大賞は7年ぶりの待望作橋口亮輔監督「恋人たち」!
日本映画大賞は、橋口亮輔が監督を務めた「恋人たち」が受賞した。橋口監督は自身の経験を反映させたファン待望の7年ぶりの新作で、初の大賞を受賞することとなり、「作ってよかった」と述べた。 同作は第89回キネマ旬報ベスト・テン日本映画ベスト・テン第一位、第39回日本アカデミー賞新人賞を受賞、さらに他にも第30回高崎映画祭、第37回ヨコハマ映画祭でも賞を獲得している。
劇場公開でも大きな話題を呼んだが、今回の受賞ラッシュにて再度注目を浴びることとなった。『恋人たち』の公式サイトのトップページには、受賞した映画賞を掲載している。さらに、上映劇場のテアトル新宿のポスターにも、受賞ごとにアヒルをあしらって盛り上げている。まだ見てない映画ファンには是非チェックしてもらいたい。
塚本晋也監督「野火」は監督賞と主演賞の2冠!
「野火」の塚本晋也さんは監督賞と男優主演賞の2冠となった。塚本晋也監督作品もこの毎日映画コンクールにては初受賞となり、「監督、主演というよりも、作品に全身で取り組んだ」と語る。
大岡昇平さんが小説にした、第二次世界大戦フィリピン戦線における日本軍の苦しい彷徨いを映画にした本作について、監督自身は以下のように語っている。
映画は一定の思想を押し付けるものではありません。感じ方は自由です。しかし、戦争体験者の肉声を体にしみ込ませ反映させたこの映画を、今の若い人をはじめ少しでも多くの方に見てもらい、いろいろなことを感じてもらいたいと思いました。そして議論の場に使っていただけたら幸いです。
黒沢清監督作品「岸辺の旅」も優秀賞にて受賞!
同作品が国内外の賞を受賞するのは、第68 回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門 監督賞、キネマ旬報ベストテン主演女優賞に続き三度目となる。本作では、夫婦役での共演は初となった深津絵里と浅野忠信をW主演に迎え、“愛する夫婦の再会と別れ”を描いた究極のラブストーリーだ。
深津は黒沢監督と初顔合わせ、浅野は「アカルイミライ」以来12年ぶりの黒沢組参加となった。
誰もが体験するであろう”愛する人との別れ”についての切ない作品であるが、誰もみたことがないような映画に仕上がっている。
スポニチ新人賞は松永大司監督「トイレのピエタ」の野田洋次郎!
日本アカデミー賞新人俳優賞にも選ばれている野田さんは「びっくりしました。自分ではない人生に深く潜り込む体験から戻るのには時間がかかった」と振り返る。演技初挑戦にして映画初主演を飾った「トイレのピエタ」は手塚治虫の病床日記に着想を得たオリジナルストーリーで、野田は余命3か月を宣告された若者を演じた。
本作のメガホンをとった松永大司監督は大学卒業後、映画「ウォーターボーイズ」や「ハッシュ!」などの俳優の道を進んだのちに、2010年に性同一性障害を抱える現代アーティスト・ピュ~ぴるのドキュメンタリー映画「ピュ~ぴる」にて注目され、本作は劇場長編映画としてはデビュー作である。松永監督の今後の作品にも期待していきたい。
また、是枝裕和監督作品の「海街diary」で、綾瀬はるかさんが女優主演賞、長澤まさみさんが女優助演賞を受賞している。外国映画ベストワン賞にはアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」が選ばれた。
アニメーション映画賞を受賞したのは、原恵一の「百日紅~Miss HOKUSAI~」。ドキュメンタリー映画賞にはジャン・ユンカーマンの「沖縄 うりずんの雨」が選ばれ、坂本龍一さんが山田洋次監督作「母と暮せば」で音楽賞を受賞。そして、田中絹代賞が、桃井かおりさんに贈られる。
第70回毎日映画コンクール(詳細)
日本映画大賞 「恋人たち」
日本映画優秀賞 「岸辺の旅」
外国映画ベストワン賞 「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」
監督賞 塚本晋也「野火」
脚本賞 原田眞人「駆込み女と駆出し男」
男優主演賞 塚本晋也「野火」
女優主演賞 綾瀬はるか「海街diary」
男優助演賞 加藤健一「母と暮せば」
女優助演賞 長澤まさみ「海街diary」スポニチグランプリ新人賞
スポニチ新人賞 野田洋次郎「トイレのピエタ」 藤野涼子「ソロモンの偽証 前篇・後篇」
田中絹代賞 桃井かおり
撮影賞 藤澤順一「ソロモンの偽証 前篇・事件」「ソロモンの偽証 後篇・裁判」
美術賞 原田哲男「日本のいちばん長い日」
音楽賞 坂本龍一「母と暮せば」
録音賞 小川武「恋人たち」
ドキュメンタリー映画賞 「沖縄 うりずんの雨」
アニメーション映画賞 「百日紅~Miss HOKUSAI~」
大藤信郎賞 「水準原点」
TSUTAYA映画ファン賞 日本映画部門 「幕が上がる」
TSUTAYA映画ファン賞 外国映画部門 「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」
特別賞 櫛桁一則(「シネマリーン」支配人) 橋本忍(脚本家)
2月16日午後2時から約30分間、表彰式の前に受賞者によるオープニングセレモニーを催します。会場は川崎市幸区のミューザ川崎内光のブリッジ。受賞者らの喜びの姿をどなたでも観覧できます。
近年の毎日映画コンクール受賞作品
2014年(第69回)『私の男』
2013年(第68回)『舟を編む』
2012年(第67回)『終の信託』
2011年(第66回)『一枚のハガキ』
2010年(第65回)『悪人』
毎日映画コンクールは、戦後間もない1946年に開催されて以来今年で70回目の節目を迎えた。歴史のある映画賞として有名である。