台湾、香港、中国本土など中華圏での仕事歴20年
(うち半分の10年は中国暮らし)
自称!日中友好大使の小松拓也です。
前回のコラムでは、中国人旅行客の訪日増加とそれに伴う爆買いの近年の傾向を様々なデータに照らし合わせながら見てみましたが、そこでは訪日観光客の多くに台湾人、香港人が含まれていることが分かったと思います。
そこで、今回は意外と多くの日本人が漠然と一括りに認識してしまっている
『中国人=中国本土の人+台湾人+香港人』
という認識は、今後の観光産業を盛り上げ、より日本を国際的な国にしようと政府が取り組むのであれば、プラスな認識ではない!という認識を皆さんと共有していきたいと思います。
ちなみに2016年現在のそれぞれの地域の関係性は以下の通りです。
香港=中国(1997年7月1日にイギリスから中国に返還)
①台湾=台湾(台湾の主張)
②台湾=中国(中国の主張)
※中国と台湾間における歴史的要因による複雑な関係性は、国連加盟国でも台湾を国として認証している国、認証していない国が分かれ、一概に一言で簡単に説明出来ません。今回はあえてそこには触れずに話を進めたいと思います。
台湾人、香港人と中国本土の方々との違いは前回、第一回「日本、台湾、香港、中国へ時を隔てながら渡ったものとは?」でも少しその違いをお話しましたが、経済の発展が早かった台湾や香港は中国本土の多くの人々よりもオシャレで洗練されている傾向が現在はまだ強く、人々の嗜好性や感性はより日本人に近いものがあります。
これには2地域の経済発展のスピードが日本により近かったからという理由だけでなく、共産体制である中国とそうでない日本、台湾、(中国返還後も特別行政区という状態の)香港というそれぞれの関係性も起因しているはずです。
また、かつて日本がアジアの発信基地としての役割を自然と果たし、エンタメやファッションなどの情報を台湾や香港へ伝染させていったように、台湾や香港という地方ブランドは長い間中国にとって大きな影響力を持ち続けていました。(台湾、香港ブランドは現在でも中国で一定の影響力を持ちます。)
それぞれの地域の政治や歴史的背景に加え、長い間中国をあらゆる角度から牽引してきたという自負なども含めてかもしれないですが、実は大半の台湾人や香港人(香港は中国に返還されたにも関わらず)は自分たちのことを「中国人」と呼ばれたり、中国本土の人と一括りにされるのを嫌がる傾向が強いです。
このことは中国と関わりの少ない日本人はほとんどが認知していない問題です。
日本人が仮に欧米人から「アジア人はみんな顔が似ているし、最近は中国人観光客の方が圧倒的に見かける機会が多いから、お前らも中国人だ」などと言われたり、扱われたら、きっと傷つくし良い思いはしないでしょう!
台湾にも中国本土のどちらにも住んだ経験があり、両方の場所に多くの友人がいる僕としては、完全に個人的に中立的な立場なのですが、少なくともこういった繊細な問題が事実上、中国本土と台湾、香港間で存在しているので、この手の会話などに話が及ぶ際は、言葉選びにかなり慎重になったり、意識を配ることでそれぞれの地域の方々へのリスペクトを忘れないようにしています。
これらを知らないことで、せっかく日本を訪れてくれた中華圏のお客さんを万が一嫌な気分にさせてしまうなら、それは日本にとって非常にもったいないしマイナスなことだと思います。
人とのコミュニケーションにおいて、無知や無関心は時に罪となってしまうこともあり得ますし、爆買い対策に対してだけでなく、東京オリンピックに向けて日本が益々海外の方を受け入れる態勢をより強化する意味でも、やっぱり日本人が外国人を一歩でも踏み込んで知っていく!という気持ちや下地作りが今後は益々大事なのだと思います。
小松拓也
1977年生まれ。
高校を卒業するとともに金城武のような多言語を操る国際的な俳優を目指し、台湾へ語学留学。
2003年に台湾でリリースした北京語CDアルバム「一萬個為什摩」は二万枚のセールスを記録。2007年に中国の国民的テレビオーディション番組「加油!好男児」に参加をし、約八万人の応募者の中からトップ20位に残った唯一の外国人ということで大きな注目を浴び、番組終了後は数多くの中国のテレビやイベント、雑誌などに出演するほか、数社の企業広告のイメージキャラクターを務め、日本の音楽を紹介する「音楽物語in Japan」のMCを務めるなど幅広く活動。
また、国家プロジェクトである上海万博の開幕式への参加や、世界中の華僑を台湾に集めて台北小巨蛋をステージに行われた四海大同では、2万人を前にイベントのテーマソングを歌うなど、その功績を中国からも認められている数少ない日本人の1人。
小松拓也オフィシャルブログ
http://profile.ameba.jp/takuyashanghai/