渋江譲二の『嗚呼!銀幕の女神様♡』
第1回
「ボーイズ・オン・ザ・ラン(2010年)」
〜童貞心!ウブな男子は黒髪女子に弱い〜
全国の映画好きの皆さま、初めまして!
役者をやっております、渋江譲二と申します!
最近はミヤネ屋を観て「盛り土かぁ、、」とか1人でつぶやく毎日を過ごしております。
この度ご縁ありまして、シネフィルさんで文章を書かせていただくこととなりました。
ボクの連載内容は「映画と女性とボク」です。
「女性とボク」の部分だけ聞くと、何やら下半身系の官能的なものを期待してしまう元気な殿方もいらっしゃるかと思いますが、
ここでは映画に出てくる女性キャラクターにスポットを当てていこうと考えています。
好きな女性、気になる女性、妖艶な女性、不思議な女性、、、
スクリーンを彩る魅力ある色んな女性をボクの経験や願望や妄想や興奮を絡めて語っていきたいと思っております。
よろしくお願い致します!!!
※ここで語られるのはあくまで登場人物についてで、演じている女優さんご本人についてではありません。
そして過去作品ということで多少のネタバレも含まれます。ご了承ください。
でもそれをキッカケにその作品を手にとっていただけたらうれしい限りです。
記念すべき第1回は、2010年公開の映画『ボーイズ・オン・ザ・ラン』
劇団「ポツドール」の主宰であり、2014年公開の「愛の渦」が話題となり、今年最新作「何者」が公開の三浦大輔監督の初監督作品。
ボク、この映画大好きでして。。
銀杏BOYZの峯田和伸さんが演じる主人公・田西は、男なら感情移入して応援せずにはいられない不器用を絵に描いたような童貞感満載の男。
(峯田さんのキャスティングはこれ以上の適役はいないと言っても過言じゃない奇跡のキャスティング!)
普段はガチャガチャの商品を営業する仕事をしている冴えないサラリーマンの田西。
コミュニケーションもままならず得意先にもおちょくられる始末。
そんな女性経験も恋愛もほとんど無いに等しいであろう男が恋をするなら・・・・、想像するとまさにドンピシャなヒロイン!
黒川芽以さん演じるちはるちゃん!
田西と同じ会社に勤める企画部の黒髪清純派美女!
女性と接する機会が少なかった男は、女性をどこまでも綺麗で清楚なものとして崇めてしまうことも多いはず。
そんないつまでも「童貞心」を払拭できない男達が奥底に持つ願望を具現化したようなキャラクター、それがちはるちゃん。
見た目は決して派手でなく、愛想も良くどこか控えめ・・・・。
クラス委員のような雰囲気の彼女。
ちなみにこういう優しそうな優等生タイプはなぜか中学でヤンキーと付き合います。
ちなみにボクもそんな「童貞心」をいつまでも捨てきれない男の1人。
その原因は10代の青春時代に。
ボク、高校時代は工業高校で過ごしました。電気科のクラスは男子だけ。
ただひたすらカラフルなコードを謎の機械に繋ぎ、訳のわからない数値を測り記入する日々。
何の実験なのかもサッパリ分からずそもそも電気にそこまで興味も無く、、、
入って1週間で確信するのです。
「女子いないのキツッ!!」
後ろの席から見渡す景色はまさに暗黒の世界。
スポーツ学校だったことからクラスの半分が坊主。
朝練が終わったラグビー部が上半身裸で汗をダラダラと流し、毒ガスのような異臭を放つ湯気を放出しながら教室を闊歩する姿はまさに地獄絵図。
ああ、女子がいたら・・・・。
そんな思春期の男子にはあまりに過酷で不健康な生活を過ごしてしまったボクの中の女子像は綺麗なまま凝り固まってしまっていたのです。
要はウブな男が好みやすいであろう女性なのだ。
そんなちはるちゃんに密かに想いを寄せる主人公の田西。
しかしあることがキッカケで大いに嫌われてしまう。
本当に間が悪く情けない田西。
そこに現れるのが田西とは正反対の男、松田龍平さん演じる青山。
田西の勤めるライバル会社の営業マン。
青山はルックスも良く要領も良く人当たりも良い。
実家も金持ちで喧嘩もめちゃくちゃ強いとの噂。
そして妙にリアルなのが一見優しいという人柄。
クラスの人気者で運動神経も良く勉強もできる。なのにどこか二面性があって急に冷たくなる恐かった小学校の同級生を思い出しました。。
そんな奴いませんでした!?
