東京で大盛況だった「マルモッタン・モネ美術館所蔵 モネ展」が、3月1日より5月8日まで、京都市美術館にて開催されています。
今回、少し遅ればせながら、見学してまいりましたので、レポートさせていただきます。
〔ART@関西 取材・米澤美也子ー西洋美術史専攻 cinefil編集部〕

画像1: クロード・モネ 《睡蓮》 1903年 Musée Marmottan Monet, Paris © Bridgeman-Giraudon

クロード・モネ 《睡蓮》 1903年 Musée Marmottan Monet, Paris © Bridgeman-Giraudon

印象派の巨匠モネ 

 あまり美術に精通していない方でも、モネと聞けば印象派の巨匠、水彩画のような美しい色彩の「睡蓮」の連作を思い浮かべるでしょう。
 関西では、アサヒビール大山崎山荘美術館にモネの「睡蓮」の連作、そして模造の池までもがあります。ガーデンミュージアム比叡では、モネをはじめとする、印象派の画家たちの作品の陶板画が、庭園で鑑賞できます。
それほどモネの作品、なかでも、「睡蓮」は日本人に親しまれ、愛されているので しょう。

 今回、京都市美術館で開催される運びとなった 「マル モッタン・モネ美術館所蔵 モネ展 『印象、日の出』から『睡蓮』まで」では、過去最大ともいえる、珠玉の約90点の作品を、目にすることができます。
 2014年に、マルモッタン・モネ美術館が開館80周年を迎え、世界一のクロード・モネのコレクションとして、「印象、日の出 クロード・モネの傑作の真実展」を開催し、そしてそれが、2015年、日本の東京で引き継がれ、さらに、2016年、遂に京都市美術館へと、やって来たのです。
 本当に喜ばしいことであると思います。
 印象派の礎を築いたモネの《印象、日の出》を目の当たりにできるのです。言葉では語り尽くせないほどの感動です。

画像: クロード・モネ 《印象、日の出》 1872年 Musée Marmottan Monet, Paris © Christian Baraja 展示期間2016年3月1日(火)~3月21日(月・祝)

クロード・モネ 《印象、日の出》 1872年 Musée Marmottan Monet, Paris © Christian Baraja
展示期間2016年3月1日(火)~3月21日(月・祝)

セーヌ川河口に面した、フランス第二の町といわれる、ル・アーヴル港の夜明け。
 日が昇り始め、暗闇だった空や、水面が朱色 に染められてゆく瞬間が描かれています。
 朝もやの中、刻、一刻と陽が射してゆく、刹那の情景をモネは描いています。
 手前には小舟が浮かび、動き出しているよう。遠景に見える建物の煙突から、 煙がもくもくと あがり、いつものように朝が来て、街は動き出そうとしています。
 水彩画のような、淡い色使いで描写されています。
 過去には、ルネッサンス期のように、絵画が、宗教的、モニュメンタル的意義を持ち、宗教画や、肖像画が、主に描かれていました。そして、写実的な絵画が、大成されました。
印象派は、それらを経て、今度は、人の眼というフィルターを通して、光や影の効果を用い、刹那刹那の変化の美しさの瞬間をとらえた芸術である と、私は思います。
《印象、日の 出》は、3月1 日から21日までの期間限定展示となります。 ご注意ください。

画像: クロード・モネ 《テュイルリー公園》 1876年 Musée Marmottan Monet, Paris © Bridgeman-Giraudon 展示期間2016年3月22日(火)~5月8日(日)

クロード・モネ 《テュイルリー公園》 1876年 Musée Marmottan Monet, Paris © Bridgeman-Giraudon
展示期間2016年3月22日(火)~5月8日(日)

 この作品は、3月22日から5月8日までの展示です。
 緑の美しい庭園が描かれた作品です。凛と青く澄んだ空、穏やかな陽射しが降り注ぐ緑の美しさは、ピサロやシスレーにも見られる印象派の特徴だと思います。
光を受けて、清々しい緑の庭園が、パノラマ的に広がっています。

画像: ピエール=オーギュスト・ルノワール 《新聞を読むクロード・モネ》 1873年 Musée Marmottan Monet, Paris © Bridgeman-Giraudon

ピエール=オーギュスト・ルノワール 《新聞を読むクロード・モネ》 1873年 
Musée Marmottan Monet, Paris © Bridgeman-Giraudon

 この作品はルノワールによって描かれたもので、夫人を描いたものも展示されています。
 モネはルノワールとは、とりわけ親しい間柄だったようです。
 そして彼らが中心的存在となり、印象派絵画が形成されました。

