画像1: 映画監督 旦 雄二の☆それはEIGAな!  Cool! It's a movie! by DAN Yuji   ♯27(通算 第46回)  映画『SHERLOCK/シャーロック 忌まわしき花嫁』を観賞して

映画『SHERLOCK/シャーロック 忌まわしき花嫁』を観た。花嫁ドレスに身を包み銃を乱射したあげく自決した女の亡霊が、後日、その夫の前に姿を現し、これを射殺する。その事件の謎をめぐって展開する物語。

ああ、ひさしぶりに、オーソドックスな正統派ホームズ劇が堪能できる。よし、あの とんでもガイ・リッチー版の口直しをさせてもらえる。そのように嬉々として観つづけるうちに、どうにも雲行きが怪しくなってしまったのだった。

(以下、若干ネタバレあり)ヴィクトリア朝の時代劇描写にいきなりマトリックス・ショットが登場するわ、路上に唐突に擬似セットは置かれるわ、乱調してオカルト風やホラー調に脱線していくわ、はたまた、とってつけたような、観客が暮らす側のいまのこの時代に媚びた、一見もっともらしい、しかしそれでいながら確実に観客の共感をとてもじゃないが得られない、むしろこの「大義名分」には観客総ビキ必至の、ふざけた、それこそ忌まわしい「真相」をむりやり持ち出してくるわ、しまいには登場人物たちが、自分たちは所詮この物語に操られているただのコマにすぎぬと言いだすメタ文学メタ映画構造にきわめて御都合主義的に収斂していくわ、あげくのはてには時制が現代にワープしてしまうわ、いやそもそもこれは現在時点から語られているところの物語であるらしい、冒頭で「これまでの展開」と称して、この「映画」のもとになったという、現代に舞台を移しかえたテレビ・シリーズ版のダイジェストを見せられたのはそういうことだったのか・・・と わかってくるわ。

いやいや、ことほどさように、これはもう無茶苦茶なのである。あのガイ・リッチー監督ですら手を出さなかった禁じ手に踏み込んだ、マナー、エチケット、ルール違反大会なのである。シャーロック・ホームズ物のオリジナル原作者コナン・ドイルのあの豊かな世界観を破壊し、冒瀆しつくしている。

この映画はもともとが、先述のテレビ・シリーズのスペシャル版としてつくられたものであるらしく、それゆえの、悪しき意味での、テレビ的なパースペクティブの狭さや、内輪受けに堕して安住した傲慢さを、つよく感じさせられる結果となった。わたしなどよりもはるかに熱心なシャーロキアンと思しき老若男女の観客の皆さんも、上映が終わって灯りがつくと、一様に目がテンになっておられた。罪なことである。

こういう、発案・企画のボタンのかけ違いがそのまま作品の立ち位置の混乱を招来し、不幸にもできあがってしまったその珍作が観客をさんざん引きずりまわして突っ散らかしたあげくのはてにこれを置き去りにしてそのまま宇宙のかなたへと無責任に逐電していくがごときとんでも映画やとんでもテレビは、けっしてつくってはいけない。わたしたちは、お客の期待を裏切ってはならないのだ。

たいへん残念な映画を観た。映画『忌まわしき花嫁』。忌まわしき映画である。

(3月12日 鑑賞 @ シネ・リーブル池袋2)

映画『SHERLOCK/シャーロック 忌まわしき花嫁』公式サイト
http://sherlock-sp.jp/sp/

画像2: 映画監督 旦 雄二の☆それはEIGAな!  Cool! It's a movie! by DAN Yuji   ♯27(通算 第46回)  映画『SHERLOCK/シャーロック 忌まわしき花嫁』を観賞して

旦 雄二 DAN Yuji
CMディレクターを経て映画監督
〇武蔵野美術大学卒
〇城戸賞、ACC賞、HVC特別賞
〇日本映画監督協会 会員

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