『雪の女王』(レフ・アタマーノフ 57)

 1957年にソ連で製作されたカラーアニメーション映画。心優しい少女ゲルダが、雪の女王にさらわれた幼じみの少年カイを助けに行く旅を描いた映画です。8年ほど前、渋谷にあった映画館シネマアンジェリカで再上映されました。

ヒロインのゲルダは、過剰なぐらいの優し過ぎるやさしさを持つ人ですが、それが鼻につかない不思議な映画です。ゲルダが劇中で、助けてくれた人たちによく使うスパシーバ(ありがとう)という台詞も、使い過ぎなんじゃないかと思うけど口説くならない。
 作り手たちが本気で人間を信じて、この映画を作っているから、観る側も白けれることもなく言葉を受け止められるのではないでしょうか。

画像: http://yukiusagi.air-nifty.com/caetla/2011/09/post-186d.html

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 雪の女王の宮殿でカイが、氷の結晶を見て「何という正確さ!間違った線は一つもない」という場面は考えされました。正確で正しいことを言葉で言われると反論しづらいです。でも正論を武器にして、正論に反した無駄と思われることを省いていくと、どんどんと生きる力が失われていくことになる。それはミヒャエル・エンデの『モモ』に登場する時間泥棒を思い出します。
 ゲルダが持つ生命力の強さと思いの強さが、旅の途中会う人々が彼女に助けずにはいられない、自分たちが変わらずにはいられない。同時に色んな人に迷惑をかけながら生きるのが人生なんだなと教えられる映画です。

 ところでこの映画は吹き替え版を子供の頃に見たのですが、子供心に吹き替えられた声がぎこちなく聞こえて、違和感を持ちながら観たのを覚えています。どんなに声優さんが上手くても言葉を発するときに起きる身体の動き、そして音楽とも微妙にずれるのが気になったのだと思います。

 字幕は様々な制約があって、要約した言葉になりがちだし、時折あれ?と思うような字幕もありますが、それでもその国の言葉で見るほうが僕は好きです。

雪の女王 新訳版

youtu.be

監督: レフ・アタマノーフ
出演: Y・ジェイモー A・カマローワ M・ババノーワ
原題: СНЕЖНАЯ КОРОЛЕВА
販売元: ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
価格: 9630円
発売日 2008/07/02
時間: 63分
製作年・製作国: 1957年 ロシア(旧ソ連)

御木茂則(映画キャメラマン)
1969年生まれ 日本映画学校卒業
映画の撮影の仕事を20年以上続けています。仕事を続けながら沢山の映画を観てきました。数えたことはないですが、多分4000本以上の映画を観ているはずです。どの映画も愛おしい作品ばかりであり、私が仕事を続けていくうえで大切なことを教えてきてくれました。この連載は愛すべき映画への感謝の思いで始めます。
「再会したい映画」というタイトルはベタですが、また映画館のスクリーンでこの映画に再会したい!という願いをこめています。読んだ方が紹介した映画に興味を持ってもらえたら嬉しいです。よろしくお願いします。
撮影担当作品
『部屋/THE ROOM』(園子温 1993年)
『バッハの肖像 LFJより』(筒井武文 2010年)
『フレーフレー山田 忘れないための映像記録』(監督/撮影・2011年)
『希望の国』(園子温 2012年)
『ヒキコ 降臨』(吉川久岳 2014年)
『三人吉三』(串田和美 大形美佑葵 2015年)
撮影補
『奈緒子』(古厩智之 2008年)
『生きてるものはいないのか』(石井岳龍 2012年)
照明担当作品(撮影 芦澤明子)
『孤独な惑星』(筒井武文 2011年)
『夜が終わる場所』(宮崎大祐 2011年)
『受難』(吉田良子 2013年)
『滝を見にいく』(沖田修一 2014年)

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