第38回PFF(ぴあフィルムフェスティバル)の自主映画コンペティション、「PFFアワード2016」の受賞結果が発表された。遠藤日登思さん(映画プロデューサー)、沖田修一さん(映画監督)、 荻上直子さん(映画監督)、佐渡島庸平さん(編集者)、 野田洋次郎さん(アーティスト/ミュージシャン)の5名らが最終審査員として、各賞の発表を行った。

PFFアワード2016の入選20作品の中から、選ばれたのは・・・

小松 孝監督『食卓』

《あらすじ》

年金生活を送る父・政夫と、ニートで詩人の息子・広志。彼らが暮らす一軒家では、食事も別々で、家族らしい交流もない。そこにネットの結婚相談所で政夫と知り合った寿美子が、妻として共に住むことになり、彼らの家族のかたちは変わっていく。酒を止めようとする政夫、三人が囲む食卓。だがそれが理想の家族生活であるわけでは決してなかった。
タイトルにある食卓は、かつてそう思われていたような家族の団欒を提供する場所ではない。だが、「食べる卓」である役割から解放されてフライパンアートの置場となった食卓は、ちょっとだけ自由になれたようにも、見える。

画像: 《あらすじ》

グランプリ『食卓』監督:小松孝
(1981年6月22日生まれ/PFF応募時は34歳、現在35歳/埼玉県飯能市出身)
実は授賞式中に、他の方の受賞結果を聞いて、友人とLINEをして「あぁ、ダメだ~」と言っていました。(これまでの受賞結果には名前が挙がらなかった)
本当にうれしいです。スタッフ、キャスト、この映画にかかわってくれたすべての人に感謝します。映画のモデルとなったアル中の私の父にも伝えたいです。撮影時は更生施設に入っていたので、映画を撮っていることも知らないのですが、後で父に報告したいです。いま私は35歳で遅咲きですが、映画界ではまだ若いほうでしょうか。これからも精進して、世界の映画祭にも羽ばたいていきたいです。

★司会から、この『食卓』は、実はすでにバンクーバー国際映画祭の招待が決定、来週に映画祭に行く予定であることが発表されました。

そのほかの受賞作品および審査員の総評は以下の通り。なお、第38回PFF(ぴあフィルムフェスティバル)はこのあと京都・京都シネマ、兵庫・神戸アートビレッジセンター、愛知・愛知芸術文化センター、福岡・福岡市総合図書館にて順次開催される。
詳しい日時は映画祭の公式サイトで確認できる。

9月23日(金)16:30~ 表彰式開演
【会場】東京国立近代美術館フィルムセンター(東京都中央区京橋3-7-6)
【司会進行】荒木啓子(PFFディレクター)


第38回PFF(ぴあフィルムフェスティバル)「PFFアワード2016」受賞結果

<グランプリ>
小松 孝監督『食卓』

<準グランプリ>
岩切一空監督『花に嵐』

<審査員特別賞>
伊藤 舜監督『シジフォスの地獄』
井樫 彩監督『溶ける』
首藤 凜監督『また一緒に寝ようね』
<エンタテインメント賞>
吉川鮎太監督『DRILL AND MESSY』
<ジェムストーン賞(日活賞)>
岩切一空監督『花に嵐』
<映画ファン賞(ぴあ映画生活賞)>
首藤 凜監督『また一緒に寝ようね』
<観客賞>
内山拓也監督『ヴァニタス』
<日本映画ペンクラブ賞>
岩切一空監督『花に嵐』

画像: (1列目左から) 内山拓也監督『ヴァニタス』 首藤 凜監督『また一緒に寝ようね』 伊藤 舜監督『シジフォスの地獄』 小松 孝監督『食卓』 岩切一空監督『花に嵐』 井樫 彩監督『溶ける』 吉川鮎太監督『DRILL AND MESSY』 (2列目左から) 荻上直子さん(映画監督) 沖田修一さん(映画監督) 佐渡島庸平(編集者) 遠藤日登思(映画プロデューサー) 野田洋次郎(アーティスト / ミュージシャン)

