南北の分断をテーマに、脚本・製作を担当した『プンサンケ』『レッド・ファミリー』を経て、ギドク自らメガホンを取った本作『The NET 網に囚われた男』は、一人の漁師の悲運を通し、たとえ政治的体制が違っても、常に犠牲を強いられ切り捨てられていくのは弱者である現実を簡潔かつ力強いタッチで浮き彫りにした作品。
今回、第17回東京フィルメックスではオープニング作品として上映された。
上映後の11月19日、キム・ギドク監督が登壇し、この映画について語り、Q&Aとして場内からの質問にも答え、今回の作品を自身の言葉で語っている貴重な映像です。
ストーリー
妻子と平穏な日々を送っていた北朝鮮の漁師・ナムは、網がエンジンに巻き込まれたトラブルにより、意に反して水上の韓国との国境を越えてしまう。
韓国の警察に捉えられたナムは、スパイと疑われて拷問を受け、更には韓国への亡命を強要される。妻子の元にただ戻りたいだけのナムは自らの意思を貫き、ついに北朝鮮に戻ることになる。
表面的には資本主義の誘惑に打ち勝った英雄として北朝鮮に迎えられたナムだったが、彼を待っていたのは更に過酷な運命だった……。キム・ギドク作品のトレードマークであった極端なバイオレンスは本作では封印され、体制に翻弄される一人の男の姿が重厚に描かれた傑作。
ナムを演じたリュ・スンボムの熱演も見どころだ。
『The NET 網に囚われた男』
原題:그물
英題:THE NET
製作・監督・脚本・撮影:キム・ギドク
出演:リュ・スンボム、イ・ウォングン、キム・ヨンミン、チェ・グィファ、ソン・ミンソク
韓国/2016 年/112 分/カラー/1:1.85/5.1 SRD// 提供:キングレコード
配給:クレストインターナショナル
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