映画『黄金のアデーレ 名画の帰還(原題: Woman in Gold)』
ナチスに奪われた世界的に有名なグスタフ・クリムトの名画「黄金のアデーレ」を取り戻すため、オーストリア政府を相手に返還訴訟を起こした女性の実話を基に描いた人間ドラマ。
肖像画のモデルとなった女性の姪で、戦争に運命を翻弄された実在の主人公をオスカー女優ヘレン・ミレンが好演する。
彼女とタッグを組む弁護士に『[リミット]』などのライアン・レイノルズが扮し、『ラッシュ/プライドと友情』などのダニエル・ブリュール、ケイティ・ホームズらが共演。『マリリン 7日間の恋』などのサイモン・カーティスがメガホンを取る。
静かな感動に包まれて、自然に涙が流れたよ。実話ということで歴史の重さも感じた…。
まず何より構成が素晴らしい。法廷モノの地味な展開と思いきやスリリングな展開で全く飽きさせない。名画にまつわる主人公の家族の歴史、主人公と新米弁護士が2人で挑む法廷闘争が巧みに絡み合い、さらに過去と現代、オーストリアとアメリカという時空も絡ませてくる。そしてさすがのヘレン・ミレン。快活で頑固でユーモアと毒舌に溢れた女性を軽快に演じて、とにかくカッコイイ。珍しい役を演じたライアン・レイノルズとの会話も活き活きしててキュートで良かった。母子というより祖母孫ほどだけれどチャーミングな2人だね。
監督の演出は全体的には柔らかく温かい雰囲気で上品で美しく、現在や過去を色調で際立たせたり(回想も実に自然で素晴らしい)、アップを多用して演技や台詞をじっくり見せたり、身も心も引き込まれた。そしてハンス・ジマーの音楽がいつもの超重厚な感じではなく、優しさと温かさに満ち溢れた素晴らしい音楽だ。
結末はタイトルからも史実からもわかっているんだけれどね…ラストで主人公が吐露した名画を取り戻すことに込められた気持ちや想いは心に響いて、涙が溢れた…。
ちょうど先日観たばかりのジョージー・クルーニーの『ミケランジェロ・プロジェクト』も美術品の強奪というナチスの罪悪を取り上げた実話に基づく作品だけれども題材は同じでもテーマや作品の趣が全然違うんだよね。
戦後70年を迎えた今年、本作も含めて、邦画も洋画も様々な形で戦争を振り返る作品が多かった。まだ戦争が終わってない人もたくさんいるんだということを改めて思ったなあ。
シネフィル編集部 あまぴぃ