初めは田西の恋に協力的でとても良い人に見えた青山。
しかし蓋を開けてみたら人のものを平気で横取りする意地汚い奴。
ちはるちゃんはあろうことか青山にかっさらわれていたのだ!
悶え苦しむ田西。
自分が硬い頭で考えてもできないことを、器用な人間はいとも簡単に達成していくものなのだ。
バージンだったちはるちゃんはすっかり青山色に染まっていきます。
その辺も本当は理想なんです。好きな人に一途な彼女。
しかし相手は青山。
素朴だった服装はなんとなく派手になり、髪型も変え、気づいたらタバコまで吸っているちはるちゃん。
それを遠目に見ていることしかできない田西。
ぬぅぅぅぅ!!想像するだけで耐え難い屈辱!!!
何もできず悶々とした日々を過ごす田西。
しかしある日事態は一変。
青山との恋愛をキッカケにある事件を起こし会社を辞めることになり、青山にもボロ雑巾のように捨てられるちはるちゃん。
それも男に尽くしてしまったがための結果・・・・。
そして尽くした相手が悪かった。。
ちはるちゃんを労わる田西。
しかしそこでちはるちゃんに信じられない言葉を浴びせられることに。
「私がこうなったのは全部あなたのせい!」
えーーーーーーーー。
うそでしょーーーーーーーーーー。
まぁでもしかし原因を遡るとそれも一理あって。。
田西がちはるちゃんを失望させたことがキッカケではあったのだ。
浴びせられた言葉に呆然とする田西。
きっとちはるちゃんだってどこかで分かってるはず。
起きたことは本当は自分のせい。
しかし人のせいにするしかやり切れないボロボロのちはるちゃん。
そんなちはるちゃんのため、これまでのダサい自分にケジメをつけるため立ち上がる田西!!!
・・・・と、ここからはいいところなのでせっかくですから本編をご覧ください。
いや〜しかしなんだかんだ一途な女の子っていいですね!
という反面、それが災いして不幸な道を辿る子も中にはいるわけで。。
可愛くて優しい子ほど非情なダメ男や悪い男にひっかかる世の中の不条理。
我々「童貞心」を胸に抱きつつ生きる男達には、さえない学生時代から常に「俺の方が女の子に優しくできるのに!!」という強い思いがあったはず。
しかし誰もが優しさを求めているわけでもなく。
それより自分にないものを求めるのが世の常。
ちはるちゃんが青山にコロッと落ちてしまったのは必然なのだ。
でもこれだけは間違いない!
我々は田西の純粋で真っ直ぐな気持ちの味方である!!
だからこそこのボーイズ・オン・ザ・ランという映画の主人公・田西に自分のさえなかった青春時代を重ね合わせ、胸を痛めながら応援できるのだ。
「男ウケするファッションの女子は腹黒い」
それが大人になったボクの統計と持論です。
でも分かっていても結局簡単に転がされちゃうんだこれが・・・・。
作者 渋江譲二 近影
渋江譲二(しぶえ・じょうじ)
1983年3月15日生まれ。長野県出身。2003年にドラマ『美少女戦士セーラームーン』タキシード仮面役でデビュー。
主な出演作はEX『仮面ライダー響鬼』(2005)、TBS『砂時計』(2007)、NTV『ホタルノヒカリ』(2007)、映画『クロサワ映画』(2010)、『ふるさとがえり《主演》』(2011)など。2017年1月より放送のAbemaTV『特命係長 只野仁』へレギュラー出演が決定している。
公式ブログ『矛盾の男』http://yaplog.jp/shibue-jouji/
公式Twitter @shibue0315