全国には多くのミニシアターがあるが、ここにもひとつ、異色の映画館がある。
それが、京都にある”京都みなみ会館”だ。
1964年に開館し、新作封切館から、ピンク映画館への移行など、幾つかの波を乗り越えながら90年代からはインディペンデントやアートフィルムを取り上げるミニシアターとして脚光を浴びていった。
開館から約50年の老舗映画館は、現在でも京都の文化の中心にある。
そして、現在ここの館長を務めるのは若い女性であることにも驚きだ。
彼女は、吉田 由利香さん。
2010年3月に、今まで京都みなみ会館の企画を運営していたRCSが撤退。その翌月の4月に吉田さんは入社する。映画館自体は残ったものの、ボロボロの状況の中で館は再出発の時期だったそうだ。最初の3年間は映写と受付業務を担い、その後、24の若さで館長へと就任。現在では、京都ではなくてはならない重要な映画館の一つとなっている。

そして、この夏 京都みなみ会館は、大きな話題を新たに生んだ。
今年1月、突然の訃報を我々にもたらしたデヴィッド・ボウイの初主演作品『地球に落ちてきた男』の上映権を入手したからだ。
単館映画館が上映権を獲得するという試み。
今回、シネフィルでは、こんな話題の映画館の館長を務める吉田由利香さんに単独インタビューをした。

京都みなみ会館の前壁 ユニークなキャラクターが---

画像: 京都みなみ会館の前壁 ユニークなキャラクターが---

なんと館長の肩書きで、登場したのは20代の若き女性 吉田 由利香さん

画像: なんと館長の肩書きで、登場したのは20代の若き女性 吉田 由利香さん

なぜ、映画館で働く事になったのですか?

学生時代は、手描きアニメーションを作ったりしていて、就職活動はしてなかったんです。このままフリーターとして作家活動をして行こうかなぁ…と思った矢先に、大学(京都造形芸術大学 映像芸術コース)の職員からの紹介で京都みなみ会館の面接に行ったら、そのまま就職が決まってしまいました。

吉田さんが入社された時期は、運営母体が大きく変わった時期だとか---大変だったのでは?

今まで企画運営をされていたRCSという会社が撤退した直後だったので、前任の館長は、各配給会社さんとのやりとりが大変そうだなあ…と思って見てました。RCSの企画が好きだったお客さんたちも、その時期にかなり離れていきましたし…。でもその時はまだ、私はいちスタッフでしかなかったので。
自分がこうやって館長になった時に初めて、前任の館長の苦労が見えて来たんです。暗黒の3年間と言ってもいいこの時期をどうにか乗り越えた時、前館長は自分の夢を叶えるために上京されたんです。そのまま私が館長として引き継ぐこととなりました。それが2013年ですね。

オールナイトを含め面白い企画が定着していますね。

私が通っていたみなみ会館は、それこそオールナイト上映や、ライヴやダンスイベントなど、様々な企画を開催していました。でも、2010年からの3年間は、さっきも言ったように暗黒の時期だったので、企画を立ち上げるとかっていう余裕はなかったですね。で、私が館長になった時に、これではいかん!オールナイト上映を復活させるぞと決めて---
スタッフみんなは、”毎月一回は必ずオールナイト上映を開催するぞ!”と言った私に驚いていて。当時のスタッフ達には、本当に無茶を言ったと思ってます。そこからも紆余曲折あり、スタッフの入れ替わりなどもあったりして、今では同世代のコアな映画ファンがスタッフとして働いてくれているので、とても支えてもらってます。もう怒涛の企画ラッシュですね(笑)

今回の『地球に落ちて来た男』の上映の権利はどのように

”爆音映画祭”などで知られるboidさんからお話を頂いた企画なんですが、やっぱり同じ都市の中に複数映画館があると、自分のやりたい作品を全部上映する事はできないんです。前々から、だったらやりたい作品の上映権利を自分で取ってきてみたいな、と思っていて。でも、新作の権利を取ってくるというのは、自分の中では違って。うちのお客さんは、旧作の作品もよく見に来て下さる方が多いので、できれば、今日本では見れない良質な旧作の上映権を持つことはできないのか…と考えてました。そんな時に、boidさんから”吉田さんどう?”と声をかけられ、手を上げたんです。
まだ、配給のところはよくわからないので、映画館の上映権をうちがもつかたちでboidさんが配給という形で今回の企画は成り立っています。

他の企画はいかがですか

RCSの撤退後、しばらくは集客がかなり落ち込み、とても苦しい時期が続いたのですが、新しい企画を進めていくうちに、最近は若い人たちがたくさん来てくれるようになりました。映画館の若者離れが叫ばれるようになって久しいですが、そういう意味では、全国でもめずらしい客層の映画館なのじゃないかな、と思ってます。
これからも、オールナイト上映を含め、色々な企画を進めると同時に、若い人たちには、クラブに音楽を聴きに行くみたいな感覚で、映画を観に来て欲しいなあと思ってます。
それと、実はもう一方で長く続いている企画として、怪獣特撮映画の特集上映があります。最近ではありがたい事に、”怪獣映画の聖地”なんて仰って下さる方なんかもいて。毎月開催されるこの企画に、全国各地から怪獣映画ファンの方が来て下さり、ひとつのコミュニティが出来上がっていくのを目の当たりにしていると、本当にやり続けてよかったなと思っています。

これからも、こういう企画を

今後も、80年代、90年代の良質な作品を取り上げていきたいです。
あの年代の熱い、様々な文化が混じった映画を、今の若い人たちにも見てもらいたいと思っています。

今後の夢は?みなみ会館をどうしていきたいと思っていますか?

実は、この建物は、地下一階から三階まであって使われていない部分も多く、できればスクリーンを二つ、三つと増やしたいのと、映画から派生したカフェなどもオープンできたらいいです
映画を通じてみんなが集まれる場所を、ここに作っていきたいですね。

インタビューでも伝わる映画への深い愛が溢れる吉田さん。
こんな、素敵な館長に今の新しいミニシアターは支えられ、新しいプチ”シネフィル”を生み出していくのでしょう---。
”京都みなみ会館”の挑戦---公開は始まっています。
ぜひ、応援してあげてください!!!

13日から上映が始まった『地球に落ちて来た男』これからも全国を回る

画像: 13日から上映が始まった『地球に落ちて来た男』これからも全国を回る

『地球に落ちて来た男』予告

画像: 『地球に落ちて来た男』予告編 youtu.be

『地球に落ちて来た男』予告編

youtu.be

『地球に落ちて来た男』The Man Who Fell To Earth
(1976年/イギリス/カラー/139分/デジタル/提供:京都みなみ会館、boid/配給:boid) 

製作:マイケル・ディーリー、バリー・スパイキングス
監督:ニコラス・ローグ
脚本:ポール・メイヤーズバーグ
原作:ウォルター・テヴィス
制作総指揮:サイ・リトヴィノフ
音楽監督:ジョン・フィリップス
制作:メイフェアー・プロダクション
撮影:アンソニー・B・リッチモンド 
出演:デヴィッド・ボウイ、リップ・トーン、キャンディ・クラーク、バック・ヘンリー
DAVID BOWIE IS ON RCA RECORDS AND TAPES 
© 1976 Studiocanal Films Ltd. All rights reserved

8/13(土) より京都みなみ会館、神戸アートビレッジセンター他全国公開

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