画像: クロード・モネ 《ポンポン付きの帽子をかぶったミシェル・モネの肖像》 1880年 Musée Marmottan Monet, Paris © Bridgeman-Giraudon

クロード・モネ 《ポンポン付きの帽子をかぶったミシェル・モネの肖像》 1880年 
Musée Marmottan Monet, Paris © Bridgeman-Giraudon

 モネは家族の肖像画も描いており、温かな愛情が感じられます。

画像: クロード・モネ 《劇作家フランソワ・ニコライ、通称クレルヴィル》 1858年 Musée Marmottan Monet, Paris © Bridgeman-Giraudon

クロード・モネ 《劇作家フランソワ・ニコライ、通称クレルヴィル》 1858年 
Musée Marmottan Monet, Paris © Bridgeman-Giraudon

 19世紀には、時事問題を揶揄した、カリカチュア(風刺画)が、一世を風靡し、モネも15歳で、「風刺画家」として、知られる存在となり、次々と描かれた肖像戯画は、(機智に富んだ素描)といわれていたのですが、後の印象派の作品とは、違う一面が見られます。 
 
 

画像: クロード・モネ 《雪の効果、日没》 1875年 Musée Marmottan Monet, Paris © Bridgeman-Giraudon

クロード・モネ 《雪の効果、日没》 1875年 Musée Marmottan Monet, Paris © Bridgeman-Giraudon

 1870年モネは普仏戦争から逃れてロンドンへ渡り英国絵画と出会います。
 コンスタブルやターナーの影響を受けて光の効果を用い、印象派の誕生となったのです。
 1871年フランスに戻ったモネは、特有のモティーフだった鉄道橋を描きます。
 セーヌ川の流れに沿ってあらゆる時間に、あらゆる季節に、その美しさを表現したのです。
            参考文献)マルモッタン・モネ美術館所蔵 モネ展 図録(印象社)
 
 『モネはアルジャントゥイユの眺望を描いていた作品に見られた写実的な色調を捨て、ほとんど非現実的とも言える色彩によって風景を取り巻く寒さをとらえようとした。
 モネがどのようにして少しづつ解釈を必要とする描写を放棄し主題を単純化していったのかがわかる。作品からは徐々に人物の姿が消えていく。これ以後画家は自然を描き出すことに専念し自然を様々な季節と組み合わせることでその最良の部分を引き出すようになった。』
            引用文献)マルモッタン・モネ美術館所蔵 モネ展 図録(印象社)
 省略と誇張。そしてモネ自身も題名に用いているように、雪の効果や朝の効果など、自然の天候や時間、季節による変化の美しさを芸術にしているようです。

画像: クロード・モネ 《オランダのチューリップ畑》 1886年 Musée Marmottan Monet, Paris © Bridgeman-Giraudon

クロード・モネ 《オランダのチューリップ畑》 1886年 
Musée Marmottan Monet, Paris © Bridgeman-Giraudon

 「いつの日かクロード・モネの庭園を訪れることができたら、私には見えるような気がする。花を植えたというよりは様々な色調と色彩を植え付けた庭園」(1907年マルセル・プルースト)
 1890年モネはジヴェルニーの家と土地を購入し、四季折々の花が咲く百花繚乱の「花の庭」を造り、その3年後には、日本庭園風の「水の庭」を作ったと言われています。
          参考文献)『もっと知りたいモネ 生涯と作品』 安井裕雄著 (東京美術)
 
 爽やかな青空のもと、穏やかな光を受けて、光輝く、赤や黄色の鮮やかな花の絨毯が広がっています。やさしい風になびく花の群れ、気持ちのいい雄大な美しい景色が目に浮かびます。
手前の、澄んだ水面には、花の絨毯が映し出され、きらめいています。
 1900年の「モネの庭、アイリス」という作品でも、モネは端正込めた「花の庭」を埋めつくす紫の絨毯としてアイリスの花を見事に描いています。       
          参考文献)『もっと知りたいモネ 生涯と作品』 安井裕雄著 (東京美術)        
 

光と水面の追及

画像2: クロード・モネ 《睡蓮》 1903年 Musée Marmottan Monet, Paris © Bridgeman-Giraudon

クロード・モネ 《睡蓮》 1903年 Musée Marmottan Monet, Paris © Bridgeman-Giraudon

『水のラファエロ。マネにこう評されたモネは終生「水」を描き続けた“水の画家”であった。』
         引用文献)『もっと知りたいモネ 生涯と作品』 安井裕雄著 (東京美術)

