映画『下衆の愛』フェイク・インタビュー part2
古舘寛治演じる加納巧監督に聞く。
“映画界でのし上がる方法”
監督TAKUMI KANO feat. 古舘寛治
interview 内田英治

画像: 映画『下衆の愛』フェイク・インタビュー part2 古舘寛治演じる加納巧監督に聞く。 “映画界でのし上がる方法” 監督TAKUMI KANO feat. 古舘寛治 interview 内田英治

2回目は海外でも高い評価を受けており、国内でも数々のヒット作を放ってきた加納巧監督にお越しいただきました。

(内田)映画を始めたキッカケを教えてください。

(加納巧監督) 僕はいわゆる8ミリ自主映画の最後の世代ですね。ATG(日本アート・シアター・ギルド)の影響を受けて、中学生の頃から自主映画を撮ってましたよ。それは高校と続き、大学では映研に入ったんですね。その頃の日本映画はインディーズのほうが元気でしたね。森田芳光監督や、相米監督、石井監督など、新しい波がどんと日本映画に押し寄せていた時代でしたから。

(内田)インディーズ出身とは驚きです。

(加納巧監督) じつはそうなんです。最初からメジャーのイメージがあるみたいですが、若い頃はすごく貧乏でしたよ。フィルム代を稼ぐためにアルバイトばかりしてました。で、ある日、某映画雑誌主催の自主映画コンペに作品を出したら、それがグランプリを受賞したんです。当時は今みたいに映画祭もほとんどなかったですから。その作品が評価されてからは、徐々に大きな作品の依頼が来るようになりましたね。いわゆるメジャー系の作品が。

(内田)なるほど。大きな作品でご苦労は?

(加納巧監督) それはたくさんありますよ(笑)。やはり映画作家やってるわけですから、原作ものよりはオリジナルをやりたい。でも大きな予算がかかってくるとなかなか難しいですからね。とくに日本映画は海外に比べて原作ものが多いですよね。アメリカでさえ全体の3割はオリジナルです。ベストセラー小説や、マンガ原作や。僕はそれが悪いとはまったく思いませんが、大作と同時に小さな個性的な作品がもっとあってもいいと思います。大作はマスを狙ってるので、脚本作りとか、よりたくさんの観客に受け入れられるように、尖っている部分を丸くしていく作業なんですね。日本の場合、大勢で脚本作りをしたり、委員会方式という珍しいシステムなので、大勢のプロデューサーがいます。全員が納得する企画を作り上げることに重点が置かれます。小作は違う。ストーリーをいかに尖らせて行くかにかかっている。いかに個性的であるかに向かって行くんです。まるで方向性が違うんです。
 フランスやアメリカなどは、大小作品のバランスがやはり上手にとれてますよね。「キャプテンアメリカ」のような作品がある一方で、非常に小さな作品もあったり。それは、映画製作に対する税制や、フランスのように小作品に対する助成金制度など、国の映画に対する考え方も大いに関係するのですが。
 なので僕もやはりオリジナル作品を撮っているときのほうが心躍ります。

(内田)多くのオリジナル作品が海外で高い評価を受けてますね。

(加納巧監督) ありがたいことに。オリジナル作品を日本で売るためには、やはり海外からの逆輸入という形が一番宣伝力がありますよね。海外の映画祭で受賞、それが日本でも話題になるわけです。とにかく映画祭だけは、年々増えてますから。世界中で。とにかくいろんな映画祭がある。そして映画祭に行くと、日本映画がいかにクローズドな世界にあるかを再認識しますね。

(内田)ほう。それはどういう意味で?

(加納巧監督) やはり日本の映画は国内需要で成り立っているし、十分に食っていける稼ぎを出しているんんです。海外のインディーズ作品ほどの制作費で、かなり大きな映画が撮れてしまう。韓国映画界のように外に出ないと潰れてしまうという状況ではないんです。なので、基本的には海外に映画を売る必要がないんです。イコール海外に通用する映画作りをする必要がないんですね。アニメや食文化と違い、日本映画の置かれている状況は、日本で報道されているよりはるかにまずい状況ではあります。一部の芸術に関心のあるインテリ層や、日本文化オタクたちにはすごく支持されてますが、一般市場ではまだまだ日本映画イコール「ゴジラ」か「七人の侍」ですよ。
 でもま、国内需要でやっていけるんだから、しょうがないかなとも思いますね。どんな大きな会社でも、海外に支部なんてないか、いてもひとりいるくらいですから。でも国内の地方の営業所にはすごい人数を配備してますからね。稼げる国内に力を入れるのは当然のことです。稼げるけど、文化としてはどんどん廃れてゆきますよね。

(内田)映画を志す若者たちも映画祭には興味があると思います。アドバイスお願いします。

(加納巧監督) 最近の日本の映画監督の状況はよくなってきたと思います。おそらく世界でもっともインディーズ映画が撮られている国ですから、人数が多いぶん、雑ですが、中には才能豊かな監督もたくさん出てきていますよね。そういう子たちは海外にすごく敏感なのが特徴ですね。おそらく心の中で、日本映画そのものに未来を感じなくなってるのかもしれません。「いつかメジャー映画をやるぞ!」なんて志の人間は少なくなってきましたよね。大きな映画撮りたかったらテレビ局に入社するのが一番の早道ですから。
 やはり映画は芸術ですよ。自分の個性をスクリーンにぶつけたい。若ければなおさらそうでしょう。そうするには、日本映画にはあまりにも夢がなくなってしまいました。
 なのでやはり映画祭に挑戦し、そしていつか海外に飛び出してほしいですね。そうすれば日本だけではなく、世界中に観てくれる人たちがいます。世界を視野に入れるだけで、何百倍にもなりますから、需要が。映画なんて、観てもらってなんぼでしょう。そのためには、早いのはやはり映画祭でしょうね。映画祭と言ってもたくさんありますので、自分にあう映画祭を探すといいと思います。

(内田)最後に監督にとって映画とは何ですか?

(加納巧監督) ドラッグみたいなものですね(笑)。一度味わったらやめられない。映画やめますか? それとも人間やめますか? って。映画とはそれくらい甘くて、危険なものですよ。

ありがとうございました。

画像: LOWLIFE LOVE (下衆の愛) trailer - Directed by Uchida Eiji, Japan 2016 www.youtube.com

LOWLIFE LOVE (下衆の愛) trailer - Directed by Uchida Eiji, Japan 2016

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