秋のソナタ』(イングマール・ベルイマン 78)
主演のイングリット・バーグマン、美貌に惹かれて子どもの頃は好きでしたが、今は演技が饒舌な気がして好きではないです。そのバーグマンの演技が、この映画ではプラス方向へのエネルギーになってると感じます。
この映画は母娘の確執を描いた映画です。最初は地味な色調の映像から始まりますが,バーグマン演じる母の登場と共に華やかになります。特に夕食時、娘のウルマンの予想を裏切って真紅のドレスでバーグマンが現れる場面では、田舎暮らしの娘一家のなかで異物感を出しまくりなのがすごいです。母親が存在だけで娘にとって、どんな存在なのかを見せつけ、ちょっとした表情の変化からも目を離せなくなります。
物語が進むにつれて、二人の関係が赤裸々になっていき、娘は生身の自分をぶつけてくる、呪咀のような言葉で追いつめていく、母は取り繕って逃げ回ることしか出来なくなっていく。真に愛し合っていて、絆を切れないからこそ生まれる愛憎劇に圧倒されます。
映画の序盤で、ショパンを弾く母を食い入るような目で見つめ続ける娘、なんでこんな見つめなければならないのか娘も分からないし、母も見つめられるのか分からない。母の娘に対する負い目、娘の母に対する引け目コンプレックス、という簡単な言葉で表せることではない。だからこそいがみあい傷つけあってしまう。
母が仕事を一時期休んで、娘をかまうようになったときに過干渉が玩具にされているようで堪らなくイヤだった告白する場面、私も思い当たることがあるので共感しました。
ほぼワンセットという難しい条件で撮影された映画ですが、名手スヴェン・ニクヴィストの丁寧な撮影が素晴らしいです。
この作品は、女優イングリッド・バーグマンの遺作でもあります。
監督: イングマール・ベルイマン
出演: イングリッド・バーグマン リブ・ウルマン
原題: Höstsonaten
販売元: 紀伊国屋書店
価格: 5184円
発売日 2013/12/21
時間: 92分
製作年・製作国: 1978年 スウェーデン