今週「カレイド シアター」があなたの追憶のスクリーンに上映するのは、来日50周年記念のビートルズ映画の数々です。

2016年はビートルズ来日公演から50周年ということで、来日公演のあった六月末にはイベントなどもおこなわれて、盛り上がっていました。
ビートルズは1970年事実上解散していましたが、法的にも正式に解散したのは1971年になります。つまり今年は解散40周年、ですね。
また、ビートルズは1966年8月にツアー活動を止めています。それからやはり50年たっているわけです。
ということは、武道館の日本公演がどれだけ貴重なものだったのかがわかりますね。
その武道館のライブ、オープニング曲は「ロックンロールミュージック」。司会はE.H.エリックでした。

画像1: まつかわゆまのカレイドシアター No.31 来日公演から50周年ビートルズあれこれ--「EIGHT DAYS A WEEK ザ・ビートルズ」「イエスタディ」他

さて。1966年8月29日、サンフランシスコ・キャンドルスティック・パークで行われた最後のコンサートを含め、キャバーンクラブ時代からのライブ映像をふんだんに使い、関係者のインタビューなども多数おりこんで作られたドキュメンタリーが9月22日から公開されます。
タイトルは「ザ・ビートルズ エイトデイズアウィーク ザツアーリングイヤーズ」。
「ザ・ビートルズアンソロジー」から21年ぶりのアップル公式ビートルズ・ドキュメンタリーです。

監督はロン・ハワード。1954年生まれですからちょっと早いかも知れませんが、どんぴしゃビートルズ世代だと思います。

じつはうちの夫、1949年生まれなんですが、この武道館公演に行っているんですね。どっぷり、ビートルズ世代。ことしスコットランドに行ったとき、ビートルズのツアーを再現するミュージカル「レットイットビー」が上演されていて、見に行ったんですよ。もうこれが、60歳前後のもとビートルズ少女たちとちょびっとの少年たちで大盛り上がり。総立ち。合唱するわ飛び跳ねるわで、50年前にタイムスリップしちゃってるんですよ、お客さんたち。うちの夫も、懐かしくて涙出そうだったって言ってました。

ではここで、「エイトデイズアウィーク」には、アメリカのライブの様子もおさめられています。。そして映画に先駆けて9月9日発売される「ザ・ビートルズ ライブアットザハリウッドボウル」のデミニックス版には、77年にリリースされた「ハリウッドボウル」には未収録の曲で「抱きしめたい」が入っています。

 ビートルズの影響を受けたという日本人ミュージシャンも多くて、というか、65年以降音楽活動を始めた人で影響を受けていない人はいないんじゃないかと思うんですが、その中でもやはり”フォーク・ロック”や”ニューミュージック”の人たちにとってはビートルズは神なんだと思います。
ビートルズ・カバーをしているミュージシャンの曲を集めたCDも出ていますね。

話は飛びますが、「レットミーダウン」にはわたしも思い出があります。つかこうへいの芝居で「寝取られ宗助」という作品があるんです。今は「世界の車窓から」のナレーションでおなじみの石丸健二郎が主役を務めていた舞台なんですが、そのクライマックスにかかるのがこの曲なんですよ。思い出してもぞくぞくしちゃいます。つかこうへいもビートルズ世代だったんでしょうね、きっと。

話をビートルズと映画に戻しましょう。

ビートルズが出ている公式映画は、アニメも入れて5本。「ハードデイズナイト」「ヘルプ」「イエローサブマリン」「マジカルミステリーツアー」「レットイットビー」です。最初の二本は日本公開時につけられたタイトルがありますが、現在は原題にもどされています。
「ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!」「ヘルプ 四人はアイドル」、いいタイトルだと思うんですけれどねェ。

「ハードデイズナイト」と「ヘルプ」を監督しているのはイギリスで活躍していたアメリカ人の監督リチャード・レスター。ビートルズの人気に目を付けたアメリカの映画会社ユニバーサルが、ビートルズ獲得の切り札として白羽の矢を立てた監督でした。
レスターは、50年代にイギリスで人気のあったラジオのコメディ・ショー「ぐーん・ショー」のメンバーと短編映画を作っていたのですが、ビートルズがそのファンだったのだそうです。
ユニバーサルがもくろんでいたのはビートルズが出演することと彼らの曲を映画の中で聞かせ、世界のビートルズファンを動員することでした。
ところが、ビートルズの楽曲の権利はすべてアップルにあるため、映画の中で使うことは出ません。そこでユニバーサルが考え付いたのが、映画のサウンドトラックとして新しい曲を書き下ろさせる、という方法でした。当時の契約には映画のサントラに関するきまりが入ってなかったんですね。
そして出来上がったのが「ハードデイズナイト」こと「ビートルズがやって来るヤァヤアヤァ」だったのです。
ビートルズ自身がビートルズを演じ、コンサート会場からテレビのライブ収録へと駆け巡る二日間を描いた、疑似ドキュメンタリーのような作品で81年にMTVから正式に元祖MTVだと認められている作品です。

 リチャード・レスター監督は皮肉でシュールな笑いを得意とする作家です。二本目はさらに荒唐無稽なストーリーを組み込み、ビートルズの中でも、コミックリリーフというか、かわいい担当というか、芝居っ気があって人気者のリンゴ・スターを主役に据え、追っかけコメディ「ヘルプ」を作り上げます。
 バハマのカルト集団が狙うリンゴの指輪を巡って、謎の追っ手が入り乱れ、イギリス・アルプス、そしてバハマへと世界を駆け巡るビートルズが見られます。

