映画『ヒトラー暗殺、13分の誤算(原題: Elser)』
ある男が単独でナチスドイツの独裁的指導者アドルフ・ヒトラーの暗殺を企てた史実を基に、男が犯行に至る過程や処刑が延びた理由など数々の謎に迫る戦争ドラマ。
男の犯行までの生活と囚われの日々を交錯させ、過激な犯行に及んだ男の心理や、第2次世界大戦直後から終戦直前まで男を生かしたナチスの狙いを紐解いていく。
監督は『ヒトラー ~最期の12日間~』などのオリヴァー・ヒルシュビーゲル。『白いリボン』のクリスティアン・フリーデル、『コーヒーをめぐる冒険』のカタリーナ・シュトラー、『コッホ先生と僕らの革命』のブルクハルト・クラウスナー。
主人公の勇気と信念が胸に迫るとともに、独裁政権の恐ろしさに戦慄する。
100年も経ってないのよね…。ああ恐ろしい。冒頭でヒトラー暗殺は失敗に終わって、ゲシュタポの激しい拷問による尋問と主人公のそれまでの人生が交互に描かれる。
強い政治的思想もなく、所属組織もない彼は、とにかく自由を奪われるのがイヤだったのかな?
普通に幸せを求めたに過ぎないんだろうけれど、ミステリー的に詳細な動機や計画(本当に単独犯なのか? )が描かれるわけではなく、見たくもない拷問シーンが容赦なく映し出されて辛くなる…。動機がイマイチわからないままなのでモヤモヤするのよね。動機に繋がりそうなエピソードはいくつも描かれてるから、それらの積み重ねなのかもしれないんだけれど…。
挨拶が「ハイル・ヒトラー」という異常な時代とそれを異常と思わずにナチス化していく街というか人々のリアルが怖かった。要所要所に実際の映像を使ってるあたりといい、現在と過去の繋げ方が上手な感じといい、爆発シーンの超~ロングショットといい、全体的にモノクロ風の画質の色合いというか空気感といい、控え目な演出がボクらに考える余地を与えてくれて素晴らしいね。
後半の残酷シーンの長回しも映画としては好きだなあ。もう二度とそんな時代が来ないことを祈りたくなる作品。
シネフィル編集部 あまぴぃ