35ミリフィルムで撮られた、幻の片岡愛之助主演作『宮城野』が蘇る。

浮世絵に隠された、美しくも儚い、残酷な愛の物語

時は江戸――
薄汚れた女郎の処刑が行われようとしている。
女の名は宮城野。罪名は東洲斎写楽殺し。その罪を決定づけたのは、宮城野が持っていた一枚の絵。写楽が描いたというその絵の名も、何の因果か、宮城野だった。
処刑されるそのときまで、宮城野が愛していたのは、矢太郎という名の若い男――
写楽のもとでの修行とは名ばかりの境遇に、鬱々とした日々を送る矢太郎。
写楽の“ニセ絵”を描かされることに。そして、その実力が、今や“師匠”を凌駕しているのに、富と名声を写楽に独り占めされていることに。
そんな矢太郎が女郎屋に来るたびに、慰めていた宮城野。すべては、愛する矢太郎のために。
年増女郎とニセ絵師の、儚い恋が終わるとき、宮城野は、矢太郎への愛に身を捧げる決心をする。
命を懸けた愛によって、ふたりの間に残されたのは……ただ一枚の傑作役者絵「宮城野」。
わずか、十カ月の間に百数十点もの絵を残して、忽然と姿を消した、浮世絵師・東洲斎写楽。実在の人物でありながら、その謎は今なお、闇に包まれている。

毬谷友子をヒロインに、樹木希林、國村隼、寺田農、そして佐津川愛美

年増女郎・宮城野(毬谷友子)と、浮世絵師・写楽の下で鬱々とした日々を過ごすニセ絵師・矢太郎(片岡愛之助)の美しくも儚い、そして残酷な究極のラブミステリー。
原作は、劇作家・矢代静一による語り芝居『宮城野』。
監督は、1999年、『夢二人形』で当時、日本人最年少でカンヌ映画祭デビューを果たした山崎達璽。「伝統文化の延長線上にある映画作り」を追い求め、歌舞伎や浮世絵などのクラシカルな様式美と現代性をあわせもつ新感覚の時代劇へとつながった。

2013年のドラマ『半沢直樹』の黒崎駿一役でその名を日本中にとどろかせ、今年のNHK大河ドラマ『真田丸』でも圧倒的な存在感を見せる歌舞伎俳優・片岡愛之助の本領発揮ともいうべき演技にももちろん最注目!

写楽は本当に殺されたのか? 写楽は一体誰なのか?
ファンの間では「もう一つの衝撃のエンディング」と伝説となっていたディレクターズカット版が、35ミリフィルムの質感にこだわったHDリマスターで今ここに蘇る!!

画像: 『宮城野<ディレクターズカット版>』予告編 youtu.be

『宮城野<ディレクターズカット版>』予告編

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映画『宮城野』の数奇なストーリー

映画界には、数奇な運命をたどった作品は珍しくないが、その裏側はあまり知られてはいない。どの作品も、誰もが順風満帆な未来を歩むことを願って企画される。

2004年8月6日、毬谷友子が初役で舞台を演じたときに始動した『宮城野』映画化の構想。このとき、『宮城野』がのちに数奇な運命をたどる作品になろうとは、誰も思っていなかった。

監督の備忘録によると、クランクインしたのは2007年11月1日。もっとも困難であった資金集めをはじめ、俳優陣の出演交渉・スケジュール調整、スタッフの招集に約3年もの歳月を要したのだ。

撮影期間はわずか1ヶ月。俳優もスタッフも、持ちうる技術を最高潮に高めての短期決戦だった。短期決戦となった理由のひとつに、歌舞伎俳優である片岡愛之助のスケジュールの確保の難しさがあった。愛之助の出演シーンの撮影は舞台が終わってからの深夜しかない。11月29日のクランクアップから編集作業に入り、完成したのは2008年3月28日だった。

時代がデジタル化へと進む中、100年以上の歴史を持つアナログな技法でフィルム撮影された映画が作られたのは、2016年の今、振り返ればこの頃が最終世代だった。

足かけ5年で映画化は実現したものの、今度は公開が決まらないという壁にぶつかることとなる。「作品の内容が暗く、華やかさがない」「原作が人気漫画やベストセラー小説ではない」「アート性が強い上に時代劇」「ストーリーが複雑で上映時間が長い」……。

 『宮城野』の公開が決まらない理由として挙げられたものは、まさに昨今の映画業界のトレンドを物語っている。そして、これらが本作の“魅力”でもあるというジレンマに苦しんだ。
なかなか公開が決まらないまま、時が過ぎていった。

公開実現に向け試行錯誤を重ねた結果、原作に忠実に、宮城野をいう女郎が自己犠牲を謳い上げる、シンプルな展開に編集した<スタンダード版>が各地でデジタル上映されることになり、追ってDVD化された。

一方、<ディレクターズカット版>は広く公開される機会は得られないものの、内外の映画祭などでは高い評価を得ていた。
とくに、印象的だったのは2009年11月28日、イタリア・フィレンツエでのワールドプレミアだ。観客はほとんどがイタリア人。当然のことながら映写技師もイタリア人。イタリア語の字幕をつけて上映されたスクリーンに人々は釘付けになった。イタリアでは吹替による上映が主流のため、彼らは字幕に慣れていない。しかも、このときの上映は入場無料だったことに加え、イタリアの慣習により中盤で休憩が挟まれた。にもかかわらず途中退席する人もなく、エンドロールと同時にわれんばかりの拍手が沸き起こったのだ。

映画や歌舞伎、アートのファン層を中心に、<ディレクターズカット版>に触れた人々から高い評価を得つつも、監督のフィルム上映へのこだわりが強く上映の機会は限られていった。その後、ソフト化もされることなく、お蔵入りとなった<ディレクターズカット版>の存在はファンの間で伝説と化していった。

出演:毬谷友子 片岡愛之助  樹木希林 佐津川愛美/國村隼
   寺田農 坂東薪車(現・市川九團次)

義太夫 浄瑠璃 竹本綾之助 
三味線 鶴澤寛也

監督:山崎達璽  
原作:矢代静一  
音楽:野崎良太(Jazztronik)  
脚本:酒井雅秋(ドラマ『絶対零度』シリーズ(10、11)、『相棒』(13))
美術:池谷仙克 (映画『無常』(70)『陽炎座』(81)『さらば箱舟』(82))
撮影:瀬川 龍(J.S.C)(映画『しあわせのパン』(11)『ゆずり葉の頃』(14))
チーフプロデューサー:戸山 剛  
ゼネラルプロデューサー:荻野友大  
プロデューサー:John Williams  エグゼクティブ:四宮隆史
振付・所作指導:藤間貴雅  
三味線指導:松永鉄駒
浮世絵アドバイザー:新藤 茂  
浮世絵:歌川国政・アダチ版画研究所  
製作・配給:「宮城野」抱え主一同
2008年/35mm/カラー/ヴィスタ/ドルビーSR/113分 PG-12

2016年7月20日 Blu-ray&DVD発売!

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