アメリカ映画界の異端児二人、ロバート・アルトマンとサム・ペキンパーをテーマにしたドキュメンタリーが、相次いで公開される。

9月下旬からシアター・イメージフォーラムで上映される、「サム・ペキンパー 情熱と美学」、そして、10月3日にYEBISU GARDEN CINEMA他で公開される、「ロバート・アルトマン ハリウッドに最も嫌われ、そして愛された男」の二本だ。

画像1: サム・ペキンパー (C)2005-2015 El Dorado Productions. All rights reserved.

サム・ペキンパー

(C)2005-2015 El Dorado Productions. All rights reserved.
画像2: サム・ペキンパー (C)2005-2015 El Dorado Productions. All rights reserved.

サム・ペキンパー

(C)2005-2015 El Dorado Productions. All rights reserved.
画像1: ロバート・アルトマン (c) 2014 sphinxproductions

ロバート・アルトマン

(c) 2014 sphinxproductions
画像2: ロバート・アルトマン (c) 2014 sphinxproductions

ロバート・アルトマン

(c) 2014 sphinxproductions

副題がそれぞれの人となりを良く表しており、幼年期、映画界に入る前、映画界での奮闘……と時代を追って紹介され、目覚しい活躍をするピークの時だけでなく、乾されて失意の時の状況にも触れられており、この二人の作品が好きな人にとっては、必見の作品と云えよう。

 ペキンパーといえば、「ワイルドバンチ」「わらの犬」といった映画の、バイオレンス描写、流血描写が論じられることが多い。
もちろん、それは彼の真骨頂というべき要素だが、人が暴力行為に及ぶまでのプロセスがきちんと描かれてこそ、効果もでるというもの。
本作は、彼の演出技法、映画作りの信念を彼自身の言葉だけでなく、スタッフ、キャストの証言、メイキング映像を織り交ぜて、分析している。

画像3: サム・ペキンパー (C)2005-2015 El Dorado Productions. All rights reserved.

サム・ペキンパー

(C)2005-2015 El Dorado Productions. All rights reserved.
画像4: サム・ペキンパー (C)2005-2015 El Dorado Productions. All rights reserved.

サム・ペキンパー

(C)2005-2015 El Dorado Productions. All rights reserved.

 監督はマイク・シーゲル。
ドイツの シンデルフィンゲンで生まれ、幼い時からの映画好きがこうじて、知り合いのローランド・エメリッヒの初期のSFのセットで使い走りをすることに。その後、ミュンヘンで本格的に映画を学び、2000年にイタリア・パデュアでのペキンパー映画祭の開催に尽力し、ゲストのジェームズ・コバーン、アリ・マッグローがインタビューに応じてくれたことがきっかけで、本作が誕生することとなった。

画像5: サム・ペキンパー (C)2005-2015 El Dorado Productions. All rights reserved.

サム・ペキンパー

(C)2005-2015 El Dorado Productions. All rights reserved.

シーゲルは2003年に同名の写真集を出版し、映画は2005年のミュンヘン映画祭でプレミア上映された。

というわけで、10年前の作品であるが、少しも古びておらず、20世紀後半のハリウッド映画製作事情が、よくわかる作品であった。
 上記の二人の他にアーネスト・ボーグナイン、クリス・クリストファーソン、センタ・バーガー、ボー・ホプキンス、L・Q・ジョーンズらが登場して、彼らが見聞きしたペキンパー像が語られる。

余談になるが、L・Q・ジョーンズのオフィスには、彼が撮った一世一代の傑作SF「少年と犬」のポスターが貼ってあり、嬉しくなった。
厳格な父のもとで育ったサムについての妹の言葉、「ワイルドバンチ」で、メキシコ陸軍に出演を頼んだら「実弾を撃ってきて、びっくりした」と言うボーグナインの証言、「禁酒すると言ってはそれをすぐ破った」というジョーンズの暴露……。

