年末近くになって、駆け込んでいくように続々と、アカデミー賞候補の資格となる12月末までのアメリカでの公開する有力な作品が公開されていきますが、早くも出すのが来年のオスカーの予想。
すでに、第一報として多くの海外メディアが報じはじめています。
まだ公開もされていない作品が多いことから、早いとは思うものの、つい気になってしまうものですね。
ということで、今回、作品賞のみを取り上げ、4つの異なる海外媒体での予想を検証してみます。
対象としたのは「VARIETY」「Business Insider」「Indie Wire」に「awardswatch.com」の4メディア。
まずは、
VARIETYの予想
本命 Predictions
"Silence" (Paramount Pictures)
マーティン・スコセッシ監督の『沈黙-サイレンス-』。日本から窪塚洋介と浅野忠信や役者として塚本晋也などが出演する話題作にして、最大のオスカー候補作。
"La La Land" (Lionsgate)
つい最近日本タイトルが『ラ・ラ・ランド』に決定した。若干31歳のデイミアン・チャゼル監督が長編3本目でオスカー獲得なるか?
"Fences" (Paramount Pictures)
人気劇作家オーガスト・ウィルソンのブロードウェイ劇『Fences』の映画化。主演・監督は、デンゼル・ワシントン。2010年に自身がブロードウェイの舞台に立った作品を、映画化。
アメリカでの劇場公開は、12月16日に限定公開され、12月25日から拡大公開予定。
"Hidden Figures" (20th Century Fox)
地球周回軌道の飛行を達成した初のアメリカ人宇宙飛行士となるジョン・グレンの功績の裏にはNASAの3人の黒人女性たちの支えがあったことを描いた映画。ミュージシャンのファレル・ウィリアムスが音楽とともにプロデュースとして参加。
"Live By Night" (Warner Bros. Pictures)
アカデミー賞を受賞した『アルゴ』に続く、ベン・アフレック主演・監督最新作『Live by Night』。
物語は、禁酒法時代のボストンを舞台に、ギャングの世界でのし上がっていくひとりの男の半生を描く。
2016年末に限定公開された後の2017年1月13日に全米一般公開。
"Lion" (The Weinstein Co.)
『Lion』は、サルー・ブライアリーのノンフィクション本『25年目の「ただいま」 5歳で迷子になった僕と家族の物語』を原作とし、ガース・デイヴィスが監督を務めた映画。出演はデーヴ・パテール、ルーニー・マーラ、デビッド・ウェナム、ニコール・キッドマンら。
物語は、電車を乗り違えて迷子となった5歳のインド人少年が、25年後にGoogle Earthを駆使して実の両親を探し出すというお話です。
"Manchester by the Sea" (Amazon/Roadside Attractions)
サンダンス映画祭で絶賛されたケイシー・アフレック主演『Manchester By The Sea』。
孤独に生きる主人公が、死んだ兄が残した一人息子の後見人になり、急に背負った責任に揺れ動く姿を描いている。Amazonが製作の映画で初のオスカーなるかも興味が持たれるところ--。
"Florence Foster Jenkins" (Paramount Pictures)
日本タイトルは『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』。今年の東京国際映画祭で特別招待作品となった。音痴のソプラノ歌手として知られる実在の 人物フローレンス・フォスター・ジェンキンスとそのご主人との実話を映画化。主演はメリル・ストリープとヒュー・グラント。
"Moonlight" (A24)
ブラッド・ピットの制作会社プランBが制作し、2016年トロント国際映画祭でワールドプレミアされた作品。監督はバリー・ジェンキンス。出演はのアンドレ・ホランド、マハーシャラ・アリ、歌手のジャネール・モネイ、ナオミ・ハリス等。
劇作家タレル・アルバン・マクレイニーの「In Moonlight Black Boys Look Blue(原題)」が原作。麻薬戦争に揺れるマイアミを舞台にした1人の青年の成長物語。
"Loving" (Focus Features)
『テイク・シェルター』『MUD』のジェフ・ニコルズ監督の新作。1950年代のバージニア州で白人と黒人が結婚したことから、古い因習の残る土地によって投獄されるカップルを描いた実話作品。
「VARIETY」では上記、10作品を本命にして、アカデミー賞を予測していますが、このうち4本が黒人をメインにしたお話で、また1本がインドの少年を主人公にしていたりして、どこか”白いアカデミー”で波紋を投げ掛けた昨年までとは違った候補作が上がっています。
ただ、人種差別をテーマにし有力とされていた「The Birth of a Nation」や3度目のオスカーがかかるアン・リー監督『ビリー・リンの永遠の一日』は本命グループには入っていませんね。
下記が、対抗作品や大穴などは---
On the Bubble
"Jackie" (Fox Searchlight Pictures)
"Allied" (Paramount Pictures)
"Hacksaw Ridge" (Lionsgate)
"20th Century Women" (A24)
"Sully" (Warner Bros. Pictures)
Dark Horses
"Gold" (The Weinstein Co.)
