「ホテルコパン」
10人の壊れる日本人。と、その10人の怪優たち。
第8回 大谷幸広 as 付き人:澤井 善

監督の門馬直人です。
今日は公開に先駆け、ニコニコ生放送で、21時から映画公開直前先行試写会があります。1000名までは観れるそうなので、お時間ある方はぜひ。
今日も劇中で描ききれなかった10人のキャラと怪優たちの見どころについて紹介していきます。

画像: 大谷幸広 as 付き人:澤井 善

大谷幸広 as 付き人:澤井 善

善意が人と自分を追い詰める。

悪意って清々しい。だってその自覚がはっきりとありますからね。
やっかいなのは「よかれと思って〜」という善意です。日常でも問題になることが結構ありますよね?しかもこの「よかれと思って〜」によるトラブルの場合、たいていは被害を受けた本人だけが、問題を抱えなきゃならないことが多い気がします。
それが大問題であっても、周囲は「まあ、悪気があってやったわけじゃないから〜」「善意でやってくれたわけだからさ、許してやってよ」と、よかれと思ってやった加害者を庇護します。被害を受けた本人も、相手に「悪気がない&善意」によるものなので、責め立てることもできず泣き寝入りするしかない。
これって一見、悪くなさそうに思えますけど「よかれと思って」って、そいつが独断で勝手に判断しただけですよね?だから言いたいです。まず「聞けよ!」と。
その自覚がないっていうのが一番問題だと思うのですね。悪意がないって状態は「無垢な人間」という見方で捉えられていますが、言い方を変えると「相手の倫理や常識を理解していない」ってこと。他人のことを考えようとしてないから、独善的なんですよ。こういう人って同じようなことを繰り返すのですが、毎度毎度「よかれと思って」なので、大勢が被害者になるまで、この人の問題は根本的には責められないままなのです。

この問題を解決するには、コミュニケーションを多くとり、「必ず聞いてもらう」を徹底するしかないんでしょうね。それでも、変わらなかったとしたら、それは「自覚してないという名の完全な悪意」ですね。もしそうだったら、相手が一枚上手だったということで(笑)

澤井も、「よかれと思って」という軽い気持ちから問題を大きくした人物です。
澤井は舟木を尊敬しています。そしてプライドが高いことも知っています。その舟木をわざわざ傷つける必要もないと、今回の仕事が”エキストラ的な役”であることを告げずに、誤魔化してやり過ごそうとしたのです。
しかし、現場の問題で撮影が一日遅れてしまう、舟木からは台本を督促されるなど、徐々にその問題に触れなければならない状態になってしまいます。今更告げづらくなってしまい誤魔化し続ける澤井は、次第に自分が心労を抱えていくことになります。さらに悪い事態は重なります。事務所から「舟木を今月一杯で解雇する」という連絡が入ります。
その新しい事実を含め、ますますどう伝えるべきか?に煩悶する澤井。しかし、病名を告げずに延命を続けていたようなものですから、時は訪れてしまいます。

撮影現場でエキストラ扱いを受ける舟木。尊敬する舟木のそんな姿を見て、心痛める澤井。
ちょっとした優しさだったハズのものが、己も相手もひどく傷つけてしまうのでした。
コミュニケーションとは本当に難しいモノですね。

普通という才気。怪優:大谷幸広


大谷と出会ったのは弊社で運営しているワークショップでした。その時から、面白いヤツがいるなぁと。その後、初めてのショートフィルム「MinestronE」に出演してもらいました。そして、玄理と共に「ハヌル」に出演してもらい、おかげで賞もいただきました。
僕の映画では一番多くの作品に出演している役者さんなんですよね。しかも、大谷は全部オーディションを通って決まっているので、僕と好みというか波長が合うのだと思います。なので最近は、あの年代の役を探している時に、ちょっと困ったときは頭のどこかで「本当にピッタリの役者が見つからなかったら、大谷がいる」と思っています。そのくらい僕にとっては、頼りになるヤツなんです。

澤井の役って、10人の中で最も「普通」な人。ちょっと優しい感じの、よくいる人です。その普通の人が、舟木に対して伝えられない悩みを抱えてしまっているだけなんです。ただし、その悩み自体が少しずつ自分の中で大きくなってしまっていき、気がついたら相手をものすごく追い詰める事態になってしまっていた。普通の人のその変遷をゆっくり追っていってくれたのが大谷です。

大谷の良さは、器用でカメレオン俳優的なところがあるのですが、それを大谷という世界にはめ込んで、普通に演じてしまうとこなのだと思います。李麗仙さんの芝居の圧を受けながらも、それを普通にこなしてしまうんですね。後半、舟木に胸の内をぶつけるワンカット長回しのシーンがあります。僕はこのシーン好きですし、観てくださった方にも、グッとくるシーンのひとつになっていると思います。そのシーンでは、李さん自身も大谷の演技を受けてより心情が表情に表れるという相乗効果になりました。他に、澤井での好きな部分は、ちょいちょい近藤さんが演じる桜木に巻き込まれる澤井のちょっとしたリアクション。桜木以外でコメディパートを持っているのも、澤井だけなんですよね。その辺りで近藤さんと呼吸を合わせてしまうところも、また”普通”なんだなぁ。

画像: 映画「ホテルコパン」予告編 youtu.be

映画「ホテルコパン」予告編

youtu.be

-公開まで、あと3日-

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