世界でも有数のドキュメンタリー映画の映画祭、山形国際ドキュメンタリー映画祭の授賞結果が14日の夜決定した!
山形映画祭で、世界中から長編を対象に募集し、応募された116ヶ国、1,196本から厳選された、珠玉の15本から選ばれたのは---
インターナショナル・コンペティション ロバート&フランシス・フラハティ賞
ペドロ・コスタ監督「ホース・マネー」
ホース・マネー(英語題)
Horse Money
ポルトガル/2014/104分
監督:ペドロ・コスタ Pedro Costa
『コロッサル・ユース』に続き、リスボン郊外のスラム街フォンタイーニャス地区に暮らした老移民者ヴェントゥーラの記憶とその苦しみを、清冽な眼差しのもとに描き出すペドロ・コスタ最新作。カーボ・ヴェルデから19歳で出稼ぎに出た彼が経験した1974年カーネーション革命とその後の曲折。廃虚と化した工場、監獄のごとき病院。過去と現在、そして未来へと亡霊的な時空間を彷徨い歩くヴェントゥーラの魂の軌跡が、高純度の人間愛と圧倒的な映画表現の中に立ち現れる。事実とフィクションの狭間で「映画」という装置がいかにして人間の「生」を解放するのか。映画表現の極北を見つめつづける孤高の作家による到達点。
インターナショナル・コンペティション 山形市長賞
パトリシオ・グスマン監督「真珠のボタン」
2015年10月10日より岩波ホールで公開中! ほか全国順次公開
真珠のボタン
The Pearl Button
フランス、チリ、スペイン/2015/82分
監督:パトリシオ・グスマン Patricio Guzmán
チリ南部に位置する西パタゴニアは無数の島や岩礁、フィヨルドが存在する世界最大の群島と海洋線が広がり、かつて水と星を生命の象徴として崇めた先住民が住んでいた。そこで発見されたボタンが植民者によるこの地に住む先住民大量虐殺とピノチェト独裁政権下で海に投げられた犠牲者たちの歴史を繋ぐ。『光、ノスタルジア』(YIDFF 2011 山形市長賞)から連なる本作も、海洋と天空に流れる悠久の時間に対峙するような圧倒的な映像美とグスマン監督のたおやかな語り口が、水に沈む記憶と数々の声を想起させる。
インターナショナル・コンペティション 優秀賞
オサーマ・モハンメド監督・ウィアーム・シマヴ・ベデルカーン監督
銀の水 ― シリア・セルフポートレート
Silvered Water, Syria Self-portrait
フランス、シリア/2014/92分
監督:オサーマ・モハンメド、ウィアーム・シマヴ・ベデルカーン Ossama Mohammed, Wiam Simav Bedirxan
亡命先のフランスで、故郷シリアの人々の置かれた凄惨な実状に、疎外感と無力感を抱きながらも苦悩し続けていた監督。苛烈を極める紛争の最前線で繰り返される殺戮の様子は、日々YouTubeにアップされ、ネット上は殺される者、殺す者双方の記録で溢れかえり、彼はただただそれを繋ぎ合わせることしかできない。そんな彼にSNSを通じて知り合ったホムス在住のクルド人女性監督は問いかける。「もしあなたのカメラがここにあったら、何を撮る?」――その瞬間から二人の「映画」が始まった。女性監督は彼の耳目となり、カメラを廻す。「映画」に約束された二人の出会いの物語。
「銀の水 ― シリア・セルフポートレート」
アッバース・ファーディル監督「祖国 ― イラク零年」
アッバース・ファーディル監督「祖国 ― イラク零年」
祖国 ― イラク零年
Homeland (Iraq Year Zero)
イラク、フランス/2015/334分
監督:アッバース・ファーディル Abbas Fahdel
2003年のイラク・バグダッド。イラク戦争前夜のある大家族の日常は、来る戦争の予感を漂わせながらもおだやかに過ぎて行く。そして有志連合軍による侵攻後、爆撃の跡が生々しく残る街に疎開先から戻った家族を待ち受けていたのは、常に死を意識しつつ生きざるをえない毎日だった。戦争は劇的に起こるのではなく日常の延長にいつのまにか始まり、親しい人の死と喪失はあっけなくやってくるということを、私たちはこの2年にわたる家族の記録を通してまざまざと知ることになるだろう。