"Hell or High Water" (CBS Films)
"The Jungle Book" (Walt Disney Pictures)
"Arrival" (Paramount Pictures)
"Patriots Day" (Lionsgate)
Also in Play
"Billy Lynn's Long Halftime Walk" (Sony Pictures)
"The Birth of a Nation" (Fox Searchlight Pictures)
"Rules Don't Apply" (20th Century Fox)
"The Comedian" (Sony Pictures Classics)
"Bleed For This" (Open Road Films)
Business Insiderの予想
“Arrival”
シネフィルでも、何回も取り上げているが、『ブレードランナー』続編の監督ドゥニ・ヴィルヌーヴが贈る感動のSFドラマ。アメリカ人作家テッド・チャンによる小説「あなたの人生の物語」を原作としている。日本タイトルは『メッセージ』。
“Billy Lynn’s Long Halftime Walk”
シネフィルでも何回かご紹介しているアン・リー監督の3度目のオスカーがかかる『ビリー・リンの永遠の一日』。
“Jackie”
ナタリー・ポートマンがケネディ大統領のファーストレディー、ジャックリーン・ケネディとしての暗殺からの4日間を演じている。パブロ・ラライン監督。
“La La Land”
“Manchester By The Sea”
“Moonlight”
“Silence”
そして
“Sully”
「Business Insider」では、クリント・イーストウッド監督、『ハドソン川の奇跡』が候補に挙がっています。
上記8本が選ばれています。
Indie Wireの予想
Frontrunners:
“20th Century Women” (A24)
アネット・ベニング、グレタ・ガーウィグ、エル・ファニングが共演。
70年代終わりのアメリカサンタバーバラを少年の目を通して描くマイク・ミルズ監督の新作『20th Century Women』。時代の変わり目を描いた作品で、マイク・ミルズ監督の半自伝的な要素もあるとか---
“Arrival” (Paramount)
“Hell or High Water” (CBS Films)
監督は「名もなき塀の中の王」のデビッド・マッケンジー。
舞台はテキサス州西部。金に困り、農場を差し押さえられそうになった兄弟は、銀行強盗となったが、テキサス・レンジャーに追われる身となり--新西部劇。
“The Jungle Book” (Disney)
言わずと知れた、ディズニー作品。ルドヤード・キプリングの同名小説を原作をジョン・ファブロー監督が実写映画化。ジャングルで育った少年の物語。
“La La Land” (Lionsgate)
“Loving” (Focus Features)
“Manchester by the Sea” (Amazon, Roadside Attractions)
“Moonlight” (A24)
“Sully” (Warner Bros.)
Indie Wireでは上記の9本が本命に入っています。
ほか、対抗などはーー
Contenders:
“Fences” (Paramount)
“Lion” (Weinstein Co.)
“A Monster Calls” (Focus Features)
“Rules Don’t Apply” (New Regency/Fox)
“Silence” (Paramount)
Long Shots:
“Allied” (Paramount)
“Billy Lynn’s Long Halftime Walk” (Sony)
“The Birth of a Nation” (Fox Searchlight)
“Elle” (Sony Pictures Classics)
“Eye in the Sky” (Bleecker Street)
“The Founder” (Weinstein Co.)
“Hacksaw Ridge” (Lionsgate)
“Maggie’s Plan” (Sony Pictures Classics)
“Nocturnal Animals” (Focus Features)
“Queen of Katwe”(Disney)
“Passengers” (Sony)
“Patriot’s Day” (CBS Films/Lionsgate)
awardswatch.comの予想
1 La La Land (Summit/Lionsgate)
2 Manchester by the Sea (Amazon Studios)
3 Silence (Paramount)
4 Jackie (Fox Searchlight)
5 Moonlight (A24)
6 Fences (Paramount)
7 Lion (The Weinstein Company)
8 Arrival (Paramount)
9 Sully (Warner Bros)
10 Hell or High Water (CBS Films)
上記が、ベストテンなのだが、ここでも予想した全員1位で『ラ・ラ・ランド』が上がっており、現在のところ、100点満点。やはり強い。ただ、このランキングはまだ公開していない作品は、選者も見ていない作品も多いようで、これからだいぶ変動はあるだろう。
ここでの、対抗であげる作品は以下のとおりーー
OTHER CONTENDERS
13TH (Netflix)
20th Century Women (A24)
Allied (Paramount)
Billy Lynn’s Long Halftime Walk (Sony)
The Birth of a Nation (Fox Searchlight)
Bleed For This (Open Road Films)
The Founder (The Weinstein Company)
Gold (The Weinstein Company)
Hacksaw Ridge (Lionsgate)
Nocturnal Animals (Focus Features)
Passengers (Sony)
Patriots Day (CBS Films)
現状
4つの媒体で見る限り、なんといっても『ラ・ラ・ランド』の強さが目立つものの、米国で予告も公開されていない『沈黙-サイレンス-』もすでにかなりいい位置につけてきていることがわかります。
また、ベン・アフレックとデンゼル・ワシントンという俳優で監督の二人にも注目。
黒人関係の映画では、当初はオスカー候補確実とまで言われた「The Birth of a Nation」は、監督自身のスキャンダル以来、ちょっと後ずさりしていますが、代わりに「Moonlight 」がかなり評判が良く徐々に上位にリストアップされてきています。
あとはアン・リー監督の3度目のオスカーや、パブロ・ラライン監督の「Jackie 」などもどのような位置につくのか---
まだまだ、わからない予測ですが、第一報としてご紹介致しました。