海外サイトで特に映画好きが、集まっているサイトで有名な「indiewire」で篠田正浩監督の作品が大きく取り上げられています。

この記事では、『沈黙』を撮った篠田正浩監督は、”20世紀の最も重要な監督の一人であることが明らかになった”と評され、絶賛されています。
この文を書いたのは、この「indiewire」や「Rolling Stone 」などの映画評論を担当するデビッド・エーリッヒ(David Ehrlich)氏。

篠田監督の映画は、日本の社会を舞台にして、貧しい人々や迫害された人びとの話を、しばし暗く美しく表していきます。

今まで篠田の作品は(海外で)観ることが難しかった。 しかし、ここ数年、Criterion CollectionのセレクションDVDシリーズや FilmStruck(映画配信サービス)などによって状況が変わり、そこには、すでに監督の19作品のストリーミングが準備ができています。

(抜粋要約)

塚本晋也監督の『野火』が実は同じ大岡昇平原作で1951年に市川崑監督が撮っていたように、この遠藤周作の『沈黙』は篠田正浩監督によって、1971年に最初に映画化されているのです。

エーリッヒ氏は、現在新しくスタートした映画配信サイトFilmStruckなどで、今までと違い簡単に篠田作品を観ることができることを、伝えると同時にこの監督のより高い評価を世界に向けて著述しています。
そして、特に、観るべき作品として以下の5作品を挙げて篠田監督を評しています。
(おそらく海外で観れる作品からのチョイスだと思われます)

『夕陽に赤い俺の顔 』(Killers On Parade) 1961年

日本タイトルは『夕陽に赤い俺の顔 』(1961年)という作品。
日本の当時のニューウェーブ的な作品でポップな感性にあふれています。
実は、この作品の脚本のクレジットはなんと寺山修司。
寺山修司は1960年『乾いた湖』と1961年『わが恋の旅路』1962年『涙を、獅子のたて髪に 』と篠田監督作品に4本の脚本参加があります。

画像: Killers On Parade Intro youtu.be

Killers On Parade Intro

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『乾いた花』(PALE FLOWER)1964年

2本目に動画で紹介されているのが、石原慎太郎の短編を原作にした『乾いた花 』(1964年)。
配給は松竹ですが公開前に難解という理由で8ヶ月間お蔵入りとなり、反社会的という理由で成人映画に指定されたという作品。
その後、今作はフランシス・フォード・コッポラ、マーティン・スコセッシらの監督たちによって、この作品のフィルムの権利を松竹から買い取られ、特に、マーチン・スコセッシは、30回ほど見ているというエピソードを残っています。

画像: PALE FLOWER (1964) Trailer - The Criterion Collection youtu.be

PALE FLOWER (1964) Trailer - The Criterion Collection

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『心中天網島 』(Double Suicide) 1969年

『心中天網島 』(1969年) 原作:近松門左衛門。英タイトル“Double Suicide”をあげこの作品に対しては、人形浄瑠璃からのテーマを映画化したことに対してもエーリッヒ氏は”アッバス・キアロスタミのような映画製作者を予期させながら同時に古い芸術作品に新しい命を与えました。”と称賛しています。

『沈黙』(Silence) 1971年

そして、次に取り上げているのがこれから公開されるスコセッシ監督と同じ遠藤周作の原作による『沈黙』“Silence” (1971)。
今作に対しては、”『沈黙』は同じ名前のマーティン・スコセッシ監督のスピリチュアルな叙事詩との測り知れないほど貴重なコントラストがある”と書かれています。

画像: https://myanimelist.net/forum/?topicid=1290865

https://myanimelist.net/forum/?topicid=1290865

画像: http://filmint.nu/?p=2474

http://filmint.nu/?p=2474

『はなれ瞽女おりん 』(Ballad of Orin)1977年

そして、ここで最後に紹介しているのが、1977年の 水上勉原作『はなれ瞽女おりん 』。英語タイトル「Ballad of Orin」。
今作は日本アカデミー賞でも作品賞、監督賞、主演女優賞など7つの部門で優秀作品に選出された作品で、盲目の旅芸人である瞽女の姿を北陸の美しい四季の景色を背景に描いています。
主演は、篠田監督の妻でもある女優 岩下志麻が演じている名作ですね。

