熱烈なファンだという新人助手・夕子(中谷仁美)と、新しい劇団員たちを引き連れてやってきた。高介が、自分の書いた戯曲を目の前で披露され興味なさげに眺める傍ら、響子は、汐里に芝居に参加しないかと持ちかける。ヒートアップした汐里が、響子を押し倒したことから、まるで堰を切ったように、この大自然に集まった男と女たちの欲望の渦が広がり始める―
『風に濡れた女』
監督:塩田明彦
出演:永岡佑、間宮夕貴