 最初に述べたように、モネは多くの人々から印象派の巨匠として知られ、その代表作と言えば「睡蓮」でした。  
 『「水の庭」に描いた「睡蓮」の作品群はおよそ300点にもおよび、画家の生涯の全製作数の7分の1を占める。  引用文献)『もっと知りたいモネ 生涯と作品』 安井裕雄著 (東京美術)

モネは、睡蓮と、水面に反映させる樹木の影を描き続けたのです。 

画像: クロード・モネ 《睡蓮》 1907年 Musée Marmottan Monet, Paris © Bridgeman-Giraudon

クロード・モネ 《睡蓮》 1907年 Musée Marmottan Monet, Paris © Bridgeman-Giraudon

 モネは「睡蓮」の連作を描き進めるうちに、次第に水面に引き寄せられていきます。
 『池に掛かる太鼓橋は姿を消し、睡蓮の浮かぶ水面だけが描かれるようになる。絵の主題は睡蓮の咲く池から、水面に映る空や柳の影、すなわち反映へと移行する静かな水の広がりが画面を覆っている。だがそこには水面下に降りゆく空間が感じられるだろう。』
             引用文献) 『モネ「睡蓮」への歩み』 六人部昭典著 (六耀社)

 モネが植えた柳は「水の庭」に日本の趣を与えていました。幹と葉の色は、光の変化に伴って変わりゆく色を捉えようとするかのように、様々な色を用いて描かれています。
作品毎にも色調は大きく変化し、異なる光の条件下において色彩の変化が描き出されています。
物の形があいまいな描き方になっていますが、1912年に診断された白内障の進行が影響しているでしょう。 
             参考文献)マルモッタン・モネ美術館所蔵 モネ展 図録 (印象社)
             
 
 
 

画像: クロード・モネ 《バラの小道、ジヴェルニー》 1920-22年 Musée Marmottan Monet, Paris © Bridgeman-Giraudon

クロード・モネ 《バラの小道、ジヴェルニー》 1920-22年 
Musée Marmottan Monet, Paris © Bridgeman-Giraudon

画像: クロード・モネ 《日本の橋》 1918-24年 Musée Marmottan Monet, Paris © Bridgeman-Giraudon

クロード・モネ 《日本の橋》 1918-24年 Musée Marmottan Monet, Paris © Bridgeman-Giraudon

 モネは最晩年にも睡蓮の大装飾画を手掛け、《バラの小道》や《しだれ柳》、「日本の橋」の連作を製作していました。
 モネが生涯を掛けて取り組んだ光と影、そして水の反映を通しての芸術。
それは唯々、賞賛に値するでしょう。

 皆さま、是非この春、京都で、モネの生涯をかけた“光の追及”をご覧になってください。 

 米澤美也子@シネフィル編集部 

米澤美也子(西洋美術史専攻)
 

◇展覧会概要

3月1日(火)~5月8日(日)
大人1,600円(1400) 高大生1100円(900) 小中生600円(400)
( )内は20名以上の団体料金
※ 障害者手帳等を提示の方は無料。
※ 京都市内の小中生は土・日・祝休日は無料。
開館 9:00から17:00 (入場は、閉館の30分前まで)
※3月18日(金)~20日(日)、5月3日(火)~8日(日)は19:00まで開館(入場は閉館30分前まで)

「マルモッタン・モネ美術館所蔵 モネ展」@京都 cinefilチケットプレゼント

 下記の必要事項、読者アンケートをご記入の上、「マルモッタン・モネ 美術館所蔵 モネ展 『印象、日の出』から『睡蓮』まで」チケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、ご本人様名記名の招待券をお送りいたします。
記名ご本人様のみ有効の、この招待券は、非売品です。
転売業者などに入手されるのを防止するため、ご入場時他に当選者名簿との照会で、公的身分証明書でのご本人確認をお願いしております。
☆応募先メイルアドレス  info@miramiru.tokyo
  *応募締め切りは2016年4月17日 24:00 日曜日
記載内容
1、氏名 
2、年齢
3、当選プレゼント送り先住所(応募者の電話番号、郵便番号、建物名、部屋番号も明記)
  建物名、部屋番号のご明記がない場合、郵便が差し戻されることが多いため、
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8、連載で、面白くないと思われるものの、筆者名か連載タイトルを、3つ以上ご記入下さい
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   また、抽選結果は、当選者への発送をもってかえさせて頂きます。


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