映画『下衆の愛』フェイク・インタビュー part3
でんでん演じる貴田正平プロデューサーと「下衆の愛」の内田英治監督の対談。
“映画は戦い”
プロデューサーSHOHEI KIDA feat. でんでん × 内田英治監督
内田 どうもこんにちは。緊張します。
貴田 緊張なんてしないでしょう、こんな老いぼれプロデューサー。
内田 いやしますよ。すごい作品たくさん残してるし、怖いイメージがあります(笑)。
貴田 そりゃ少しは売れた映画もあるけど、昔の話だよね。70年代のね。
内田 貴田さんは撮影所出身ですね?
貴田 そうそう。
内田 荒れてた時代の?
貴田 そう。よく知ってるね。撮影所とか閉鎖でさ、俺は徹底的に会社側と戦ったわけよ。
うまくやったやつもいたけど、俺はとことんやったよね。戦った。
内田 やはり政治闘争と映画が切り離せない時代だったんですか?
貴田 そうだね。映画は手段でもあったからね。闘争の。
内田 70年代以降はどうでしたか? 実験的、政治的な映画作りからガラリと変わりました
よね。アメリカもニューシネマから、スピルバーグを中心としたブロックバスターに舵を切り始めたり。ベトナム戦争以降は映画そのものが変わった。僕はその世代で、子供の頃に「ランボー」を見たんです。ベトナム兵が邪魔者になって警察に追いかけられる。時代を象徴してました。そしてすぐに「バック・トゥ・ザ・フューチャー」や「ターミネーター」のような娯楽路線にシフトして行きました。日本も同じように、ATG作品の支持者たちが突然消え始めた。人々が暗い政治的なものに嫌気がさしたんですね。
貴田 そうだね。あの時代の変換期はつらくもあり、面白くもあった。俺は会社をやめてからは、しばらくピンク映画を作ってたわけだけど、やっぱり食えないんだ。面白いけど、食えない。俺はプロデューサーだから、映画でスタッフに夢見させないといけないと思ってるんだ。めしは食えて、いい女抱いて、いい車乗って。
内田 お、ゲスいですね(笑)。
貴田 なんだゲスって、いま流行ってるみたいだな。
内田 いえ、なんでもないです。
貴田 でもプロデューサーってのは、そうじゃないといけないと思うんだ。だからピンクはやめた。時代はバブルだから、一般映画作るのに金はすぐに集まったから、あの時代はどんどん映画を撮ったね。変わり種のオリジナル脚本に、アイドルを主演にして、監督はイキのいい実験的なやつを使うんだ。これがいいコラボレーションになった。今はどうだ? ほとんどは漫画原作、アイドルを主演にして、監督も何十年も前からやってるベテランを据える。アイドルはいいよ、客持ってんだから、文句はいえない。でも監督はパンチの効いた新人をどんどん使うべきだろ。違うかい? いつも同じ監督だ。日本映画は企画書重視だからね。そうなっちまう。企画書に書ける名前、上司のハンコがもらえる監督やスターの名前を必要になるんだ。
内田 ではぜひ次回作は監督に起用お願いします(笑)。若くないけど。
貴田 おう、まかせとけ。いま15億の作品の準備してるんだ。
内田 お、本当ですか?
貴田 おう。
内田 でも最近、エロ路線のVシネとかですよね、やってるの。いきなり15億なんてすごいですねー。
貴田 え? おう・・・、まぁな。
内田 バブル崩壊はやっぱり痛かったですか?
貴田 会社も車も家も友達も、全部失ったよ(笑)。
内田 プロデューサー道を地で行ってますね。
貴田 人生かけて作るのが映画なんだ。しょうがないよ。俺は戦った、そして負けた。それだけだ。
内田 かっこいいですね。
貴田 おう、闘争なんだよ、映画は。
内田 でもVシネも初期は売れたでしょう?
貴田 1億2億はすぐに稼げたね。
内田 今じゃDVDレンタルの需要は下がる一方です。どうなりますかね、今後。心配です。
貴田 まあ、それでも作り続けることだよ、泥にまみれても、作るんだよ。
内田 そう願っています。プロデューサーの立場から見て、映画をたくさんの客に見てもらうコツを教えて欲しいです。
貴田 エロと暴力。そして犬だよ。
内田 え、え?
貴田 君は何年映画やってるんだ? まずは裸、そして暴力、つまりアクションだ。最後にシメは犬か猫だ。最近犬は高いからな、猫のほうがいいかな。
内田 勉強になります。
貴田 君も映画を撮ったんだろ、最近。
内田 はい。「下衆の愛」という映画です。
貴田 どんな映画なんだ?
内田 映画業界の内幕ものなんですが、主人公がニートの映画監督で、女優を抱いてばかりいる下衆野郎たちの話です。
貴田 おお、俺みたいだな。面白いのか、そんなもの。誰が見るんだ映画作りの話なんて。
内田 はぁ。僕もそう思ったんですが、けっこう見てくれる人がいました(笑)。
貴田 映画祭とかけっこう行くんだって?
内田 はい、おかげさまで呼んでいただいてます。
貴田 いいな。俺は一回も行ったことがないよ。
内田 そうなんですね。
貴田 まあ、邦画は外国を向いてないからね。俺もそうだった。これからは違うと思うがね。日本じゃもう稼げないし、外に出るしかないわな若い監督たちは。
内田 そうだと思います。
貴田 君も外向きの姿勢なんだ?
内田 はい。僕は知名度がないので、日本じゃなかなか厳しいんです。でも前の映画「グレイトフルデッド」は色んな国の人がほめてくれたんです。日本じゃやっぱりブラックコメディというジャンルが厳しい。それで「下衆の愛」は完全にイギリスのポンド資本で作られた映画だし、次回作もヨーロッパからの出資で作ります。やはり日本は中身よりも知名度が必要なんですよ。知名度がないとインディーズでやるしかない。今までもたくさんの俳優さんに出演を断られてるんですが、ほとんどの理由は「バジェット」です。制作費の大きさです。ま、もっとも俳優本人に脚本は渡ってないでしょうから。しょうがないんですが・・・。そういうときはシュンとしますね。
貴田 そんなの馬鹿野郎って言ってやりゃいいんだよ。ふざけるなって。戦ってないやつが何を言ってるんだって。
内田 お、70年代ですね。フォークソングの歌詞みたいです。
貴田 はは。でもそんな気概じゃないと、映画作りは。
内田 貴田さんの次回作は? 15億の大作は置いといても。
貴田 え? ああ。「ゲス女教師 シロとゆく」だよ。
内田 ・・・へーえ。どんな映画なんですか?
貴田 まぁ、エロVシネなんだけどね。不倫ばかりしている女教師が、ある日、捨て犬と出会って人生が変わるって話。主演はAV女優なんだけどね、演技もいいし、脱ぎにごちゃごちゃ言わないし最高だよ。エロVシネでも映画は映画。
内田 へー・・・すごく、見たいかも。
貴田 君は?
内田 僕は「下衆の愛」公開が終わったら次回作の撮影です。これは地方都市で生きる若者たちの青春地獄を描いた映画で、ヤンキーがゾンビのように出てきます(笑)。ぜひ見てください。
貴田 分かった分かった。次は俺の映画もやってくれ。
内田 光栄でございます。ありがとうございました。
貴田 アデュー。
おわり