はじめに
デトロイトといえば、皆様もご存じのように、フォードや、クライスラー、GMといった、自動車産業で繁栄したアメリカの大都市です。
そのデトロイトに、1885年、デトロイト美術館が創立し、自動車業界の有力者からの資金援助により、古代エジプト美術から現代美術に至るまで、65,000点以上の作品を所蔵し、世界屈指のコレクションを誇る美術館となりました。
ゴッホやマティスをアメリカの公共機関として初めて購入したのもデトロイト美術館でした。
ところが、2013年デトロイト市の財政破綻により、美術館存続の危機に直面し、収蔵する美術品の売却が求められました。しかし、市民の反対運動をはじめ、国内外からの資金援助により、美術館は守られました。
今回の展覧会は、デトロイトから日本の豊田市美術館、大阪市立美術館、森美術館の3か所で開催されるもので、大阪市立美術館の開館80周年記念でもあります。
デトロイト美術館の充実したコレクションの中から珠玉の52点が紹介されていて、そのうち15点は日本発公開です。
世界の名画が一堂に会し、モネ、ルノワール、ドガなどの「印象派」、ゴッホ、セザンヌ、ゴーギャンなどの「ポスト印象派」、「20世紀ドイツ絵画」、ピカソ、モディリアーニなどの「20世紀のフランス絵画」の4つの章で構成されています。
また美術館の中心に位置する内壁の絵は、メキシコの画家ディエゴ・リベラがアメリカの労働風景を描いたものです。
皆様、是非この機会に、大阪市立美術館で、珠玉の「大西洋を渡ったヨーロッパの名画たち」をご鑑賞ください。
第1章 印象派
印象派の巨匠、クロード・モネの作品。
「光の画家」として知られるモネらしい作品です。
色彩鮮やかな花々が咲き乱れる庭園で、赤やピンクの背の高いグラジオラスが中心に、描かれています。
蝶々が花の周りに舞い飛んでいます。日傘をさして立つ女性(妻)も描かれています。
太陽の光が降り注ぎ、花や葉に反射する瞬間や、強い日差しに揺れ動く空気の効果が生き生きと描かれています。
この作品も、ルノワールらしい優しい光に包まれた、絹のような肌の女性美が描かれています。
水から上がったばかりの、輝きを帯びた美しい肌の、豊満で、健康的な裸婦は、隣に脱ぎ捨てられた帽子や、衣装によって、幻想の世界のヴィーナスや、妖精としてではなく、同時代に生きる女性として描かれています。
第2章 ポスト印象派
アメリカの公共美術館に初めて収められたゴッホの作品です。
ゴッホのイメージといえば、暗い色調で貧しい人々の生活を描いたものが多かったですが、1886年にパリに出てからは、明るい色彩で、自由なタッチに変わりました。
この明るい黄色の麦わら帽子とブルーのスモックは、アメリカにふさわしい雰囲気です。
鮮やかな色彩や強い筆跡が特徴的です。
ゴッホにとって色彩は単に、対象の持つ色や光だけでなく、内面的感情を表わす手段でもあったのです。
ゴッホは自画像を多く残しましたが、特にこの作品を描いた1887年に多く残しました。
パステルブルーやグリーンの淡い色彩で描かれた水彩画を思わせる作品です。
セザンヌにとって風景画は生涯にわたって主要なテーマで、故郷エクス=アン=プロヴァンス近郊にそびえる、サント=ヴィクトワール山の連作を、60点以上描きました。
青空の下、グレーがかった黄緑やピンクで大胆に描かれた岩山が、色鮮やかな青や緑の針葉樹によって、より存在感を増しています。
また、カンヴァスが縦長になっているのも効果的です。
また、セザンヌは、伝統的風景画に見られるような、遠近法を用いないで、独自の風景画を描きました。
第3章 20世紀のドイツ絵画
デトロイト美術館の館長が、ドイツ人のヴィルヘルム・R・ヴァレンティナーの時代に多くのドイツ作品が、収集されました。
この作品は大胆で鮮やかな色使いで、斬新な先のとがった山々や樹木が、ファセット(切り込み)状に描かれています。
これは、画家自身の精神的不安を表しているようです。
キルヒナーは、この幻想的な作品の着想について「今朝早く、素晴らしい月の入りを見ました。小さな桃色の雲の上にある黄色の月と澄んだ深い青色の山々本当に素晴らしい情景でした。」と、語っています。
この作品は当時の館長であった、ヴァレンティナー館長の誕生日を祝って寄贈されたものです。
第4章 20世紀のフランス絵画
