「フランス組曲」はドイツ占領下のフランスで書かれた原作を、英国出身のソウル・ディブ監督で映画化


「フランス組曲」は、ドイツ占領下のフランスで書かれた原作を、英国出身のソウル・ディブ監督で映画化。
原作者のイレーネ・ネフロスキーは、1942年アウシュヴィッツで死去した。
原稿は娘が保管していたが、2004年に出版されベストセラーになった。

イギリス・フランス・ベルギー映画。1940年ドイツ占領下のフランスの田舎町。
リュシル(ミシェル・ウィリアムズ)は、戦地に赴いた夫を義母のアンジェリエ夫人(クリスティン・スコット・トーマス)と待っていた。
ドイツ軍が進駐してきて、リュシルの家にもブルーノ中尉(マティアス・スーナールツ)がやって来る。ブルーノ中尉は、元作曲家でドイツ軍人らしくない穏やかな性格だった。

やがてリュシルとブルーノ中尉は音楽を通じて親しくなっていく。ミシェル・ウィリアムズは「マリリン7日間の恋」でマリリン・モンローを演じたアメリカ出身の女優。クリスティン・スコット・トーマスはイギリスの女優。マティアス・スーナールツは「君と歩く世界」のベルギー俳優。会話は英語だが、ところどころでドイツ語とフランス語が混じる。

最初のパリから南下する難民の列にドイツ機の空爆が加えられるところから、いかにもフランスらしい景色で、違和感なく観られた。英語もさして気にならなかった。だがラスト近くはメロドラマの色が強くなりすぎた。占領に伴う戦争の愚かしさは十分に感じ取れた。

ロングライド配給。1月8日TOHOシネマズシャンテ。

画像: Photo: Steffan (C)2014 SUITE DISTRIBUTION LIMITED

Photo: Steffan (C)2014 SUITE DISTRIBUTION LIMITED

「バーバリアンズ セルビアの若きまなざし」はセルビア出身のイヴァン・イキッチ監督による作品


「バーバリアンズ セルビアの若きまなざし」はセルビア出身のイヴァン・イキッチ監督による作品。
イガグリ頭の怒れる若者たちの鬱屈した青春を描き、リアリティーを感じさせる。
学校をさぼり、地元サッカーチームの試合では暴動を起こす若者たち。
コソボ独立反対運動ではベオグラードで暴れまわる。
ばらばらになったユーゴスラビアの混乱は、若者たちにも影を落とさずにはいられない。
ドキュメンタリー映画を見ているような荒々しい映像だ。

アニモプロデュース配給。1月シアターイメージフォーラム。

「ニューヨーク眺めのいい部屋売ります」はモーガン・フリーマンとダイアン・キートンが主演のアメリカ映画


「ニューヨーク眺めのいい部屋売ります」はモーガン・フリーマンとダイアン・キートンが主演のアメリカ映画。「ウィンブルドン」のリチャード・ロンクレイン監督。

ブルックリンを一望できるアパートで暮らしてきた画家のアレックス(モーガン・フリーマン)と元教師の妻ルース(ダイアン・キートン)夫婦は結婚40年。
だが5階建てのアパートにはエレベーターはなく、年齢を感じるアレックスに階段はちとつらい。その上、10歳の愛犬も腰を痛めたし…というので、引っ越す算段になってはみたが。

ユーモアを込めて語られる夫婦愛が味のあることといったら。
同時に築数十年でエレベーターもないアパートが1億円ぐらいするという、ニューヨークの住宅事情にはびっくりさせられた。
黒人と白人の夫婦とか、女性不動産屋のど根性とか、いろいろなところでほぉー、と感心することしきり。いやー、映画って本当にいいですねー。

スターサンズ配給。1月30日シネスイッチ銀座。

「イット・フォローズ」は新感覚のアメリカン・ホラー


「イット・フォローズ」は新感覚のアメリカン・ホラー映画。19歳の女性ジェイ(マイカ・モンロー)は男と一夜を共にするが、男の態度が豹変。
縛り付けられたジェイは「それ」に殺される前にだれかに「移せ」といわれる。「それ」とは何か。男か女かわからないが、そいつに捕まると殺される。

「移す」とはどういうことか。セックスをすると、「それ」の標的はセックスをした相手に移る。
だから「それ」に狙われたら、対象を移してしまえというわけだ。

「それ」は歩くことしかできない。だが、ゆっくりとだが必ず追いつかれる。
「それ」は狙われた本人にしか見えない。ということで、ジェイはゾンビのような男女に付け狙われる。
車で逃げても、じわじわと追いつめられる。ティーンのセックス願望が悪夢のような異形のものに変わるというアイデアは、心理学的に見ても興味深い。うまくホラーに結びつけた感じで、「それ」に対する逆襲も、工夫されている。要するにホラー映画もアイデア次第ということだ。

デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督。

ポニーキャニオン配給。1月8日TOHOシネマズ六本木ヒルズ。

「エージェント・ウルトラ」は、「ソーシャル・ネットワーク」のジェシー・アイゼンパークと「トワイライト」のクリスティン・スチュワート主演のアメリカ映画


「エージェント・ウルトラ」は「ソーシャル・ネットワーク」のジェシー・アイゼンパークと「トワイライト」のクリスティン・スチュワート主演のアメリカ映画。

田舎で恋人のフィービー(スチュワート)と暮らすコンビニ店員のマイク(アイゼンバーグ)。マイクはフィービーとハワイに旅行に行こうとするが、気分が悪くなって出かけられない。
そんなとき、コンビニの女性客から奇妙な暗号のような言葉を聞いた。
そのあと、男たちがマイクを殺そうと近づいてきた。
マイクはスプーンで撃退する。実はマイクはCIAの極秘プロジェクト「ウルトラ計画」で生き残った諜報員だった。

この映画、マイクが自分はどうなっているのかがわからないように、観客も何も知らないで進行する。その意外さがウリになるはずだが、あいにくそんな洞察力に欠ける迂闊な人間にピンとくるはずがない。最後までもやもやとした思いで見終えることになる。

このCIAの「MKウルトラ計画」は実際に行われて問題になった。
だが、いくら計画に邪魔になるといって、軍が無人機で民家を爆撃しそうになるなんて、ありえないだろう。ちょっとやりすぎになった感がある。ニマ・ウリザテ監督。
KADOKAWA配給。1月23日公開。

野島孝一@シネフィル編集部
コラム~野島孝一の試写室ぶうらぶら~シネフィル篇
野島孝一
毎日新聞社に入社、映画記者歴約25年。
毎日新聞退職後、フリーの映画ジャーナリストとして活躍中。
■現在
日本映画ペンクラブ幹事
毎日映画コンクール選定委員、毎日映画コンクール諮問委員
アカデミー賞日本代表作品選考委員
日本映画批評家大賞選定委員
■著書
日本図書館協会選定図書
映画の現場に逢いたくて
ザ・セックスセラピスト THE SEX THERAPIST
野島 孝一 著
野島孝一の試写室ぶうらぶら 、オリジナル版は、アニープラネットWEBサイト
に掲載されています。
野島孝一@シネフィル編集部
アニープラネットWEBサイト
http://www.annieplanet.co.jp/

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