日本でも10月22日から開催される第28回東京国際映画祭オープニング作品として上映が決定した『ザ・ウォーク』。
それに先立ちロバート・ゼメキス監督が来日し<天空>記者会見を実施。
1985年『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、1994年『フォレスト・ガンプ/一期一会』、
2000年『キャスト・アウェイ』、2012年『フライト』。常に“最先端のVFX技術”を活かした映像で世界中を驚きと感動で魅了してきたロバート・ゼメキス監督の、“集大成”であり“最高峰”ともいわれるこの『ザ・ウォーク』すでに、第53回ニューヨーク映画祭オープニング作品として初披露され、辛口のNY批評家たちを驚愕と興奮の渦に巻き込みました。
来日記者会見
MC:本日は『ザ・ウォーク』ロバート・ゼメキス監督来日記者会見に
お越しいただきましてありがとうございます。
NYのワールドトレードセンター間を直径2.2cmのワイヤーロープでつなぎ、高さ411m、地上110階の道なき空間を歩きたいと願った男、フィリップ・プティ。
彼の信じられないような天空の実話を基に、大迫力の3D映像で型破りなエンタテインメントに仕上げたのが、『ロジャー・ラビット』でアニメと実写を合体させ、『コンタクト』では宇宙の果てをビジュアル化し、『ポーラー・エクスプレス』ではパフォーマンス・キャプチャーをCGアニメーションで取り入れるなど、映像表現の可能性を切り拓いてきたロバート・ゼメキス監督です。
本日はそのロバート・ゼメキス監督と、『ポーラー・エクスプレス』からタッグを組んでいるプロデューサー、ジャック・ラプキーも来日し、高さ200m以上のこのツインタワーの屋上にて天空記者会見を行う運びとなりました。それではさっそくお呼びいたしましょう。
ジャック・ラプキープロデューサー、ロバート・ゼメキス監督です!
まずはご挨拶をお願いいたします。
ラプキー氏:プロデューサーのジャック・ラプキーです。
この作品を携えて日本に来ることができてとても嬉しく思っています。
日本の皆様、伝統、映画を深く愛しています。お招きいただき光栄です。
ゼメキス監督:今日はみなさんこの場所にお越しいただきありがとうございます。
日本に招かれるチャンスがあれば必ず行くようにしているんです。
大変嬉しく思っています。
MC:とにかくラスト20分の圧倒的な迫力と怖さにいまでも足が震えるのですが、
この映画を企画した時から、あの体感映像を撮ることは決めていたのでしょうか。
ゼメキス監督:体感映像と仰っていただきましたが、それがこの作品を撮った理由のひとつです。
この興奮は他の芸術では表現できない、映画であればこのスペクタクルを描けると思いました。
プティの物語を知った時ももちろんですが、とてもワクワクしました。
ラプキー氏:この企画はロブ(ゼメキス監督の愛称)が一冊の本を見つけた事から始まりました。
それはたった18ページの絵本です。彼はそこに描かれているのものが
熱く心に響く物語だと言い、映像化のビジョンが見えていると話しました。
彼がそう言うなら、絶対に面白いものになると思ったんです。
MC:ありがとうございました。ではこれより質疑応答に入ります。
質問のある方は挙手をお願いいたします。
Q:ゼメキス監督に質問です。主人公フィリップ・プティは、崇高なヒーローではなく
普通ではない危険な男、とてつもなく危険なことに命を懸ける、ちょっと狂った男として
描かれているように思いました。彼のキャラクターに惹かれた理由を教えてください。
ゼメキス監督:彼にはアーティストとしての情熱があります。
自分のクリエイティブな部分を表現せずにはいられない、だからやるしかない、
そういった部分に私は惹かれました。彼の作品は確かに極端で、狂気を感じる所はありますが、
みなさんにも似た部分があるのではないでしょうか。
Q:ゼメキス監督に質問です。ジョセフ・ゴードン=レヴィットは日本でもとても人気のある
いま旬な俳優ですが、数多くの名優を演出してきたゼメキス監督から見て彼はどんな俳優ですか。
ゼメキス監督:ジョセフは素晴らしい俳優で、肉体をとても上手に使うんです。
役のために自分の肉体を変化させるタイプですね。彼はワイヤーロープも自分で歩きたいと言いました。
役者やアーティストの気概を物語る良い例が彼だと思います。
なるべくフィリップ本人から役を吸収したいと言って、2人は一緒に長い時間を過ごしました。
それにフランス語も完璧なんですよ!
Q:お二人に質問です。ラストシーンの美しいツインタワーがとても印象的で、フィリップだけでなく、
ワールド・トレード・センターも主人公のような印象を受けました。
お二人のワールドトレードセンターへの想いをお聞かせください。
ラプキー氏:私はニューヨーク出身で、プティがあの挑戦に挑んだ時もニューヨークにいました。
ワールドトレードセンターはアメリカのシンボルの様なものです。
9.11という事件はみなさんの中に残像の様に残っている事と思います。でも映画の中でそれを回帰させる様な演出はしたくなかった、
みなさんが個々に考えてくれればいいと思ったからです。
ロブはフィリップと同様に、あのツインタワーに名誉と愛情をかけ、キャラクターのひとつとして描きました。
最後のシーンは監督の愛情が込められた素晴らしいショットになっています。
アメリカをはじめ、世界が愛したもの、そして今はないものが美しく映し出されました。
ゼメキス監督:全く同感です。フィリップ本人と話す時、彼はあのツインタワーを
まるで生き物のように、アートを描く上でのパートナーのように話していました。
だから自分もそういう目線で描くのが一番良いと思いましたし、
フィリップの目を通したタワーを描いたつもりです。
Q:なぜこれほど過去の物語を題材に選んだのでしょうか?