「色の魔術師」と言われているマティスの爽やかで、美しい傑作《窓》はヨーロッパが第一次世界大戦中、混乱していた最中に、イシ―=レ=ムリ―ノにある田舎の家の仕事部屋から見て、描かれたものです。
この時期、マティスは、キュビスムの影響を受け、この一見何気ない室内画にも様々な幾何学的要素が組み込まれています。
開いた窓のある室内は、マティスのお気に入りの題材です。
すべての線や形が響きあって、マティスの得意とする絶妙な色の対比とハーモニーが全体を美しく調和しています。
この作品は1922年、美術館が購入し、アメリカ人が初めて目にしたマティスなのです。
メッセージ
最後に今回の「デトロイト美術館展」~大西洋を渡ったヨーロッパの名画たち~を、開催するにあたり、デトロイト美術館館長サルバドール・サロールト・ポンス氏より頂いたメッセージ(一部抜粋)を掲載させていただきます。
「多くの寛大なる寄贈者たちのおかげで、デトロイト美術館は、19世紀後半から20世紀前半にかけての貴重な絵画コレクションの中軸をなす作品を、こうして日本のみなさまにご覧いただくことができるのです。
デトロイト美術館は、アメリカにおける最大の美術館ではありませんが、そのコレクションは最良のもののひとつであり、モネ、ドガ、ファン・ゴッホ、マティス、カンデンスキー、ピカソなど名品を所蔵しています。
まさしく美術は人々を励まし、ひとつにする手段です。
本展を彩る名品の数々が、デトロイト市民ならびにその文化を日本のみなさまとより緊密に結びつけることと、私は、確信しております。日本のみなさまが近代美術の巨匠たちの筆遣いと色使いの魔術に魅了され、いつの日か、デトロイト美術館にお越しくださることを願ってやみません。」
素晴らしいメッセージでした。「美術が人々を励まし、ひとつになる手段になればよい」と、願っています。
展覧会概要
会期:平成28年7月9日(土)~9月25日(日) 70日間
時間:午前9時30分〜午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日:月曜日(ただし、7/18、8/15、9/19は開館)、7/19(火)
料金:一般 1,500円(1,300円)、高大生1,000円(800円)
※( )内は、20名以上の団体料金
※中学生以下、障がい者手帳などをお持ちの方(介護者1名を含む)は無料(要証明)。
※本展は、大阪市内在住の65歳以上の方も一般料金が必要です。
※チケットぴあ(Pコード:767-362)、ローソンチケット(Lコード:59115)、イープラス、セブン チケット、阪神プレイガイド(梅田・三宮)、チケットポート(三宮・なんば)などの主要プレイガイド、コンビニエンスストアなどでも販売しています。
※前売券、ペア券の販売は終了しました。
主催:大阪市立美術館、関西テレビ放送、産経新聞社
後援:外務省、大阪府、大阪市教育委員会、サンケイスポーツ、夕刊フジ、
サンケイリビング新聞社、ラジオ大阪、テレビ新広島、岡山放送
助成:アメリカ合衆国大使館
協賛:日本写真印刷
協力:デルタ航空、ヤマトロジスティクス
企画制作:フジテレビジョン
監修:千足伸行(成城大学名誉教授、広島県立美術館長)
デトロイト美術館展@大阪 cinefilチケットプレゼント
下記の必要事項、読者アンケートをご記入の上、「デトロイト美術館展」チケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、ご本人様名記名の招待券をお送りいたします。
記名ご本人様のみ有効の、この招待券は、非売品です。
転売業者などに入手されるのを防止するため、ご入場時他に当選者名簿との照会で、公的身分証明書でのご本人確認をお願いしております。
☆応募先メールアドレス info@miramiru.tokyo
*応募締め切りは2017年9月11日 24:00 日曜日
記載内容
1、氏名
2、年齢
3、当選プレゼント送り先住所(応募者の電話番号、郵便番号、建物名、部屋番号も明記)
建物名、部屋番号のご明記がない場合、郵便が差し戻されることが多いため、
当選無効となります。
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