「ホテルコパン」
10人の壊れる日本人。と、その10人の怪優たち。
第6回 水田芙美子 as 資産家令嬢:大崎ひかる

監督の門馬直人です。
今日は劇場の上映チェックでした。公開まで、もうあと5日です。カウントダウンです。パーリィナイトです!2011年に企画を立ち上げてからの5年の月日が、あと5日後に陽の目を見るのですね。十月十日どころじゃない難産だったので、手がかかる子ほどかわいいものです。今日も劇中で描ききれなかった10人のキャラと怪優たちの見どころについて紹介していきます。

画像: 水田芙美子 as 資産家令嬢:大崎ひかる

水田芙美子 as 資産家令嬢:大崎ひかる


僕らは金に振り回される。

日本は貧しい国らしいです。GDPは世界3位ですが、国民の6人に1人が貧困だといいます。
貧困率を表す相対的貧困率という指標でいうと先進国であるOECD加盟34国中で第4位の貧困率。
さらにシングルマザー・シングルファーザー限定で比較すると、先進国第1位の貧困だというのですね。母子家庭に関しては平均所得以下が脅威の95.9%の数字を示していて、貧困でなくても低所得者が拡大しており、とにかく母子家庭と高齢者世帯が困窮している状況。生活の豊かさを測る指数はいろいろありますが、一人あたりのGDPだと日本は世界で27番目。アジアの中で7位。最も発達した国の一つといわれている割に低い順位です。すでに日本は世界でも有数の格差大国になっているのです。この状況は、第一に子供の貧困の問題を引き起こします。その結果は教育不足の問題を生み、就労の問題につながり、10年後の経済問題へ発展します。

その波はすでに年収500万円の平均的なサラリーマン層に押し寄せはじめているそうです。当然、10年以内に、600〜1000万円という中上流層にも影響するそうなのですね。
知ってます?90年代、ソニーやパナソニックなどの大企業正社員の平均年齢は30代前半でした。ところが現在は2社含め正社員の平均年齢が42〜45歳を超えています。企業内にまで高齢化が進んでいることを。そもそも大企業内ですら、退職者層と労働者層のバランスがとれてない状況で、今後の超高齢化が進み若年層が老人層を支えなければ成り立たない関係などはすでに破綻してしまっています。さらに待ち受ける若年層の経済破綻となればは、どんな未来を招くのでしょうか?想像するに、完全な負の連鎖です。
経済の破綻は、犯罪の増加を呼び起こします。金と犯罪は切っても切れない関係なのですから。

さて、映画の話をします。映画を観ていただいた後でなら、わかっていただけるかと思うのですが、このひかるという役を説明するのは、すごく難しい。ただ、劇中では語られてない裏設定がありますので、それをお伝えしたいと思います。

ひかるは資産家の令嬢。厳格な両親から自由を求めて家を飛び出し、教祖の段と出会い、教団への入会を求めているという役です。ここからが裏設定で、ひかるはこの段に会う前に、ちょっとした絶望と贖罪の意識を持っているのです。ひかるには好きな男性がいました。もともと好きだったわけではないのですが、一緒にいるうちに、この人だけはちょっと違うと思えるようになり、気がついたら好きになってしまっていたんですね。ひかるにとっては、はじめて本当に好きになった男性でした。しかし、その男性との間に金銭トラブルが起こってしまいます。
本当に好きなこの人となら一緒にやっていけるのではないかという想いと、金銭的な問題とに悩むひかる。そうこうしているうちに、その男性は突然失踪してしまったのです。男性が蒸発してしまったことに、心を痛めます。そして、失ったものの大きさにも気がつくのです。もしもあの時・・・。
そんな失望の想いと後悔への贖罪の想いが根底にあったため、教団という存在に心が惹かれたのです。

地味に大変な神経のコントロール 怪優:水田芙美子

ひかるの役を演じるのって、地味にけっこう大変なんですよ。洗脳されている感じってのが。まばたきしても良いけど、するならゆっくりとまばたきしてほしいとか、ただ座っていても動きを固定してほしいとか、水田にはいろいろ注文をしました。
まばたきみたいな人間の生理的反応をコントロールするのってすごく大変だと思いますが、水田はよくそれに応えてくれたなぁと今更ながら思います。また、洗脳がらみでのベッドシーンがあります。エロを撮りたかったわけではなく、段の洗脳としてのベッドシーン。このシーン、別に裸を見せなくても同じ印象のシーンは撮影できるとは思います。ただ、初監督として、なんかそういう逃げっぽいことをしたくなかったんですよね。で、絶対裸で撮ると決めました。「全然良いですよ」本人にとって初ヌードなのですが、すごく度胸がいいというか男らしい?というか、やはり女優なんだなぁと感心しました。このシーンで悩んだのは喘ぎ声ですかね。快楽としてのSEXではないけど、喘ぎ声は出るだろうと。ただ、そこに色気みたいなのは、あんまり感じさせたくないんだよねーみたいな曖昧なことを伝えただけなのですが、水田はそれも要求に応えてくれました。

そうそう、このベッドシーン、カメラを移動させて撮影していて、本当はもうちょっと全体が映る画角まで引いてるのですが、なんだか腰まで映るとレイティングがR-15になると映倫の審査で言われました。しかもR-15指定になる要素は、このカットだけといわれ、腰が映らなければPG-12ですと。初監督として、なんかそういう逃げっぽいことをしたくないと思ったのですが、「はい、じゃあ、腰の部分映らないように拡大します」と即座に答えていました。映画監督って複雑!

-公開まで、あと5日-

映画「ホテルコパン」予告編

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