「ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声」「ラブ&マーシー 終わらないメロディー」「Dearダニー 君へのうた」「ジュラシック・ワールド」「HERO」

「ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声」


先週は音楽関連の映画を数本観た。まずは「ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声」から。
ご存知のようにボーイ・ソプラノが歌える期間は限られている。声変わりすれば、たちまちあの高音は消えてしまう。そう思えば、余計に貴重に思えてくる。
この映画は、孤独な12歳の少年が、少年合唱団のボーイ・ソプラノをソロで歌うようになるまでを描く。

「ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声」予告編

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ダスティン・ホフマンという名優の助けを借りて、感動はひとしおだ。
フランソワ・ジラール監督は、オペラの演出家としても名高い。
「レッド・バイオリン」(98)はアカデミー賞作曲賞を受賞している。

12歳のステット(ギャレット・ウェアリング)は学校の問題児だ。しかし校長(デブラ・ウィンガー)はステットの歌唱力を高く買っている。国立少年合唱団が学校を訪問してきたとき、ステットにオーディションを受けさせようとしたが、ステットは逃げてしまった。ところが母親が事故死してしまい、父親は金の力でステットを国立少年合唱団の寄宿学校へ押し込んだ。父親は妻子がありながらステットの母親と関係があり、ステットを認知していた。合唱団は厳格なカーヴェル(ダスティン・ホフマン)のもとで指導され、上級者になれば世界中をツァーしている。

映画の根幹を成すのはステットの成長物語と、少年合唱団のすばらしい歌声だ。荒れた生活を送っていた母親と、二人暮らしをしてひねくれた性格になってしまった少年が、いじめにあいながらも音楽に魅了され、自分の才能に目覚めていく過程がそつなく描かれている。
「メサイア」「ピエ・イエス」などの讃美歌から日本の「ほたるこい」までアメリカ少年合唱団の歌声が、本当に天使の声のようにちりばめられている。
合唱に興味がある方にはぜひ鑑賞してもらいたい。

アスミック・エース配給。9月11日。

「ラブ&マーシー 終わらないメロディー」は60年代に大ヒットしたザ・ビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンをポール・ダノとジョン・キューザックという二人の俳優で描く


「ラブ&マーシー 終わらないメロディー」は60年代に大ヒットしたザ・ビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンをポール・ダノとジョン・キューザックという二人の俳優で描く。
60年代のブライアン(ポール・ダノ)は、新しい音楽の形を模索し、時にほかのメンバーと対立する。

父親をバンドから放り出し、恨みを買う。80年代のブライアン(ジョン・キューザック)は自動車販売店で金髪美女のメリンダ(エリザベス・バンクス)に出会う。
ブライアンは精神科医のユージン(ポール・ジォマッティ)の管理下にあり、薬漬けにされている。メリンダはブライアンをユージンから解放しようとするのだが。

「ラブ&マーシー 終わらないメロディー」本予告

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まったく違う俳優に1人の人物を演じさせるので、最初はかなり戸惑う。
ことに若きブライアンの音楽理論は、かなり難解に思える。
しかし後半になり、メリンダが精神科医と対立するあたりは、実際にあったことでもあり、臨場感が盛り上がる。
マイケル・ジャクソンの死亡時に精神科医の関与が取りざたされたのを思い出した。

実際のブライアン・ウィルソンはメリンダと結婚。70歳を過ぎても元気で活躍している。幸甚の至り。ビル・ポーラッド監督。

KADOKAWA配給。8月1日。角川シネマ有楽町。

「Dearダニー 君へのうた」はジョン・レノンが新人歌手に手紙を書いていたのが、数十年ぶりに本人に届いたという実話に基づく


「Dearダニー 君へのうた」はジョン・レノンが新人歌手に手紙を書いていたのが、数十年ぶりに本人に届いたという実話に基づく。脚本家でもあるダン・フォーゲルマン監督のアメリカ映画。