(1列目左から)
内山拓也監督『ヴァニタス』
首藤 凜監督『また一緒に寝ようね』
伊藤 舜監督『シジフォスの地獄』
小松 孝監督『食卓』
岩切一空監督『花に嵐』
井樫 彩監督『溶ける』
吉川鮎太監督『DRILL AND MESSY』
(2列目左から)
荻上直子さん(映画監督)
沖田修一さん(映画監督)
佐渡島庸平(編集者)
遠藤日登思(映画プロデューサー)
野田洋次郎(アーティスト / ミュージシャン)

最終審査員5名それぞれの総評
(「PFFアワード2016」の最終審査を振り返って)

※審査員特別賞、準グランプリ、グランプリは5名の最終審査員よりそれぞれを発表。

遠藤日登思(えんどうひとし) 映画プロデューサー

今回初めて審査に参加して、5日間フィルムセンターに通って、トークやティーチインは聞かずにただ映画だけを20作品を観ました。会場で観ていると、席の周りに監督やスタッフたちがいて、そのエネルギーがこちらに伝わってきて、ぐったりするような貴重な体験でした。この後20人の監督たちとお話しできるという事なので、忌憚なくいろいろな話をしたいと思います。
 

沖田修一(おきたしゅういち)映画監督

いまは技術も進歩して、いいカメラも出てきて、今の若い作り手のほうが、僕の時代よりもプレッシャーを感じるだろうなと思いました。応募作品全て見て、閉塞感、というものは確かに感じましたが、その中で自分の居場所をみつけて、どう映画を作るか、が大事ですよね。毎年「新しいものを!」と求められてもたまったものじゃないですし(笑)。自分の身の回りで面白いものをみつけて映画を作っているなと感じる作品もありましたので、頑張ってほしいです。

荻上直子(おぎがみなおこ) 映画監督

20作品を全て観た感想としては、閉塞感がいっぱい漂っていました。今の10代20代の若者はこんなに閉塞感がいっぱいなのかと、実はちょっと不安にもなりました。
その中でも自由な風を吹かせていたのは『おーい、大石』という作品だったと思います。大好きな映画でした。私は15年前にここで賞を頂いて、15年前、本当に映画が作りたくてしょうがなかったのですが、それは現在も、15年経っても毎日映画が作りたくてしょうがなくて、きっとここにいる監督たちもずーっと映画が作りたい気持ちだと思います。

佐渡島庸平(さどしまようへい)編集者

たくさんの人を巻き込み、最後まで作り上げたことが凄いことでそれ自体が才能だと思います。あとはデビューしたり、仕事として成り立つかが問題ですが、作り続けて自分のモチベーションを保つこと、これが出来ればいつか陽のめを見ることができると思います。同じく審査員をしている監督たちに聞きましたが、完成した作品は見直すのが恥ずかしいそうです。それは、作る時に、自分のすべてをさらけ出すからです。受賞された作品は、監督が自分をさらけ出しているその度合いがほかの作品より秀でています。映画としての完成度よりも、記憶に残る、ということだと思います。

野田洋次郎(のだようじろう)アーティスト / ミュージシャン

僕自身、まだまだものを作る新人というか、、若手の気持ちとして、これから自分で何をやってやろう、何かこの世にないものを作ってやろうという気持ちで、きっとみなさんもいると思ったので、僕自身も同志として関わりたいと思って審査に参加しました。“映画はパンクだ”というキャッチフレーズが今年はありましたが、もっともっとはみ出ていいな、はみ出る作品があってもいいなというのは個人的に思いました。映画の体をなしてなくてもいい、これって映画なんでしょうかというものがあっても良かったのかなというのは思います。僕も音楽を作っていていつも思う事なのですが、楽器だったり機材が良かったりして、環境だったり設備を良くしていけば精度は上がるんですが、本当にお客さんが見たいものはそこじゃないんだな、とつくづく思わされました。映画であればスクリーンからどれだけのものがはみ出ているか、という事を僕はいつも知りたかったり、はみ出たところを見たかったりしています。自分の気持ちや思いや時間を込めれば込めるほど、絶対にそこからこぼれ落ちて届いていくものがあるんじゃないかと思っています。皆さんがこれから作る作品でも、たぎる思いがこぼれてて欲しいなと思います。グランプリ以外では『もっけのさいわい』『おーい、大石』『山村てれび氏』も大好きでした。表彰は出来なかったのですが素晴らしい作品でした。本日は参加させてもらってありがとうございました。

This article is a sponsored article by
''.