ペキンパー自身の多分に人を食ったような発言も、随所にちりばめられて、バランスのとれた構成になっている。

『サム・ペキンパー 情熱と美学』予告編

youtu.be
画像3: ロバート・アルトマン (c) 2014 sphinxproductions

ロバート・アルトマン

(c) 2014 sphinxproductions
画像4: ロバート・アルトマン (c) 2014 sphinxproductions

ロバート・アルトマン

(c) 2014 sphinxproductions

 ペキンパーとほぼ同じ時代に映画人生を送ったロバート・アルトマンだが、こちらの作品も同じように俳優(ジェームズ・カーン、エリオット・グールド、マイケル・マーフィー、リリー・トムリン)、スタッフ、友人らの証言をちりばめつつ、時代を追って彼のキャリアを振り返っている。
ただし、こちらの証言は「アルトマネスクとは?」という質問にそれぞれただ一言だけ答えるという簡潔なもので、それだけに印象的。たとえば、ロビン・ウィリアムスは「予想しないことがあると予想すること」、ブルース・ウィリスは「ハリウッドのケツを蹴った」といった具合。

画像5: ロバート・アルトマン (c) 2014 sphinxproductions

ロバート・アルトマン

(c) 2014 sphinxproductions

 妻、息子、養子などの家族の夫・父を語る場面、ホーム・ムービーを織り込んであるので、飾らぬ素顔を垣間見ることができる。
ホーム・パーティで、「M★A★S★H」で全裸にされたサリー・ケラーマンが、彼に向かって「復讐よ、裸になりなさい」とはやし立てると、彼がすっぽんぽんになって踊ったりするシーンは微苦笑ものだ。

画像6: ロバート・アルトマン (c) 2014 sphinxproductions

ロバート・アルトマン

(c) 2014 sphinxproductions

アルトマン映画の最大の特徴である、多くの登場人物で構成されるアンサンブル・ドラマについても言及されており、過不足ない内容といえよう。


監督・プロデューサーは、パフォーミング・アーツに関するドキュメンタリーを手がけている、カナダのロン・マン。ツイストをテーマにした「ツイスト」(92)や、「ラット・フィンク 〜ボクのビッグ・ダディ〜」(06)などが、日本公開されている。

北島明弘@シネフィル編集部

映画『ロバート・アルトマン/ハリウッドに最も嫌われ、そして愛された男』予告編

youtu.be

北島明弘

長崎県佐世保市生まれ。大学ではジャーナリズムを専攻し、1974年から十五年間、映画雑誌「キネマ旬報」や映画書籍の編集に携わる。
大好きなSF、ミステリー関係の映画について、さまざまな雑誌や書籍に執筆。著書に「世界SF映画全史」(愛育社)、「世界ミステリー映画大全」(愛育社)、「アメリカ映画100年帝国」(近代映画社)、訳書に「フレッド・ジンネマン自伝」(キネマ旬報社)などがある。

『サム・ペキンパー 情熱と美学』


監督:マイク・シーゲル
出演:サム・ペキンパー アーネスト・ボーグナイン ジェームス・コバーン クリス・クリストファーソン R・G・アームストロング センタ・バーガー アリ・マッグロウ イセラ・ベガ L・Q・ジョーンズ マリオ・アドルフ デイヴィッド・ワーナー ボー・ホプキンス ヴァディム・グロウナ ロジャー・フリッツ ガーナ—・シモンズ ルピタ・ペキンパー ほか
原題:Passion & Poetry: The Ballad of Sam Peckinpah
字幕翻訳:西村美須寿 監修:根岸邦明
提供:マクザム/太秦  配給・宣伝:太秦
【2005年/ドイツ/カラー/ドキュメンタリー作品/120分】 
公式HP/www.doc-peckinpah.com

9月下旬よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開

『ロバート・アルトマン/ハリウッドに最も嫌われ、そして愛された男』


監督・製作:ロン・マン 脚本:レン・ブラム 編集:ロバート・ケネディ 
コンサルタント:キャサリン・リード・アルトマン、マシュー・セイグ
証言:ポール・トーマス・アンダーソン、ジェームズ・カーン、キース・キャラダイン、エリオット・グールド、フィリップ・ベイカー・ホール、サリー・ケラーマン、ライル・ラヴェット、ジュリアン・ムーア、マイケル・マーフィ、リリー・トムリン、ブルース・ウィリスほか
c 2014 sphinxproductions 
原題:Altman/カナダ/2014年/95分 
配給:ビターズ・エンド 

10月3日(土)YEBISU GARDEN CINEMAほかにて全国順次公開! 

北島明弘@シネフィル編集部

This article is a sponsored article by
''.