「文字の力・書のチカラIII - 書の流儀 - 」展 出光美術館
〜〜2/14まで開催。
本展は2009年よりスタートしたシリーズ企画「文字の力・書のチカラ」の第三弾です。
奈良時代から現在に至る約1200年、わが国が育くんださまざまな芸術・文化の中で、書の美意識はどのように生み出され発展してきたのかー。初公開、未公開作品を交えた約80件の優品より、「書」をめぐる多彩な魅力を探ります。
今回のテーマは「流儀」。今日、一般に「書」とは筆文字全般をさす総合的な概念として理解されています。これに関連する分野として美術・芸術のみならず、文学・歴史・文化など多岐に亘っています。そして各分野が扱う資料の範囲や視点は、それぞれの「流儀」に基づいて互いに関わり合いながら、「書」の世界観を形成してきました。このように、「書」を取り巻く様相は、一見豊かに広がってみえますが、どこか混沌として感じられることも確かです。 そこで、本展では「書」の枠組を、6つの新たな視点から捉え直します。書体、書式、書風といった伝統的な基本ルールについて初歩から確認しつつ、さまざまな表現が伝播・継承する現象や、時代思想との関係にも触れながら解説します。出光美術館オリジナルの教科書スタイルで提案。今まで、わかりにくいと敬遠されてきた皆さんにも、「書」ってこんなに面白い?!、と振り向いてもらえる新春にふさわしい展覧会です。
「書」の鑑賞方法のコツを知る展覧会です
どこか高尚な印象が強く、敷居の高さが指摘される「書」の世界ですが、一口でいえば筆文字文化の総称と理解すれば緊張もほぐれるはず。
だからといって鑑賞するのに勝手気ままが通用する訳ではありません。
これまでも「文字の力・書のチカラ」シリーズではこの点を繰り返し訴え、都度、新たな見方、感じ方、捉え方、美しさを見極めるポイントなどを、わかりやすく紹介してきました。今回も、斬新な工夫とともに、もっと身近に感じられる会場となっています。
展覧会の構成
1.「書」の世界は、多彩
2.文人の流儀 -面影をうつし、語らう
3.墨跡の流儀 -墨戯・遊芸
4.古筆の流儀 -日本美の原点から
5.宮廷の流儀 -雅びの象徴と伝播
6.流転する流儀
1.「書」の世界は、多彩
理趣経種子曼荼羅(部分) 勝覚 保安3年(1122) 重要文化財 出光美術館蔵
現代における「書」の概念は多岐にわたっています。文学、歴史、そして美術・芸術といった学術的な諸分野が互いに関わり合い、重なり合いながら形成してきた世界です。
しかしこうした豊饒な状況が、入口をわかりにくくし、どこか堅苦しい印象を与えているようです。そもそも「書」の歴史は、筆文字の歴史を基本としています。かつては誰しもが日常で筆・墨・紙を用い、あらゆる場に応じた文字を手書きしていました。
文字を書き記す基本的な行為と、文字を素材として表現する営みとは不即不離の関係にある一方で、「書」の美しさを愛でる視点は、また別の世界の下にありそうです。
まずは多彩な「書」の世界をちょっとのぞいてみます。
2.文人の流儀 -面影をうつし、語らう
鳳輩道上詩 木戸孝允 明治元年(1868)
出光美術館蔵
漢詩・漢文に各々が抱く想いを寄せ、自身の人生観をそこに重ねては、心境を筆墨のチカラで蘇らせる――こうした書作スタイルは、かつて中国の文人的営みに倣ったものでした。また文人たちにとって、「書」における創意・工夫とは、書き手本人が大切にしていた哲学や思想を説く貴重な場でもありました。折々に書体・書風を変えるなどの工夫をもって挑むなど、自在な表現に親しんだ彼らの書は、自然と後継者たちへ伝播継承されています。
3.墨跡の流儀 -墨戯・遊芸
禅院額字「選佛場」 無準師範 中国・南宋時代 重要文化財 出光美術館蔵
古来、中国書法にいち早く触れながら、日本の書表現の発展を牽引してきたのは高僧たちでした。ただ、中国の「流儀」を学ぶのはそう簡単なことではありません。常に本格的な手本を見て学ぶような機会はほとんどなかった時代で、つねに間接的な情報によって憧れる存在に接近しようと願ったようです。こうした心の余白に空想が働くことで、表現上にゆるやかな変容をなしえた墨跡は、彼らの個性を自在に発揮させた世界です。
歴史上に、いわばサブカルチャー的な書表現の礎を築いた、彼ら独自の思潮を作品とともに探検します。
4.古筆の流儀 -日本美の原点から
継色紙 伝 小野道風 平安時代 重要文化財 出光美術館蔵
日本独自の書表現とされる「和様(わよう)」は、平安時代の半ば、小野道風(おののみちかぜ)、藤原行成(ふじわらのゆきなり)ら代表的な能書たちによって完成されました。
そののち飛躍的な発展をみたのが、仮名の世界でした。古筆にみる多種多様な表現美は、今なお、日本の書の典型と規範をなしています。
特筆すべきは『和漢朗詠集』を題材とした作品群にあります。漢字(漢詩)と仮名(和歌)の表情が見事な調和を果たすためには、温雅な「和様」の筆法と表情とは欠かせませんでした。王朝貴族たちの気品あふれる美意識は、平安時代の絵画・工芸に象徴されて語られますが、「書」の世界でもまた、それをよく理解していたことが、古筆の妙趣に見て取れます。
5.宮廷の流儀 -雅びの象徴と伝播
高野切第一種 伝 紀貫之 平安時代 重要文化財 出光美術館蔵
鎌倉時代には、宮廷内に能書の家が整備した口伝による「書」の流儀が存在していました。ただしこれはあくまで形式的な物に過ぎず、伏見天皇の御代を迎えます。伏見天皇は書に明るく、伝統美の典型となる平安古筆を手本として、わが国における書の美を技術的に検証し、「上代様(じょうだいよう)」を定着させた人となりました。これは平安時代を代表する能書たちによってなされた「和様」書法の、正統なる継承を意味しています。
こののち、時代の美意識は天皇や宮廷を中心にさまざまな個性を派生させながら、ゆるやかに移ろってゆきました。近代まで連なって認められる、いわば「宮廷様」とも言い換えうるような表現の様相を俯瞰します。
開館時間
午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
毎週金曜日は午後7時まで(入館は午後6時30分まで)
会期・開館時間等は都合により変更することがあります。最新情報は当ウェブサイトまたはハローダイヤル(03-5777-8600)でご確認ください。
休館日
毎週月曜日(ただし1月11日は開館)
入館料
一般1,000円/高・大生700円(団体20名以上 各200円引)
中学生以下無料(ただし保護者の同伴が必要です)
※障害者手帳をお持ちの方は200円引、その介護者1名は無料です
電話番号
ハローダイヤル
03-5777-8600(展覧会案内)