画像: 『はなれ瞽女おりん』予告編 youtu.be

『はなれ瞽女おりん』予告編

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一気に再評価高まるのか? ー篠田正浩監督作品ー

昨今、日本映画監督の作品や、監督に対して海外で再評価の機運が高まってきています。
大林宣彦監督の『HOUSE ハウス』の各国での上映を重ねるたびに、高まる評価や、鈴木清順監督も2016年に新たにワシントンをはじめにアメリカ各地でレトロスペクティヴなども開催され、伊丹十三監督も『タンポポ』などが今年、またアメリカで上映されたりして、着実に評価を高めています。

実際に多くの日本人監督が、海外の映画祭などでの受賞などでそれなりに評価があったにしても歴史の時間の中で埋もれていくことが多いことも事実です。
今回のように、一気に20世紀の重要な監督というような評価で、著述されているのは、同じ日本人として、嬉しく思います。
実際、小津安二郎の評価もこの数十年で一気に世界で高まったように、海外では再評価されていくことで、映画の歴史の中で認知されていきます。

ただ、重要なのは、このような歴史的評価の中で残っていく作品を、日本では国際市場に対してアプローチできる手立てがないことであくまで海外の評価待ちになってしまう傾向があります。

映画もエンターテイメントではありますが、反面どうしても市場優先になりアートであることの価値観をおろそかにしてしまいがち---
美術がそうであるように、歴史的文脈の中で作品を評価されていくことを、もう一度考えたいところです。

篠田正浩監督作品は、日本でも、下記DVDボックスなど発売していたのですが、少なくとも『沈黙』はすでに日本版では手に入らない状況です。
今回のマーティン・スコセッシ監督の『沈黙-サイレンス- 』公開に合わせ、篠田監督の『沈黙』も上映なさってはいかがでしょうか?

画像: 篠田正浩監督作品『乾いた花』『鑓の権三』他セレクションDVDボックスPV youtu.be

篠田正浩監督作品『乾いた花』『鑓の権三』他セレクションDVDボックスPV

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そして、もう一本、篠田正浩監督の傑作としてはこんな作品も---

画像: 映画 「少年時代」 予告編 youtu.be

映画 「少年時代」 予告編

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補足

2003年『スパイ・ゾルゲ』で引退した篠田監督ですが、今までの監督作品は以下の通りです。

恋の片道切符 (1960年)
乾いた湖 (1960年) 脚本:寺山修司
三味線とオートバイ (1961年) 原作:川口松太郎
わが恋の旅路 (1961年) 原作:曽野綾子、脚本:寺山修司
夕陽に赤い俺の顔 (1961年) 脚本:寺山修司
涙を、獅子のたて髪に (1962年) 脚本:寺山修司・水沼一郎・篠田正浩
山の讃歌 燃ゆる若者たち (1962年) 脚本:白坂依志夫
私たちの結婚 (1962年) 脚本:松山善三・篠田正浩
暗殺 (1964年) 原作:司馬遼太郎
乾いた花 (1964年) 原作:石原慎太郎
美しさと哀しみと (1965年) 原作:川端康成
異聞猿飛佐助 (1965年)
処刑の島 (1966年) 原作:武田泰淳、脚本:石原慎太郎
あかね雲 (1967年)
心中天網島 (1969年) 原作:近松門左衛門、脚本:富岡多恵子・武満徹・篠田正浩
無頼漢 (1970年) 脚本:寺山修司
沈黙 SILENCE (1971年) 原作:遠藤周作
札幌オリンピック (1972年) ドキュメンタリー
化石の森 (1973年) 原作:石原慎太郎
卑弥呼 (1974年)
桜の森の満開の下 (1975年) 原作:坂口安吾
はなれ瞽女おりん (1977年) 原作:水上勉
夜叉ヶ池 (1979年) 原作:泉鏡花
悪霊島 (1981年) 原作:横溝正史
瀬戸内少年野球団 (1984年) 原作:阿久悠
ALLUSION 転生譚 (1985年) 脚本:岸田理生
鑓の権三 (1986年) 原作:近松門左衛門
舞姫 (1989年) 原作:森鷗外
少年時代 (1990年) 原作:藤子不二雄A
写楽 (1995年) 原作:皆川博子
瀬戸内ムーンライト・セレナーデ (1997年) 原作:阿久悠
梟の城 owl's castle (1999年) 原作:司馬遼太郎
スパイ・ゾルゲ (2003年)

http://www.indiewire.com/2016/12/masahiro-shinoda-best-films-filmstruck-silence-japanese-directors-1201752057/

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