ダニー(アル・パチーノ)は絶頂期を過ぎた歌手。かつてのヒット曲をコンサートで歌っていれば、それなりの贅沢はできるが、それもじり貧になってきている。そんなとき、43年前駆出しだったダニーに宛てジョン・レノンが書いた手紙が届く。
マネージャー(クリストファー・プラマー)がコレクターから買い取ったのだ。
ダニーはこれをきっかけに新曲を作り、ドラッグ漬けの生活を改めようとする。その一歩が、疎遠になっている息子(ボビー・カナベイル)との関係修復だった。

映画『Dearダニー 君へのうた』予告編

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実際にジョン・レノンが手紙を書いた相手は、イギリスのシンガー・ソング・ライターのスティーヴ・ティルストンだった。
2005年にその事実がわかったという。
アル・パチーノは歌手ではないから、このような映画に出るのは珍しい。だがパチーノはちゃんと歌っている。
ジョン・レノンの曲がたくさん入った音楽映画であり、家族愛の側面もある。アネット・ベニングがホテルのマネージャーという、これまた珍しい役で出ている。

KADOKAWA配給。9月5日角川シネマ有楽町。

「ジュラシック・ワールド」は「ジュラシック・パーク」シリーズ4作目。ステーヴン・スピルバーグ製作総指揮、コレイン・トレボロウ監督

「ジュラシック・ワールド」は「ジュラシック・パーク」のシリーズ4作目。ステーヴン・スピルバーグは製作総指揮に回り、コレイン・トレボロウ監督が撮った。

コスタリカに浮かぶ島に出来た世界最先端のテーマパーク「ジュラシック・ワールド」。パーク内を監督するのは、野心家の女性クレア(ブライス・ダラス・ハワード)だ。折しも甥のザックとクレイが遊びにやってくるが、クレアは助手に任せっぱなし。そのころ遺伝子操作で誕生した巨大恐竜インドミナス・レックスが狡猾な手段で囲いを脱出したことがわかった。行方をくらました甥とインドミナス・レックスを追ってクレアは恐竜行動学のエキスパート、オーウェン(クリス・プラット)と共に園内を駆けずり回る。

CGで作られた恐竜たちの姿が、一段と真に迫ってきてハラハラドキドキ手に汗握る。
3Dだと一層迫力が増す。見世物映画としてグレードはかなり高い。

東宝東和配給。8月5日公開。

「HERO」はテレビドラマの劇場版2弾


「HERO」はテレビドラマの劇場版2弾。検事たちの活躍を描く。
ネウストリア大使館の裏通りでパーティコンパニオンの女性が車にはねられて死亡する。
東京地検城西支部の久利生公平検事(木村拓哉)は、事務官の麻生(北川景子)と事故を起こしたドライバーを調べるが、大使館の外交特権に阻まれる。

一方、かつて久利生の事務官だった雨宮舞子(松たか子)が大阪地検の検事として事故で死んだ女の捜査のため出張してくる。

大使館の治外法権を取り入れた脚本(福田靖)はいいところを突いている。鈴木雅之監督の仕事ぶりも丁寧だ。しかし、内容が薄っぺらに見えるのはどうしようもないところ。
外交官特権を利用した犯罪への怒りが感じられず、キムタク検事の恋愛模様に重心が動いたからか。

東宝配給。7月18日公開。

コラム~野島孝一の試写室ぶうらぶら~シネフィル篇
野島孝一さんてこんなひと
■略歴
1941年9月29日、新潟県柏崎市の自宅で誕生。
1964年、上智大学文学部新聞科をどうにかこうにか卒業。
そして、あの、毎日新聞社に入社。
岡山、京都支局を経て東京本社社会部、学芸部へ。
なんと、映画記者歴約25年!
2001年、毎日新聞定年退職。
その後、フリーの映画ジャーナリストになって大活躍。
■現在
日本映画ペンクラブ幹事
毎日映画コンクール選定委員、毎日映画コンクール諮問委員
アカデミー賞日本代表作品選考委員
日本映画批評家大賞選定委員
■著書
日本図書館協会選定図書
映画の現場に逢いたくて
ザ・セックスセラピスト THE SEX THERAPIST
野島 孝一 著

野島孝一の試写室ぶうらぶら 、オリジナル版は、アニープラネットWEBサイト
に掲載されています。
野島孝一@シネフィル編集部
アニープラネットWEBサイト
http://www.annieplanet.co.jp/

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