 ビートルズ自身が出てきてビートルズを演じる映画は5本ですが、それ以外にビートルズをテーマにした映画も何本もあります。
 ビートルズになる前、ハンブルグに行っていた時代のメンバーでベースを担当していたスチュアート・サトクリフを取り上げた「バック・ビート」、ジョン・レノンの若き日を描く「ノーウェアボーイ一人ぼっちのあいつ」など、伝記映画的な作品もありますし、レノンとエプスタインのスペイン旅行にアイデアを得たフィクション「僕たちの時間」や、ポールがお忍びでジョンを訪ねて語り合うというフィクション「1976ダコタハウスにて」、熱狂的なビートルズファンたちを描く「抱きしめたい」などのフィクションもあります。
 いずれも、ビートルズが好きで好きで仕方なくて、作ってしまった、という感じがします。

 好きで好きでたまらなくて、ビートルズの曲だけで一本の映画を作ってしまった、という映画もあります。それが「アイ・アム・サム」と「アクロス・ザ・ユニバース」の二本。
 「アイアムサム」はシェリル・クロウやニック・ケイブなどの有名ミュージシャンが歌うカバー曲で作られていて、「アクロス・ザ・ユニバース」は出演者が台詞の代わりにビートルズナンバーを歌ってストーリーを進めるというミュージカル仕立てになっています。

「アイアムサム」はショーン・ペンが演ずる知的障害を持つ青年サムと娘のルーシーの物語です。サムはビートルズのことなら何でも知っている青年です。娘をルーシー・ダイアモンドと名付けて育てていきますが、彼女が7歳になった時、サムの知能年齢を越えてしまうからと引き離されてしまいます。サムはルーシーを取り戻すためにリタ・ハリソン弁護士とともに裁判を起こします。
 ルーシーは歌のタイトルから、ハリソン弁護士を選んだのはジョージ・ハリソンと同じ名前だから、とビートルズで生きているサム。演じたショーン・ペンはアカデミー賞にノミネートされました。ルーシーを演じたダコタ・ファニングは当時7歳。愛らしいだけでなく、難しい役を完璧に理解しながらナチュラルに演ずるという天才子役ぶりを発揮しました。2歳のルーシーを演じているのは今や売れっ子の妹エル・ファニングです。

 トゥーオブアス はサムとルーシーのテーマソングのような曲になっていますが、私にとっては初めて演出した舞台で使った思い出の曲です。ミア・ファローが主演した「フォロー・ミー」という映画はもともとが舞台劇なのですが、これを私の演出で大学の演劇部で上演したんです。オープニングに音楽の担当者がつけてくれたのが「トゥーオブアス」でした。イギリスの60年代終わりころの話なので全部ビートルズで行く、という選択でした。ま、今から考えると「レット・イットビー」のアルバム一枚で間に合わせていたわけなんですけれどね。

 さて、もう一本の丸ごとビートルズ カバー映画「アクロス・ザ・ユニバース」。ミュージカル仕立てといっても話はそんなにハッピーなものではありません。舞台の方のミュージカル「ライオンキング」を演出したジュリー・ティモアが監督した作品です。
 リバプールで働く青年ジュードが父を探しにアメリカへわたり、そこで知り合ったルーシーと恋に落ちます。けれど時代はベトナム戦争の真っ最中。ルーシーの兄も徴兵されて戦場へ。ルーシーは大学で反戦運動に参加し、ジュードも運動に飛び込むのですが…
 という、社会派、というか、ビートルズの時代がまさにベトナム戦争の時代であったことを思い出させてくれる作品です。
 アメリカでもイギリスでも、俳優を志す人は必ずミュージカルの訓練も受けます。なのでここに出てくる俳優たちは、セリフの代わりに、役柄の気持ちをこめてビートルズナンバーを自分で歌っています。ラブソングだと思って聞いていたビートルズの歌が違う側面を見せて突き刺さってくる作品でした。

画像2: まつかわゆまのカレイドシアター No.31 来日公演から50周年ビートルズあれこれ--「EIGHT DAYS A WEEK ザ・ビートルズ」「イエスタディ」他

 ビートルズが世界をまわっていた当時、1960年代の若者たちがどんな状況にいたかを教えてくれる映画が「アクロスザユニバース」だしたら、そのころの若者以前、もっと若い少年たちはどんなふうにビートルズをうけとっていたかを見せてくれるのが10月1日から公開される「イエスタディ」というノルウェイの映画です。
 「イエスタディ」は、1967年オスロに住む4人の少年たちがバンド「スネイファス」を組み、ビートルズを目指していくという音楽映画であり、ポールマッカートニーに心酔する主人公キムの初恋物語でもあります。音楽監督をしているのはノルウェイの人気バンドa-haのマグネ・フルホルメン。コールドプレイのガイ・ベリーマンなどと一緒に「カム・トゥギャザー」をカバーしています。

「ザビートルズ エイトデイズアウィーク ツアーリングイヤーズ」は9月22日より、角川シネマ有楽町他で全国公開されます。
また「イエスタディ」は10月1日から新宿シネマカリテ他全国公開です。

公開中『ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK ‐ The Touring Years』と『イエスタディ』

画像: 「ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK ‐ The Touring Years」本予告 youtu.be

「ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK ‐ The Touring Years」本予告

youtu.be
画像: 映画『イエスタデイ』予告 youtu.be

映画『イエスタデイ』予告

youtu.be

ビートルズに関連する映画『アイ・アム・サム』『アクロス・ザ・ユニバース』

画像: 映画「アイ・アム・サム」日本版劇場予告2 youtu.be

映画「アイ・アム・サム」日本版劇場予告2

youtu.be
画像: アクロス・ザ・ユニバース (字幕版) - 予告編 youtu.be

アクロス・ザ・ユニバース (字幕版) - 予告編

youtu.be

This article is a sponsored article by
''.