北国の帝王(ロバート・アルドリッチ 73)
1933年の大恐慌時代。汽車にただ乗りして旅をする放浪者の男(ホーボー)と、そうはさせまいとする鬼車掌。男同士のプライドをかけた死闘、2時間ワクワク出来る男気満載の映画です。
登場する人間たちはそれぞれクセがあり、全員のキャラクターが見事に立っています。どいつもこいつも愛さずにはいられない奴らです。
ホーボーの中で北国の帝王と呼ばれるナンバーワン(リー・マーヴィン)、無賃乗車摘発に命をかける車掌シャック(アーネスト・ボーグナイン)、真面目に仕事をしているのにシャックに怒鳴られてばかりの可哀想なブレーキ係。機関士や石炭炊きにとってナンバーワンとシャックの戦いはどうでもいいのに、巻き込まれてしまう気の毒な人たちです。
僕が中でもお気に入りなのが、口先ばかりで頭が悪くて腰抜けなシガレット(キース・キャラダイン)。最後まで本当にどうしようもない役立たずというのが素晴らしいです。ナンバーワンはなんでも軽々とこなしてしまうけど、シガレットのヘボさのおかげで実際にやるのがどんなに大変かが分かります。その辺を見せる意味でも大事な役柄です。
ナンバーワンの無賃乗車のために見せる数々の技と頭の回転の速さは、この映画の見所の一つです。レールにグリスを塗って走ってくる汽車の速度を落としたり、屋根に乗っているときにはズボンのベルトを使って身体と列車を固定したり、その場にあるものをなんでも臨機応変に利用してしまう。
ナンバーワンに惚れずにはいられないのが、汽車の給水塔に予告無賃乗車を書くところです。大胆不敵、男気溢れ過ぎな場面です。そしてナンバーワンが最後にシガレットに言う台詞、「お前は向こうっ気だけで心がねえ!」に痺れます。兄貴一生付かせてください!という気持ちになります。
オープニングでシャックにより、礫死体になってしまったホーボーを見せる場面があります。このとき、カントリー調の音楽が使われます。この行為がシャックの中では正当化されるということを表現し、シャックの価値観が表現されます。
シャックが、ホーボーを痛めつけて叫び声を聞いて、ニタニタとサディスティックな笑みを浮かべる姿は、完全に趣味の世界に走っています。家族がいたとしたら嫌われているのかな、それとも家では良いパパだったりするのでしょうか。
いつかスクリーンで観たい映画の一本です。
監督: ロバート・アルドリッチ
出演: リー・マーヴィン, アーネスト・ボーグナイン, キース・キャラダイン, チャールズ・タイナー
原題: EMPEROR OF THE NORTH
販売元: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
価格: 3.990円
発売日: 2009/03/06
時間: 121 分
製作年・製作国: 1973年 アメリカ