今回、取り上げた二作品「消えた声が、その名を呼ぶ」「最愛の子」には共通点がある。
どちらも子供と引き裂かれた親が執念で再会をはたすという“母をではなく、子供を捜して三千里”的なテーマをもつことだ。
加えて二作品とも長く、そして同じ会社が配給していることも共通しているが、それはまあ映画の本質とは関係がない。


「消えた声が、その名を呼ぶ」はトルコ系ドイツ人ファティ・アキンが監督した作品で、今から百年前、第一次大戦中の1915年、オスマン・トルコに住むアルメニア人はトルコ人に迫害されていた。鍛冶職人ナザレットには優しい妻とかわいい二人の娘がいたが、政府はアルメニア人の隔離政策を始め、成人男子はまるで奴隷のように苦役作業にかり出され、女子供は劣悪な環境の難民キャンプに閉じ込められる。

画像1: (c)Gordon Muhle/ bombero international

(c)Gordon Muhle/ bombero international

画像2: (c)Gordon Muhle/ bombero international

(c)Gordon Muhle/ bombero international

画像3: (c)Gordon Muhle/ bombero international

(c)Gordon Muhle/ bombero international

ナザレットは道路工事として数年酷使され、その間に多くの仲間が死んでいった。彼ものどをナイフで刺され声を失ったものの、それでも生き残った。
難民キャンプにたどり着き、瀕死の姉から妻の死と娘の消息を聞きだす。二人の娘の行方を追って、彼はアレッポからキューバ、アメリカのミネアポリス……と地球を半周するほどの長く苦しい旅を続けていく。
 過酷な旅の重要ポイントで、彼を助けてくれる人が現れ、娘の居所の情報を入手できるのは、いささか都合よすぎると思わざるを得ない。とはいえ、トルコに住むアルメニア人の悲劇、中東におけるイスラム教徒とキリスト教徒との関係、アメリカ人によるネイティヴ虐待といった人種差別の描写を盛り込み、娘の生存を信じるナザレットの信念、親子の情愛と絆の強さはひしひしと伝わってくる。

家族が幸せに暮らしていた冒頭部分を除いて、あとは草もちょろちょろとしか生えていない荒野、茫漠たる砂漠、寒々とした僻地がほとんど。
風景が象徴的に使われ、その中でタハール・ラヒム扮するナザレットがよろよろと歩き続けるさまには、精神の強さがにじみ出ているようだ。

画像4: (c)Gordon Muhle/ bombero international

(c)Gordon Muhle/ bombero international

『消えた声が、その名を呼ぶ』予告 12月26日(土)公開 角川シネマ有楽町 YEBIS GARDEN CINEMA ほか

youtu.be

12月26日より角川シネマ有楽町、
YEBISU GARDEN CINEMAなど全国公開ロードショー

This article is a sponsored article by
''.