ゼメキス監督:私にとって、実話をベースにした作品は今回が初めてです。
当時起きたことにとても惹かれたからなのですが、1974年にプティがしたいと思ったことは
あの時代ならではの事だったのではないかと思いました。
まだ我々がとても無垢だった時代、アーティスト達が今よりも大胆な表現に挑戦していた時代を
描く事で、現代に生きる我々に反映できるものがあるのでは、と感じました。
Q:ロバート・ゼメキス監督の古い友人であるマーティン・マクフライさんと、
エメット・ラスロップ・ブラウンさんお二人が過去から本日2015年10月21日にやってきて、大変な目にあう予定ですが、そんなお二人にゼメキス監督から友人としてメッセージをお願いします。
ゼメキス監督:そうですね、時空をいじるな、壊すなと、そう伝えたいと思います(笑)
今日は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』DAYですからね。そんな日にここにいる事が出来て嬉しいです。
30年という時は本当にあっという間でした。
Q:ゼメキス監督に質問です。常に時代の先端技術を使って新しい映像世界を切り開いていますが、
その臭覚はどのように培われたのでしょうか。
ゼメキス監督:自分はその時使えるツールを全て使って映画作りを楽しんでいます。
技術的なアートを用いて、ストーリーを伝えているだけなんです。このエフェクトを使うために、この展開…と先に考えてはいません。
伝えたいものを良い形で伝えるために技術の力を借りています。
Q:フィリップ・プティさんとご自身の共通する点はありますか?
ラプキー氏:フィリップはアートに大きな愛情を持っています。
あんな高いところをその身ひとつで歩くという危険な事をしたのは狂気の沙汰ですよね。
自分はプティのように命の危険を感じるような経験はありませんが、
映画作りには大きな粘り強さが必要で、それはワイヤーの上を歩いている時のような気持ちです。
急に落ちてしまうかもしれない、そういう経験はしています。
ゼメキス監督:どんなプロジェクトにもリスクがつきものです。
私はフィリップの楽観主義な所が好きで、同時に共感もしています。
アートに対する喜びを感じるのは、作り上げた時ではなく、作るまでの過程にあります。
そういうクリエイティブな面でフィリップと同じものを感じるんです。
Q:ゼメキス監督は絶えず映像の新しい挑戦をされていますが、
今後監督が思い描くご自身のキャリアの行方と、映画の未来についてどのように
考えていらっしゃるのかお聞かせください。
ゼメキス監督:みなさんが許してくれる限り、これからも映画作りをしていきたいと考えています。
デジタルテクノロジーがどんどん進化し馬力を強くしていく事で、より効率的に、経済的に
映画作りが出来るようになります。
私は、映画はストーリーやキャラクターのために作られるべきものだと思っていますので、
そういった技術を駆使し、より良き作品が作られていくのではないかと思っています。
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ロバート・ゼメキス (監督/共同脚本/製作)
1985年に公開された映画の中で売り上げNo.1となった『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の
脚本と監督を務め、アカデミー賞とゴールデングローブ賞のオリジナル脚本賞にノミネートされた。
その後、『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』と『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3』 を手掛け、映画史上最大のヒットシリーズを完成させた。 そして大ヒット作『フォレスト・ガンプ/一期一会』ではアカデミー賞、ゴールデングローブ賞そして全米映画監督組合の監督賞を獲得。最近では主演したデンゼル・ワシントンがアカデミー賞にノミネートされた『フライト』を監督。
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【概要】
1974年、当時世界一の高さを誇ったワールドトレードセンター、
NYにそびえ立つ摩天楼の中でも王者と呼ぶにふさわしい荘厳なツインタワー。
この間をワイヤーロープ一本でつなぎ、命綱なしの空中闊歩にある男が本当に挑んだ。
その男とはフィリップ・プティという。
この伝説の男プティ役には「インセプション」で注目された若手実力派俳優、
ジョセフ・ゴードン=レヴィットが演じる。不可能にも思えるこの男の挑戦は
紛れもない実話であり、記録としても残っているが、なんと映像には残されていない。
まさに実話を完全映像化したといえる本作、
そう、この映像は、誰もが<100%未体験>である。
なぜなら、この体験をした人間はフィリップ・プティ、世界でたった一人だけなのだから――
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『ザ・ウォーク』
原題:The Walk
原作:「TO REACH THE CLOUDS」 by フィリップ・プティ
監督:ロバート・ゼメキス
出演:ジョセフ・ゴードン=レヴィット、ベン・キングズレー、
シャルロット・ルボン、ジェームズ・バッジ・デールほか
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント