ビデオアートの歴史とビデオインスタレーション
ビデオアーティストとして知られるナム ジュン パイクが、ドイツのパルナス画廊で、1963年に最初の個展「音楽の展覧会-エレクトロニック ・テレビジョン」を開催したのが、世界で最初のビデオアート作品といわれています。
その際には、13台のテレビ受像機(テレビモニター)を使用しています。
1970年にビデオアートの制作を始めたアメリカのビル ヴィオラや、同じくアメリカのゲイリー ヒル、日本では1951年に結成した「実験工房」のメンバーでもあった松本俊夫、ニューヨークの国際的前衛芸術運動の「フルクサス」に参加していた久保田成子、寺山修司の「天井桟敷」に在籍していた安藤紘平、実験映画の飯村隆彦、日本のビデオアートを牽引してきたアーティスト出光真子、山本圭吾、中島興、中谷芙二子等によって、数多くのビデオアート作品が制作されてきました。
1990年代以降になると、投影機である液晶プロジェクターの普及とともに、展覧会の空間全体を作品化して体験させるビデオインスタレーションが、YBAs(ヤングブリティッシュアーティスト)、韓国出身のキム スージャ、スイス出身のピピロッティ リスト、イラン出身のシリン ネシャット、アメリカのダグ エイケンなど、世界中のアーティストによって、数多く制作されるようになりました。
日本におけるビデオアートの展覧会
1972年にソニービルで開催された日本で最初のビデオアートの展覧会「Do It Yourself Kit」以降、前述のナム ジュン パイクやビル ヴィオラも参加した1978年の「X International Open Encounter on Video Tokyo '78」から、ビデオアートの展覧会が広がりました。
中谷芙二子が1980年ビテオギャラリーSCANを設立後、1987年、1989年、1992年に青山スパイラルにて「Japan ビデオ・テレビジョン・フェスティバル」を開催しました。
また山本圭吾の出身地である福井県では、1985年から1999年まで「ふくい国際ビデオビエンナーレ」が開催されました。
美術館やギャラリーにおいても、ビデオアートの展覧会がその後も増え、2009年には東京都写真美術館で、第1回恵比寿映像祭「オルタナティヴ・ヴィジョンズ」が始まり、現在まで続いています。
海が運ぶ大陸、異国の文化
海と陸の境は「海岸線」と呼ばれます。潮の満ち引きにより、水のある海と陸との境界は、絶えず変わります。
日本の海図では満潮の時の海と陸の境目を、「海岸線」と位置づけています。
古来では、海は様々な異国の文化と、人々を運んできました。
九州の玄関口でもある博多は、古来より「博多津」と呼ばれ、律令制における大宰府の外港になります。
平安時代の1161年に平清盛により建設された日本初の人工港「袖の湊」が建設され、一説には博多の語源として、「土地博(ひろ)く人、物産多し」がいわれています。
イタリアのヴェネツィアと同様に、中世においては、商人による合議制で治められた日本初の自治都市として栄えました。
他方では、文化都市の側面もあり、昭和初期には喫茶店「ブラジレイロ」が文学サロンとなり、火野葦平、山田牙城、夢野久作、原田種夫といった作家の面々が常連でした。
Local Prospects―海をめぐるあいだ
博多港にほど近い天神地区にある三菱地所アルティアムは、1989年4月に開館以来、多くの現代美術の企画展を開催してきました。
「Local Prospects―海をめぐるあいだ」は、三菱地所アルティアムの、九州沖縄と周辺地区を拠点としたアーティストに焦点を当てたシリーズの展覧会です。
かつて「大地の魔術師たち」展が、ジャン ユベール マルタンのキュレーションによって、1989年にポンピドゥーセンターで開催されました。
ここでは、異文化のポストコロニアルといったアプローチがありましたが、オリエンタリズムといったローカリティではなく、「Local Prospects」は、将来性を意味します。
出展アーティストは、海女の古い歴史をもつ玄海と黒潮文化からインスピレーションを得て、制作を続ける山内光枝(やまうちてるえ)、沖縄の地で海を主題にしながらも、政治的かつ多様な解釈と叙情性をもたらす山城知佳子(やましろちかこ)、台湾やアジアの、現実世界と物語世界が折り重なる記憶を再構築する許家維(シュー ジャーウェイ)の3人です。
それぞれが織りなすビデオインスタレーションの海を巡る物語は、海が決して「境界」ではなく、人をつなぐ様々な「あいだ」として存在することを教えてくれます。
現代のビデオインスタレーションが切り開く表現の多様性と、コンセプチュアリズムは、成熟したネオコンセプチュアルアートのバーチャルリアリティ(仮想現実)の新しい感覚をもたらします。
映像を通して、浮かび上がってくるのは、鑑賞者が体験する「今、ここに存在している状態」であり、あらゆる創造の源泉ともなる場であり、瞬間的に人生を変容できる場です。
三菱地所アルティアムの「Local Prospects」シリーズには、これからも注目です。
Local Prospectsー海をめぐるあいだ 概要
会 期:2015年11月14日~12月6日
休館日:なし
開館時間:10:00〜20:00
入館料:当日券:一般 ¥400 学生 ¥300
会 場:三菱地所アルティアム
福岡市中央区天神1-7-11 イムズ8F
phone 092-733-2050
e-mail info@artium.jp
出品アーティスト:山内光枝 山城知佳子 許家維
公式サイト:http://artium.jp/exhibition/2015/15-07-local/
主 催:三菱地所 三菱地所アルティアム、西日本新聞社
後 援:福岡市 福岡市教育委員会 (公財)福岡市文化芸術振興財団
企画協力:Fukuoka Art Tips 岩切澪
協 力:Yumiko Chiba Associates LIANG GALLERY 九州大学上岡研究室
「Local Prospects」関連イベント
特別上映会+アフタートーク
「うんじゅぬ花道」(2013年/20分)、「うちなー芝居 舞台の美術」(2014年/40分)
監督・脚本:砂川敦志、山城知佳子
企画製作:水上の人プロダクション
日時:2015年12月4日(金) 18:30開場 19:00開演
会場:あじびホール(福岡アジア美術館内/福岡市博多区下川端町3-1リバレインセンタービル8F)
入場料:1,000円
上映作品情報
『うんじゅぬ花道』(2013年/20分)
フィルムツーリズム振興及び県内のクリエイター発掘・育成のため平成20年度よりOCVB沖縄フィルムオフィスが実施する「沖縄映像コンペティション短編映画企画募集」により製作された短編映画。
国立劇場おきなわ協力。
キャスト:神谷武史、神谷武之心、知花小百合、嘉数道彦、眞境名正憲、海勢頭あける
監督:山城知佳子・砂川敦志
コピーライト:2013 Okinawa Convention & Visitors Bureau, CMC, All rights Reserved.
『うちなー芝居 舞台の美術』(2014年/40分)
キャスト:新城栄徳ほか、沖縄芝居役者
監督:山城知佳子・砂川敦志
企画製作:水上の人プロダクション
三菱地所アルティアム 次回展覧会「KIGI EXHIBITION in FUKUOKA」cinefilチケットプレゼント!
ご提供組数 5組10名様
下記の必要事項、読者アンケートをご記入の上、三菱地所アルティアムチケットプレゼント係宛てに、Eメールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、記名ご本人様のみ有効の、チケットをプレゼントいたします。
チケットは、非売品です。
転売業者などに入手されるのを防止するため、ご入場時他に当選者名簿との照会で、
公的身分証明書でのご本人確認をお願いすることがあります。
応募先Eメールアドレス
info@miramiru.tokyo
応募締め切りは2015年12月6日 日曜日
記載内容
1.氏名<※必須>
2.年齢<※必須>
3.当選プレゼント送り先住所(応募者の電話番号、郵便番号、建物名、部屋番号も明記)<※必須>
4.ご連絡先Eメールアドレス、電話番号<※必須>
5.記事を読んでみたい監督、俳優名(複数回答可)
6.読んでみたい執筆者(複数回答可)
7.連載で、面白いと思われるもの(複数回答可)
8.連載で、面白くないと思われるもの(複数回答可)
9.シネフィルへのご意見、ご感想、などのご要望も、お寄せください。
また、抽選結果は、当選者への発送をもってかえさせていただきます。
森秀信 プロフィール
1966年長崎市生まれ。
武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻修了後、現代美術センターCCA北九州リサーチプログラム修了。
主に現代美術の創作活動の他、展覧会のキュレーションやワークショップの企画を担当。専門は現代美術。